今年2018年は、いわさきちひろ生誕100年の節目の年。
それを記念して、東京と安曇野、両方のちひろ美術館では、
「Life」をテーマに様々な分野で活躍する7人 (組) の作家とコラボレーションする展覧会シリーズ、
“Life展” を1年を通じて開催していくそうです。
ちひろ美術館・東京での “Life展” 。
その1発目を飾るのが、“まなざしのゆくえ 大巻伸嗣” です。
ダイナミックかつ美しいインスタレーション作品に定評のある現代アーティスト大巻伸嗣さん。
今回の展覧会では、ちひろ美術館・東京の空間全体を、
いわさきちひろの絵の世界を体感するような、巨大なインスタレーション作品に仕上げています。
まずはじめの展示室1では、ベトナム戦争を題材にした 『戦火のなかの子どもたち』 を、
震災と戦争をテーマにした大巻さんの新作 《Echoes-Genius Loci》 と合わせるように展示。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
《Echoes-Genius Loci》 の赤い色が、まるで戦火のように感じられました。
『戦火のなかの子どもたち』 に描かれた女性の切迫した表情が、より真に迫るようです。
また、《Echoes-Genius Loci》 の一部は鏡面になっているため、
作品の目の前に立つと、あたかも自分が戦火に巻き込まれているかのような感覚に。
思わず胸が苦しくなりました。
こちらの展示室を出た時に、”あぁ、自分は生きてたんだ…” と安堵感。
「Life=生」 を感じずにはいられない作品でした。
そのまま階段を上がると、ガラッと雰囲気が一変。
優し気な空間が広がっていました。
空?それとも、海?
ひらひらした青い布を抜けて展示室に入ると、そこは夜の世界。
裸電球の光が灯る暗い空間。
壁には、ランダムに展示されたちひろの絵。
そして、床には木製の小舟が置かれています。
こちらの小舟には、靴を脱げば乗船可能とのことなので、乗ってみました。
目線が低くなったことで・・・
まるで夜の海の上空にちひろの絵がポツンポツンと浮かび上がっているような印象に。
それはそれは、幻想的な光景でした。
大巻さんがセレクトしたというちひろの絵は、それぞれが独立しているはずなのですが。
“あの絵とあの絵は、こんな風に繋がっているんじゃないかな?”
“あっちの絵とこっちの絵は、なんか響きあうものがあるなぁ”
など、夜空に星座が生まれるように、
ちひろの絵同士が線を結んでいくようでした。
あまりに居心地がよくて、このままここで眠りにつきたかったほどです (笑)
さて、今回の展覧会で最もインパクトを受けたのは、
展示室4を大胆に使ったインスタレーションでしょうか。
展示室2以上に暗い展示室4。
その先には、何やら1枚の絵が展示されています。
近づいてみるとそこに掛けられていたのは、ちひろが描いた黒いダリアの絵。
さらに、その先には、展覧会のために制作したという新作、
《Echoes-Crystallization -ひかりの風景 ちの記憶》 が展示されていました。
《Echoes-Crystallization》 は、消えゆく生命である絶滅危惧種の植物を、
過ちを消し去るツールである修正液と、水晶の粉で描く作品シリーズです。
大巻さんは、この新作の制作中に、
広島の原爆を題材にしたちひろの絵本 『わたしがちいさかったときに』 を繰り返し読んだのだそう。
だからでしょうか。
この作品が目に飛び込んできた瞬間に、
美しさと力強さ、そして儚さなど、いろんな感情が同時に押し寄せてきました。
それらの感情を完全には受け止めきれず。
一瞬、足がすくんでしまいました。
ちなみに、今回の展覧会の中で個人的に一番印象に残っているのは、
大巻さんが約30年前、美術予備校時代に描いたという植物のデッサンです。
そのアクリル面に、ちひろの庭の光景が映り込んでいたのが、
いろんな時代、いろんな 「Life=人生」 がレイヤーのように重なり合った光景の様で、
なんとも印象的でした。
最後に、重要なお知らせ。
今回の “Life展” には、東京と安曇野すべての “Life展” に、
何度でも入館できるパスポート、Life展パスポートがあります。
その価格は、なんと1000円!
あり得ないくらい価格設定に、思わず二度見してしまいました。
「Life=生活」 に優しい価格設定です。
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いわさきちひろ生誕100年「Life展」 まなざしのゆくえ 大巻伸嗣
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