『吉川(きっかわ)』 と聞けば・・・
吉川晃司しか思い浮かばないところですが。
実は、美術界に、忘れてはならない吉川さんがいます。
それは、吉川霊華 (1875~1929)
・・・と言っても、多くの方が、その名前を知らないはず。
それもそのはず、彼の回顧展は、1983年にサントリー美術館で開催されたきり。
その後、時代に埋もれる (?) こと約30年。
長い年月を経て、再び吉川霊華にスポットライトが!
“吉川霊華展 近代にうまれた線の探究者” は、
東京国立近代美術館にて、7月29日まで開催中です。
実は、何の美術展だったか忘れてしまったのですが、
吉川霊華の作品を観て、それ以来、吉川霊華のことが気になっていた僕。
いつか、吉川霊華展がやらないものかなと、密かに願っておりました。
そこに来て、ようやく今回の東京国立近代美術館での吉川霊華展。
“♪Oh! Thanks, Thanks, Thanks, Thanks, レイカ~”
と鼻歌交じりで、会場に入った次の瞬間です!
衝撃の光景が、飛び込んできました!!!
「ウソ?今日、休み?!」
まさかのお客さんがゼロ。
そこにいたのは、監視員のお姉さんだけ。
しばらく佇んでいると、そのあとに、ちゃんとちらほらとお客さんが入ってきましたが。
それにしても、人が少ない。
平日に行きましたが、それにしても、少ない。
“そんなにも人気がない画家なのかな?僕が前に感動したのは、気のせいかな?”
そう不安に思って、作品に目を向ければ・・・
《清香妙音》 にしても、
《藐姑射之処子》 にしても、
独特の上品さと清涼感があって、良い作品ではないですか。
やっぱり僕の目に狂いは無かったのです。
今回の吉川霊華展には、実に100点もの作品が展示されていましたが。
それだけ観ても、胃もたれしないのが、吉川霊華作品の特徴。
普通の画家の作品が、ジュースやお酒のようなものなら、吉川霊華の作品は、お水。
100点も目にすれば、さすがにお腹は膨れますが、決して、嫌な満腹感にはなりません。
むしろ、それだけ水のように透明感のある絵を、たくさん見たことで、
デトックス効果のごとく、僕の心の中の腹黒い部分やひねくれた部分が薄れたような気がします。
(あくまで、気がするだけですがw)
さてさて、吉川霊華の作品の魅力は、何と言っても、『線描美』 。
こちらの 《羅浮僊女》 も、線の美しさが際立った作品ですが。
驚くべきは、これが、昭和3年の作品であること。
(明治ないしは、江戸時代の絵画のようですが)
画壇とは距離を置き、やまと絵や広く東洋芸術を研究し、
独自に線描の世界を切り開いていたという吉川霊華。
ちょうど東京国立近代美術館で開催されているので、
のちほど常設展に足を運んで、同年代の作家の作品と見比べてみると、
いかに、吉川霊華が、 “孤高の存在” だったのかということがわかります。
しかし、“孤高の存在” だったからと云って、
今回の展覧会が開催されているにも関わらず、孤高になる必要は無し!
そこで、このピンチを救うべく、吉川霊華推しの僕が、
皆さんが、きっと観に行きたくなる作品を、厳選してご紹介いたしましょう。
まずは、 《伊勢物語 つつゐづつ》
線を巧みに操る画家ですから、当然、字も巧い。
絵の美しさと、字の美しさ、
さらには、配置のセンス (グラフィックデザインの美しさ) も味わえる一挙三得な作品です。
続いて、 《山水》
タイトルや画題は、シンプルですが。
だからと言って、侮るなかれ。
細かすぎて伝わらない線描の技が冴える逸品です。
筆で、このような細かい線を、無数に描いたのかと想像するだけで、頭がクラクラしました。
最後は、吉川霊華の幻の代表作とされる 《離騒》
15年ぶりに官展に出展し、画壇に衝撃を与えたとされる屈指の名作です。
その線描の冴えは、他の吉川霊華作品よりも、さらに一歩抜きんでていました。
あまりに細かい線描のため、
もはやパソコンの画像では、モアレを起こしているようにしか見えません (笑)
パソコンの画面で、この絵の魅力を伝えるのは、無理なので。
是非会場にて、皆様の肉眼で、この絵を確認して頂ければ幸いです。
もっとお客さんで賑わって欲しい美術展。
2つ星は堅いです。
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吉川霊華展 近代にうまれた線の探究者
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