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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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【特別展】没後60年記念 川合玉堂 ―四季・人々・自然―

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現在、山種美術館で開催されているのは、
“没後60年記念 川合玉堂 ―四季・人々・自然―” という特別展です。

玉堂
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


今年2017年は、『近代日本画壇の巨匠』 と呼ばれた国民的画家・川合玉堂の没後60年の節目の年。
それを記念して開催された回顧展で、
山種美術館が所蔵する玉堂作品を中心に、貴重な初期の作品から、


川合玉堂 《夏雨五位鷺図》 1899(明治32)年 絹本・彩色 玉堂美術館


晩年にいたるまでの代表作の数々が一堂に会しています。

晩年
川合玉堂 《屋根草を刈る》 1954(昭和29)年 紙本・彩色 東京都


ちなみに、川合玉堂の 『玉堂』 の中は、
最初の師である望月玉泉と祖父の佐枝竹堂に由来するとのこと。
『玉堂』 といえば、浦上玉堂という日本美術の巨匠がいますが。
名前がかぶったのは、たまたまだそうで、玉堂という名前を付けた後に、
先人に浦上玉堂という巨匠がいたことを知って、蒼ざめてしまったのだとか。
とはいえ、それで名前を変えることはなかったそうです。
肝が据わっているんだか、いないんだか。

さてさて、「日本の自然は、玉堂が作った」と言われるほどに、日本の自然を多く描いた川合玉堂。
今展にも、日本の自然をモチーフにした作品が多数出展されていました。

会場
左)川合玉堂 《小声雨声》 1951(昭和26)年頃 山種美術館
中央)川合玉堂 《湖畔墓雪》 1950(昭和25)年頃 山種美術館  左)川合玉堂 《涛声松籟》 1951(昭和26)年頃 山種美術館



会場には、マイナスイオンが充満しています。
空気が美味しい (気がする) 展覧会でした。

モチーフがモチーフだけに、
「これは!」 というインパクトの強い作品こそありませんでしたが。
ジワジワと、しみじみと “いいなぁ~” と思える滋味深い作品は多数ありました。

もっとも心に染みたのは、写真右の 《朝もや》 という一枚です。 (注:展示は、11月26日まで)

朝もや
左)川合玉堂 《春風 春水》 1940(昭和15)年 山種美術館  右)川合玉堂 《朝もや》 1938(昭和13)年 東京国立近代美術館


実に、澄んだ空気感。
思わず、スーッと大きく息を吸い込みたくなりました。
冷静に考えると初めて目にする光景なのに、
かつて、どこかで一度目にしたことがあるような (旅行先での早朝散歩?) 。
おそらく、そう感じた人は僕だけではないはず。
きっとみんなの心の中に、川合玉堂 (の絵の世界) が存在するのでしょう。


また、こちらも心に染みた一点。
《山雨一過》 です。

山雨一過
川合玉堂 《山雨一過》 1943(昭和18)年 絹本・彩色 山種美術館


のどかでポカポカした陽気で、観ていて心地良い絵でした。
平和だなぁ。
特にお気に入りな部分は、道の先。
その部分のカラーリングの表現が、なんとも洒脱です。
緑に茶色っぽいオレンジに、青に白。
と、心地良さは一旦脇に置いておきまして。

“はて、この配色、どこかで目にしたことがあるような?”

しばらく考えて、答えが判明しました。
昔のファミリーマートの制服。
ひらめいた瞬間に、あの入店音が頭に流れました。




他にも、猫の愛らしさが絶妙な絵や、

猫
川合玉堂 《猫》 1951(昭和26)年頃 山種美術館


軽やかさがまったく感じられないスケートの絵など、

スケート
川合玉堂 《氷上(スケート)》 1953(昭和28)年 山種美術館


普段の川合玉堂のイメージにはない作品と出会えたのは、嬉しい収穫。
玉堂の画業の幅広さ、底の深さを改めて感じる展覧会でした。
星星


ちなみに、やはり何と言っても一番印象に残っているのは、
山種美術館の玉堂コレクションの目玉である 《早乙女》 です。

早乙女
川合玉堂 《早乙女》 1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館


ドローンで撮影したとしか考えられないアングル。
そんな斬新な構図のおかげで、
何の変哲もない田植えの光景がスペシャルな光景に感じられました。
田植えしている女性も、心なしかモデルさんのように感じられます。




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