横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の “金川晋吾 長い間” に行ってきました。
こちらは、2010年に若手の登竜門と呼ばれる三木淳賞を受賞し、
2016年に出版した写真集 『father』 が今なお注目を集めている写真家・金川晋吾さんの個展です。
会場に展示されているのは、謎のオッサンの写真の数々。
どう見ても、同一人物です。
「何者??」 かと思えば、こちらが金川晋吾さんの実の “father” とのこと。
金川晋吾さんの “father” には、失踪癖があるそうで。
ふらりと1週間いなくなるときもあれば、1ヶ月くらい姿を消す時も。
当然、そんな性質の持ち主ですから、仕事はままならぬ、
酒とパチンコに溺れるわ、借金を重ねるわ、自己破産はするわ。
典型的な 『ザ・ノンフィクション』 に登場するタイプの人物です。
「なぜ、失踪をしたのか?」 と問うても、
「わからない」 と答える金川晋吾さんの “father” 。
記憶とすべての感情を失ったような表情は、もはや人ではないナニモノかのよう。
そんなナニモノかの姿を、写真というメディアは、淡々と写し取ります。
冷酷さすら感じるほどのリアルが、そこにありました。
ぶっちゃけ、このオッサンには、何の感情移入もありませんが (笑)
そんな “father” と向き合い、被写体として撮り続けている息子の金川さんには、興味を引かれました。
どういう気持ちで撮影しているのか。
いや、むしろ、感情を抑えて撮影に徹しているのか
レンズの向こうに見えているのは、
肉親である父なのか、それとも、父の姿をしたナニモノなのか。
曇りガラス越しに映るセルフポートレート写真が、
金川さんと “father” との微妙な距離感を象徴しているようで、とても印象的でした。
さてさて、今回の展覧会では、“father” だけでなく、
金川さんの “father” の姉を映した写真シリーズも紹介されていました。
金川さんの伯母に当たるこちらの人物は、
20年ほど消息不明で、2010年に発見されたそうです。
“father” 同様、失踪の理由は不明とのこと。
「血筋」「家系」 という言葉が、頭をよぎります。
他人の僕でさえ、そうなのですから、
おそらく金川さん本人はもっと意識しているはず。
つくづく、どういう心境でカメラを構えているのか気になります。
ちなみに、金川さん自身の考えやこれまでの経緯は、
会場で無料で配れているテキストで、ビッシリと紹介されています。
情報量の多いテキストではありますが、読めば読むほど、
“father” と “father” の姉のことが、さらによくわからなくなりました。
彼らはナニモノなのだろう。。。
正直なところ、鑑賞してから数日経っていますが、
自分の中では、イマイチ作品をうまく飲み込めていません。
いや、むしろ、まだ咀嚼できていないかも。
他人の家に行って、その家ではポピュラーな妙な家庭料理を食べさせられたような。
決してマズくはないのですが、どう表現していいかわからない味。
とにもかくにも、心がザワザワする展覧会でした。
さてさて、現在、横浜市民ギャラリーあざみ野では、
同時開催として、“写真の中の身体” というコレクション展が開催中。
こちらも無料です。
数ある展示品の中で個人的に気になったのは、昔のアメリカの警察写真用の装置。
ちゃんと撮られたくないために、
暴れる人が多数いたとのことで、押さえつけるためのベルトが常備されていたそうです。
ちなみに、そんな風にして撮影された実際の警察写真も展示されていました。
暴れるどころか、微笑んでるじゃん!!
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