東京藝術大学副学長を務め、
現在では、院展の常務理事として、日本画壇を代表する重鎮・田渕俊夫さん。
そんな田渕さんの、実に45年にも及ぶ長い画業を、
東京藝術大学大学院終了後に描いた 《ヨルバの花》 から、
昨年の震災を受けて描いたという横10メートルの最新作 《惶》 まで、
約30点の田渕作品で展観しているのが、
渋谷区立松濤美術館で開催されている “田渕俊夫展 いのちの煌めき” という美術展。
僕の偏見かもしれませんが、
大学教授のおエラいさんや○○界の重鎮に、ロクな人物がいるわけがありません。
(↑『白い巨塔』 の影響大)
田渕さんのことを、よく存じ上げませんでしたが、その肩書から、
「まぁ、退屈な美術展なのだろうなぁ・・・。」
と、勝手に高を括っていました。
しかし、これまでの経験から、
渋谷区立松濤美術館の美術展が、大きくハズれたことはないので、
それに賭ける形で、田渕俊夫展に足を運んでみました。
その結果、、、
田渕ファンになって帰ってきました (笑)
思わず、日本画をやっている父に、報告してしまったほどです。
いや、大学教授のおエラいさんや○○界の重鎮に、
ロクな人物がいないなどと、勝手な色眼鏡で見てはいけませんね。
反省です。
奈良の当麻寺の裏手で出会ったと云う光景を描いた 《木の間》 や、
日本美術院賞 大観賞を受賞した 《叢叢讃歌》 のように、
「いかにも!」 な日本画ばかりを描いているのかと思いきや。
(こういう 「いかにも!」 な日本画も、清涼感があって、僕の好みでした)
名古屋市の街並みを描いた 《刻》 や、
“セントレア” の愛称でお馴染みの中部国際空港を描いた 《旅立ちの朝》 、
伊豆の稲取港に取材した 《泊》 など、
伝統的な画題に捉われず、
現代的なモチーフにも積極的に取り組む柔軟な姿勢に、感銘を受けました。
特に、 《泊》 は、漁船がメカニカルに描かれていて、痺れました。
感銘を受けたと云えば、今回出展されているすべての作品に、
田渕さん本人によるコメントが、添えられていること。
大変な作業、お疲れ様です。
しかも、その語り口が、とても謙虚で、
全然エラぶっていないところに、非常に好感を持ちました。
本人のコメントがあるからこそ、気づくこともあるもので。
例えば、こちらの 《灼熱の夢》 という作品。
日本のどこかの風景を描いたのかと思っていたら、
実は、ナイジェリアにて、地べたに這いつくばって写生した光景とのこと。
アフリカに行ったからといって、キリンや象には、会えなかったそうで (笑)
唯一出会ったカメレオンを、この絵の中に忍ばせたようです。
キャプションを読むと、
「捜してみてください。」 と、田渕さんからの挑戦状 (?) があったので、
目を皿のようにして捜してみました。
一生懸命捜しました。そして、カメレオン見つかりましたよ。
巧く擬態しているので、捜すのに、少々骨が折れました (笑)
ともあれ、田渕さんの45年にも及ぶ画業。
そして、すべてに添えられた本人コメント。
人生の先輩ですが、敢えて、こう言いたい。
がんばった!! タブチくん!!
2つ星。
それでは、最後に、
今回、特に気に入った作品を、2点ご紹介いたしましょう。
先日、山種美術館で、福田平八郎の 《漣》 を観たばかりですが。
田渕さんにも、同じく水面を描いた作品がありました。
それが、 《流》
描かれているのは、何気ない光景。
しかし、こういう何気ない光景にこそ、
日常では見過ごしてしまっている美があるのかもしれません。
「♪何でもないようなことが しあわせだったと思う~」 と口ずさみたくなる一枚。
そして、もう一枚、ステキな作品を。
《大地悠久 光輝》 です。
飛行機に乗る時は、必ず窓側をキープ!
そんな田淵さんが、成田空港に向かう飛行機の窓から見た光景を描いた一枚なのだとか。
この絵をはじめ、基本的に、田渕さんの描く絵は、田渕さん本人が感動した光景とのこと。
田渕さんが、もしfacebookをやっていたら、
この 《大地悠久 光輝》 のような光景が、ウォールに投稿されているのでしょうね。
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田渕俊夫展 いのちの煌めき
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