■画狂其一
作者:梓澤要
出版社:NHK出版
発売日:2017/10/21
ページ数:320ページ
現代美術にも通ずる大胆な空間構成が高く評価され、
欧米の美術界で江戸琳派の旗手として広く知られる鈴木其一。
酒井抱一の内弟子として画業をスタートした其一は、
師の死後、どのようにして 「夏秋渓流図」「朝顔図屏風」 のような奇想の絵を描いたのか!?
絵師としての苦悩、波瀾に満ちたその生涯を描く歴史小説。
(NHK出版ホームぺージより)
「師匠の酒井抱一でも、一般的には知名度が低い気がしますが。
さらに、その弟子である鈴木其一を主人公にした小説だなんて・・・誰が読むんだ?!
と思いながらも、たぶん僕みたいな人間が読むんだろうなぁと購入してみました。
鈴木其一といえば、画業の始めこそ、
師匠の抱一のような品があって清冽な絵を描いているものの、
師匠の死後は、急にキャラ変し、アバンギャルドな絵を描いた絵師というイメージ。
この小説では、その辺りの画風の変化、心境の変化が巧く表現されていました。
なるほど。だから、こんなにキャラが変わったわけか。
ストンと落ちるものがありました。
ちなみに、其一が主人公ではありますが、
冒頭からの3分の1ほどは、其一から見た抱一の姿がメインで描かれます。
抱一がリスペクトする尾形光琳の 《風神雷神図》 。
その裏面に、抱一が 《夏秋草図屏風》 を描いているのは、わりと有名な話ですが。
そのエピソードも、ばっちり登場しています。
定期的に 《夏秋草図屏風》 は、トーハクで公開されるので、次に観に行くのが楽しみになりました。
さてさて、其一といえば、時にくどくどしいイメージもありますが。
この小説の作者も、そんな其一に引っ張られたのでしょう。
情報が盛り盛りで、全体的には、ややくどくどしい印象を受けました。
特に気になったのが、其一が自分探し (?) のために、京都や奈良を中心に関西を旅行するくだり。
その行程があまりに事細かく描かれていて、途中で投げ出したくなりました (笑)
いつまで、旅の話が続くんだよ。
無駄に長い旅行ブログを読まされているような気分でした。
あと、実際に交流があった人もいるのでしょうが、有名人が登場しすぎ。
葛飾北斎、歌川広重、谷文晁、七代目市川團十郎、井伊直弼、伊藤若冲・・・etc
登場人物も、盛り盛りでした。
それだけ盛に盛り込んだにも関わらず。
ラストは、あっけないほどにあっさり。
最後のほうだけ、別の作者に変わったのかと思いました。
ちなみに、電車移動中に読んでいたのですが、
装丁に採用されている 《朝顔図屏風》 が、よっぽど目を惹いたのでしょう。
多くの人に、ジロジロ見られました。
《朝顔図屏風》 のデザイン性は、今でも十分通用するようです。
(星3.5つ)」
~小説に登場する名画~
《朝顔図屏風》
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Book:27 『画狂其一』
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