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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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メタボリズムの未来都市展

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ポリリズム・・・ではなくて。
メタボリズムという言葉をご存知でしょうか?

読者の皆様の中には、

「ん?メタボ?黒烏龍茶が必要なヤツ?」

と、健康用語的なものが、頭をよぎった方もいらっしゃるかもしれませんが。
メタボリズムとは、健康用語に非ず。
メタボリックシンドロームとは、全く関係ない建築用語です。

では、一体、どういう建築用語なのか?
Wikipediaには、こうあります。

 「1959年に黒川紀章や菊竹清訓ら日本の若手建築家・都市計画家グループが開始した建築運動。
 新陳代謝 (メタボリズム) からグループの名をとり、
 社会の変化や人口の成長に合わせて有機的に成長する都市や建築を提案した。」



・・・・・・わかるようで、わからない (笑)
誤解を恐れずに、あえて、ざっくりとまとめるならば、
『新陳代謝する生物のような建築』 ということらしいです。

例えば、こんな建築。
黒川紀章の 《中銀カプセルタワー》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-カプセルタワー


1972年に作られたメタボリズムの代表的な集合住宅です。
最大の特徴は、部屋がカプセルになっていること。
もし、このカプセルが老朽化した場合、
カプセルがパコっと外れて (擬音語は想像) 、新しいカプセルに取り換えることが可能なのです。
そのように、カプセルを細胞のように新陳代謝することで、常に新しい姿でいられるのだとか。

斬新!!!

・・・ただし、交換するのに、いろいろと費用がかかるようで。
2011年現在まで、一度もカプセルが交換されたことはないのだとか。

残念!!!


例えば、こんな建築。
菊竹清訓さんの 《スカイハウス》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-スカイハウス


1958年に作られた菊竹さんの自邸です。
“はじめに2階ありき” な建物。
この頃は、おそらく菊竹さんは夫婦で住んでいたそうな。
そして、いつしか、二人の間に子供が誕生。
すると、この宙に浮いた2階だけでは、手狭になります。
どうしましょう?引っ越しましょうか??
いいえ、ご安心を。
この空いている1階のスペースに、子供部屋を作ってしまえばいいのです。
さて、さらに数年後、子供は反抗期を迎えるくらいのお年頃になります。
「親父、もっと広い部屋が欲しいンだけど」
どうしましょう?今度こそ、引っ越しましょうか??
いいえ、ご安心を。
1階に作った子供部屋を一回壊して、もっと大きな部屋を作っちゃえばいいのです。
と、このように、家族の成長に合わせて、1階スペースが成長していく建築。
まさに、生き物のような建築。

ちなみに、現在は、成長して、こんな姿に。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-スカイハウス


1階のスペースがパンパン。
1階のスペースが、メタボリックシンドロームです。


例えば、こんな建築。
槇文彦さんの 《ヒルサイドテラス》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ヒルサイドテラス


一見すると、普通の街並みです。
しかし、実は、30年の歳月をかけて、じっくり完成した街並みなのだとか。
まず、1棟が完成。
そして、その数年後、その隣に、また新たな1棟が完成。
そしてそして、さらにその数年後、その隣に、またまた新たな1棟が完成。
…と、まるで、どんどん建物が増殖していくかのよう。
これもまた、一つのメタボリズム。



何となく、メタボリズムのおおよそは掴んで頂けたでしょうか。
さて、このメタボリズム。
実は、日本で唯一にして最大の建築運動なのですが。
これまで、日本でたくさんの建築展が開催されてきたもののメタボリズムの展覧会は皆無。
今回、ようやく森美術館にて、初となるメタボリズム展が開催されています。
それが、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-メタボリズムの未来都市展


“メタボリズムの未来都市展”
来年1月15日まで。


上で紹介した3つの建築はもちろん。
他の有名メタボリズム建築や、メタボリズムに影響を与えた建築、メタボリズムその後の建築まで。
まさに、メタボリズム大百科とも言える決定版な内容。
ボリューム満点なので、じっくり観ていたら、半日仕事です (笑)
2つ星。
星星


個人的には、実際に建っているメタボリズムの建築よりも、
実際には建たなかった建築案を紹介するコーナーが、ツボでした。
丹下健三や菊竹さんが、東京湾に海上都市を計画したり、
黒川紀章は、霞ヶ浦の上に都市を計画したり。
他にも、当時の建築家の想像上では、
新宿も丸の内も渋谷も築地も、今とは全く違う街になっていました。
今ので良かった (笑)


また、もう一つ、個人的にツボだったのは、
メタボリストが大集合した大阪万博を紹介するコーナー。
「万博=太陽の塔=岡本太郎」 のイメージが強かったですが、
各パビリオンを手掛けたのは、メタボリズムの建築家の面々。
太陽の塔にも勝るとも劣らないインパクトの建築がたくさん。
建築という視点で眺めると、万博会場の模型は、まさに建築のディズニーランドでした。



個人的に、ちょっとツボだったのは、
実現しなかったという磯崎新さんの 《荒井邸》 の案。
なんで、実現しなかったのか不思議に思いつつ、模型を見ると・・・

「ああ、これは、実現しない (笑) !」

家の一部が、キャンピングカーでした。
せっかく一軒家を建てたのに、
「車が我が家です。」 と言わなきゃいけないのは。。。




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