静嘉堂文庫美術館の絵画コレクションの中から、
ベストofベストを紹介する美術展 “東洋絵画の精華 ― 名品でたどる美の軌跡 ―” 。
その後期 (5/23~6/24) に、行ってきました。
前期は、《平治物語絵巻》 をはじめ、
仏教絵画や江戸絵画の名品など、珠玉の日本美術コレクションが紹介されていましたが。
後期では、選りすぐりの中国絵画の数々が紹介されているのです!!
「・・・・・・・・・・ふ~ん、中国絵画か( ゜∋゜)」
そう思った方も、中には、いらっしゃることでしょう。
確かに、
牧谿に、陸治に、謝時臣に、沈南蘋に …etc
一般の方にとっては、中国絵画の画家の名前はピンと来ないはず。
(上に挙げたのは、巨匠レベルの画家ばかりなのですが)
“まぁ、名前がわからない画家ばかりだし、興味ないや…” と、
そうスルーしようとしている方にこそ、逆に、この美術展に行って頂きたい。
出展作のうちの、実に3分の2が、
国宝・重要文化財・重要美術品のいずれかという、まさに最強の中国絵画展。
この美術展を観ても、
“やっぱり、中国絵画には興味持てないや…”
という方は、今後の中国絵画展を、スルーすればいいのです (笑)
(でも、たぶん、かなりの確率で、中国絵画の魅力に気づかされるでしょう)
ちなみに、何を隠そう、かくいう自分が、
今回の美術展を通じて、初めて中国絵画の魅力に気付かされた一人です。
「静嘉堂文庫美術館さん、ありがとう!」 の2つ星。
さてさて、今回の美術展が、たまたまそうなのか。
それとも、中国絵画というものが、そうなのか。
展示品の大半を、山水画の掛軸が占めていたのが印象的でした。
実は、個人的には、そこまで山水画に興味は無いのですが。
さすが、最強の中国絵画展だけあって、
どの山水画にも雄大な奥行きが感じられて、圧倒されてしまいました。
平面の掛軸に描かれているはずなのに、奥行きが、500m~1kmくらいに感じられるのです。
そんな “深イイ山水画” の数々の中でも、特に奥行きが感じられたのが、
李士達という明時代の画家による 《秋景山水図》 という一幅。
画像では、巧く伝わらなくて恐縮ですが、
実際は、もはや何十km先までの奥行きを感じるというレベルではなく、
ただただ遥か遠く、無限の彼方が、この一枚に描かれていると感じるレベル。
“吸い込まれそうな景色” とは、このような景色のことを指すのでしょう。
しかし、気になるのは、こんな雄大な自然の中に、
よ~く見ると、建物があり、さらによ~く見ると、中に2人の人物がいること。
彼らは、ここで何をしているのか。
行きは、どうやって、ここまで来たのか。
そして、帰りも大変だな。
気になりだすと、これまた無限。
続いて、こんな山水画を。
張瑞図の 《秋景山水図》 です。
重要文化財だけあって、それはそれは見事な風景が描かれた山水画ですが。
風景が巧いだけに、へんちくりんな建物が、妙に目立ってしまっているという (笑)
張瑞図は、建物を描くのが苦手だったのでしょうか?
明らかに、風景よりは、手を抜いて描いている気がします。
だったら、描かなければいいのに!
数ある山水画の中で、もう一つ忘れてはいけないのが、こちら。
伝馬遠の 《風雨山水図》 。
国宝です。
画面左下に描かれている岩の表現が、本当に素晴らしかったです。
そこが際立って印象的でしたが、
全体的には、どこがどういいというよりも、画面を支配する空気感が上品だなという印象。
国宝絵画ならではのオーラを感じました。
今回の美術展には、この 《風雨山水図》 の他にも。
趙子昂の 《与中峰明本尺牘 第一札》 と、
因陀羅筆 《禅機図断簡 智常禅師図》 が展示されており、
計3点の国宝を観ることが出来ます。
どうしても、その3つを一度に観たいという欲張りな方は・・・
赤い丸が国宝の位置となりますので、
青い丸の地点に立って、視野を草食動物並みに多角的に広げれば、3点同時見も可能です
(↑わざわざ、図を書いてまで説明する必要の無い情報)
ここからは、山水画以外の中国絵画の名品を2点ご紹介。
まずは、陳賢の 《老子過関図》
とにかく、牛の姿がユーモラス!
というか、牛っぽいけど、牛ではないナニモノかです。
間違いなく、新種の生物です。
そんな牛風の動物に、躊躇なく座っている老子は、ただ者ではありますまい。
ラストは、怖~い中国絵画。
《十王図・二使者図のうち「第九都市王」》 です。
十王とは、冥府で亡者の生前の罪業を審判する十人の裁判官のこと。
確かに、画面のあちこちには、裁かれている人が描かれています。
あわわわわ・・・痛そうですね・・・Σ(゚д゚;)
しかし、当の裁いた本人 (=都市王) は、全くどこ吹く風。
裁かれている人を、一切見ていません。
昨日寝てないのかな?
徹夜を我慢しているっぽい表情にも見えます。
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東洋絵画の精華 ― 名品でたどる美の軌跡 ―(後期)
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