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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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リアル(写実)のゆくえ

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足利市美術館で開催中の展覧会、
“リアル(写実)のゆくえ 高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの” に行ってきました。

こちらは、初めて目にした西洋画に衝撃を受け、
独学で超リアルな 《鮭》 の絵を描いてしまった高橋由一に始まり、

由一
高橋由一 《鮭》 製作年不詳 山形美術館寄託


デューラーやレンブラントなどの写実表現を追求した大正期の岸田劉生、

岸田
岸田劉生 《麗子肖像(麗子五歳之像) 》 1918年 東京国立近代美術館


画壇と一切かかわらず写実表現を極めた“昭和の孤高の画家” 髙島野十郎、

髙島野十郎
髙島野十郎 《蝋燭》 大正期 福岡県立美術館


そして、木下晋さんや安藤正子さんといった現代作家にいたるまで、
約50人の画家の作品を通じて、明治期以降の日本の写実絵画の約150年の歴史を紹介する展覧会です。
ちなみに、現代を象徴する1枚として紹介されていたのは、単身スペインに渡り、
スペイン・ リアリズムの異才とまで称された磯江毅の 《鮭―高橋由一へのオマージュ― 》 という作品。

磯江毅
磯江毅 《鮭―高橋由一へのオマージュ― 》 2001年


鮭に始まり、鮭に終わる。
まさに、“鮭ありき” な展覧会でした。
星星


上で挙げた画家以外にも、原田直次郎や牧野邦夫、上田薫さんなど、
日本のリアリズム絵画界のスーパースターたちが勢ぞろいしていましたが。
中には、独特な世界観の仏画を描いた牧島如鳩をはじめ、

牧島 如鳩
牧島如鳩 《魚籃観音像》 1952年 (公財)足利市民文化財団蔵


“写実っちゃ写実だけど、リアルではないよね・・・” という画家もちらほらいました。
その辺りの線引きは、意外とアバウト。
写実的ではなかったです。

ちなみに。
今回の出展作の中で、個人的にイチオシなのは、長谷川潾二郎 《猫》

長谷川潾二郎《猫》
長谷川潾二郎 《猫》 1966年 宮城県美術館蔵


僕が思う “日本一カワイイ猫の絵” です。
あまりに可愛いので、添い寝したいくらい。
絵の前に布団が敷かれていたら、間違いなく横になります。


妙に心に残ったのは、岸田劉生の 《壺の上に林檎が載って在る》

壺の上に林檎が載って在る
岸田劉生 《壺の上に林檎が載って在る》 1916年 東京国立近代美術館蔵


壺の上に林檎が載って在る。
ジワジワくるタイトルです。
誰が壺の上に林檎を載せたのか?
そこに林檎があったから載せたのか?
わざわざ林檎を持ってきて載せたのか?
考え始めたら、止まりません。
とりあえず壷の口に林檎がフィットしていることは確かです。


最後にご紹介したいのは、本多錦吉郎の 《羽衣天女》

錦
本多錦吉郎 《羽衣天女》 1890年 兵庫県立美術館蔵


この絵を観た森鴎外は、こんなようなコメントを残しています。

「肌は硬そうだし、颯爽としていない。
 翼は外国の鳶のものなのか?」


なかなかの毒舌です。
さらに、こう続けます。

「親指がことさらに開いているけど、天女も草鞋を履くことがあるのだろうか?」

毒舌な上に、超細かいところを突いてきます。
森鷗外は、絶対敵に回したくないタイプ。




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