皆さまは、覚えているだろうか?
渋谷にある岡本太郎の巨大壁画 《明日の神話》 の一部に、
とある若手アーティスト集団が、福島原発をイメージさせる絵を付けくわえたイタズラ騒ぎを。
この騒動を起こしたのは、Chim↑Pom (チン↑ポム) という6人組のアーティスト集団。
実は、彼らは、2008年にも騒動を起こしています。
被爆地である広島県の上空に、
飛行機雲で、 『ピカッ』 という文字を描くアートパフォーマンスを行ったのです。
これに、広島市民が大反発。
報道は過熱し、謝罪会見にまで発展、
予定されていた広島市現代美術館での展覧会が取り止めになりました。
その翌年、彼らは、性懲りもなく、こんな本を発表しました。
なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか/河出書房新社
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・・・なんだかなぁ。
僕は、何よりも、 “面白いこと” が大好きです。
というか、自分の半分以上は、 “面白いこと” で出来ていると言っても過言ではありません。
でも、誰かを傷つけてまで、 “面白いこと” をしたいとは思いません。
それゆえに、Chim↑Pomのこうしたアート活動は、嫌いも嫌い。大嫌いです。
自分と同世代の20代のアーティストが頑張っていることは、応援したい気持ちもありますが。
Chim↑Pomに関しては、応援しようとは、全く思いません。
しかし、少女漫画の法則にもあるように、
「嫌い嫌い!」 と言ってると、どうにも気になってしまうのは、人間の性 (さが) 。
ついつい、Chim↑Pomの動向は、気になってしまいます。
あくまで、嫌いなアーティストが、また何をしでかすのか、が気になるだけであって。
「べ、別に、好きじゃないんだからねっ!」
くれぐれも誤解しないで頂きたい (焦)
さてさて、そんなChim↑Pomが、ワタリウム美術館にて、
キュレーションを担当した “ひっくりかえる展” が開催されています。
しかも、好評につき、7月8日までの会期が、7月29日までに延長されたそうな。
これは、行くしかありません。
行った上で、Chim↑Pomのアートを、ケチョンケチョンに批判するしかありません。
会場に展示されていたのは、Chim↑Pomの作品は、もちろんのこと。
ネット上を騒がせた謎の指差し作業員の映像や、
『イラク戦争終結!』
という嘘のニューヨークタイムズの号外を作って各地でばらまいたThe Yes menの活動の紹介、
そして、オウム真理教の特別手配犯の3人の顔を模写した竹内公太さんの 《ポータブルマインド》 など、
社会や政治に、真っ向からアートの力で立ち向かう (挑発する?) 作品ばかりが展示されています。
ユーモアに包んだものもあれば、嫌悪感しか催さないものもありましたが。
どれもこれも、確かに、社会や政治に立ち向かっているからゆえの表現であり、心が大きく揺さぶられました。
“アート=エンターテインメント” とは、僕の見解ですが、
今回の美術展に展示されていたのは、それとは全くベクトルが違う作品ばかり。
アートのもう一つ大事な側面を、まざまざと見せつけられました。
並みの学芸員さんのキュレーションでは、
ここまで振り切った美術展は開催できないことでしょう。
Chim↑Pomならではのキュレーションでした。
そこは、素直に、スゴいと思いました。
また、キュレーションだけでなく、
今回出展されていたChim↑Pomの作品の数々には、いい意味で、激しく動揺させられました。
特に、2階3階の吹き抜けの空間を巧く利用した 《つきささる》 というインスタレーション作品は、まさに、心に突き刺さる作品。
説明が無くても、その作品を目にした途端、3・11の恐怖が頭をよぎりました。
直接的に表現していないはずなのに、どうしようもなく不安を感じるのです。
しばらく、あの作品の光景は、頭にこびりついて離れないことでしょう。
それから、ワタリウム美術館の展示室内に、直接ガソリンをかけ引火させ、
その火が残したすすがドローイングとなった 《いきのこる》 という作品。
残されたすすは、非常口のマークを表していました。
・・・が、中の人は、いません。もしや、生き残れなかった??
と心配していたのですが、ワタリウム美術館の外に、無事に避難していました。
良かった良かった (笑)
個人的に、一番印象に残ったのは、 《気合い100連発》 という映像作品。
津波の瓦礫の山の中で、Chim↑Pomと被災地の若者たちが円陣を組み、
アドリブで、気合いの入る言葉を100連発絶叫していくというもの。
これまでのChim↑Pomに対するモヤモヤが晴れて、とても清々しい気分になりました。
アートに対するイメージだけでなく、
僕の中でのChim↑Pomへの悪いイメージが、ひっくりかえる展覧会でした。
ちなみに。
ポスターやチラシに使われている写真も、
Chim↑Pomの 《レッド・カード》 という作品。
福島第一原発の収束作業に、2ヶ月従事したChim↑Pomのメンバーが、
レッドカード越しで、福島第一原発をセルフタイマー撮影したものです。
この作品にちなんで、
美術展チケットも、レッドカード仕様でした (笑)
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ひっくりかえる展
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