一般的には、あまり知られていない。
でも、一度作品を目にしたら、ハマる人はドハマりする。
そんな隠れたアーティストを、これまでに何人も発掘してきた練馬区立美術館。
今年の芸術の秋にも、スゴい隠し玉を放り込んできました。
それが、“没後20年 麻田浩展 ―静謐なる楽園の廃墟―”。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
今年で、没後20年を迎える画家・麻田浩の関東の美術館では初となる大々的な回顧展です。
この展覧会が開催されるまで、麻田浩という画家の名前は知らなかったのですが。
1980年代には、一部のファンの間でカルト的な人気を誇っていたそうで。
その時にファンだったと思しきオジサマたちが、展覧会の会場にはチラホラいらっしゃいました。
(ちなみに、その時にファンだったと思しきオジサマたちのおかげで、早くも図録の売り上げが好調とのことです)
ただ、麻田浩の名前は知らなくても、
彼の絵は一度や二度は目にしたことがあるかもしれません。
そのミステリアスな作風は、本の装丁に採用されることが多く、
松本清張の名作 『ゼロの焦点』 の表紙にも、麻田浩の絵が採用されています。
ゼロの焦点【電子書籍】[ 松本清張 ]
初期には、当時フランスで流行していたアンフォルメル的な抽象画を描いていましたが、
パリに留学してからは、シュルレアリスム風の油彩画を描くようになり、
帰国後は、地表や水滴、鳥の羽根をモチーフにした、
“麻田浩風” としか言い表しようのない独特なスタイルの作品を次々と発表していきました。
ハマる人は、とことんハマる。
受け付けない人は、とことん受け付けない。
好き嫌いがハッキリと分かれるタイプの画家です。
僕は、まんまとハマってしまいました。
麻田浩の作品は、とにかく空虚 (←いい意味で!)。
感情が一切感じられません (←これも、いい意味で!)。
それゆえ、何か物悲しく、眺めているだけで、
心の奥がギュッと締め付けられるようでした (←もちろん、いい意味で!)。
ずーっと眺めていたら、何かトラウマになりそうな気がします (←どちらかと言えば、いい意味で)。
モチーフや世界観、絵肌の風合い、どれを取っても僕好みだったのですが、
それ以上に引きこまれたのは、その独特の色合い。
赤とか青とかエメラルドグリーンとか、一つとして、何色と言える色がありません。
強いて言うなら、麻田色。
麻田レッドに、麻田グリーンです。
どの作品も静かながら強いインパクトがありましたが。
中でも、じわじわボディブローのようなインパクトがあったのは、《沼・月》 という作品。
タイトルになっている沼と月が、
黒く塗りつぶされているという不思議な、いや不可解、不条理な作品です。
緻密に描かれた周囲の風景と、月と沼とが、なんともアンバランス。
不協和音を奏でていました。
ちなみに、こちらは自殺した晩年に描かれたもの。
何かを予感させるものがあります。
最後に、お気に入りの作品をご紹介いたしましょう。
《草・水》 です。
画面の手前 (?) を、水が流れ落ちてるという斬新な構図の一枚。
しばらく眺めていたら、このまま水位が上がっていって、
最終的には、絵の中の世界が水没してしまいそうな、不思議な印象を受けました。
独創的な絵なのに、タイトルが普通すぎて草。
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没後20年 麻田浩展 ―静謐なる楽園の廃墟―
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