現在、千葉市美術館では、お家芸ともいうべき江戸美術の展覧会、
その名も、“百花繚乱列島−江戸諸国絵師めぐり−” が開催中です。
ちなみに、「絵師」 と書いて、「うまいもん」 と読ませています。
“『諸国うまいもんめぐり』 って、なんだか物産展みたいだなぁ(笑)”
と思ったアナタ、実に勘が鋭いです!
そう、こちらは、地方が生んだご当地人気絵師や藩の御用絵師など、
いわばローカルスター、ケンミンスターともいうべき絵師にスポットライトを当てた展覧会。
北は北海道から南は鹿児島まで、日本全国津々浦々から、
ローカルスター絵師の作品約190点 (前後期あわせて) が大集結しています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
まさに、会場は江戸美術の物産展状態!
全国各地の (絵が) 巧いもんの作品が、まとめて味わえてしまいます。
出店・・・もとい、出展作家の中には、
司馬江漢や円山応挙といった知名度の高い絵師もいましたが。
「風狂野郎」「水城侠客」 といったパンクな号も持つ水戸の絵師・林十江に、
鮎の絵を特に得意とした下野国の絵師・小泉斐 (こいずみ あやる) に、
山本梅逸に田中訥言に土方稲嶺に廣瀬臺山に・・・etc
そのほとんどが、全国的には知名度の低いマイナーな絵師ばかり。
ただし、「知名度が低い=オモシロくない」 ということではありません。
むしろ、逆!
それぞれ個性があって、いや、個性がありすぎて、
その辺の江戸 (=東京) の絵師なんか、霞んでしまうほどです。
全国区のCMや番組よりも、ローカルCMやローカル番組のほうが個性が強くてオモシロい。
それに通じるものがあります。
企画が秀逸。うまいことを考えたものです。
そして、質も量も大満足。
この展覧会自体が、“うまいもん” でした。
さてさて、会場には、お腹がいっぱいになるくらいに、うまいもんがありましたが。
その中でも特に味が濃かったものを、いくつかご紹介いたしましょう。
まずは、松前藩家老で絵師の蠣崎波響の 《カスベ図》。
エイの生臭い匂いまでが感じられそうなほどにリアルな一枚です。
どこかの漁港にいるかのような気分に。
「蠣崎波響」 という絵師の名前からして、海のイメージを増幅しています。
海つながりで、もう一枚。
常陸の絵師・根元常南の 《旭潮鯨波図》 です。
画面のほとんどが海で占められています。
鯨もうっすら頭を覗かせるだけ。
朝日もうっすら頭を覗かせるだけ。
せめて、どちらかはもう少し大きく描きましょう!
続いては、与謝蕪村の弟子で後半生は大津を拠点に活動した紀媒亭の 《大津三社図》 。
描かれているのは、大津にある三つの社 (新宮社、四宮社、三尾神社) に関わりの深い生き物。
それぞれ、カラスとサギとウサギだそうです。
元祖ゆるキャラ?
ゆるゆるすぎて、神の使い感はありませんでした (笑)
長崎に生まれ鳥取で活動した絵師・片山楊谷による 《猛虎図》 はインパクトが強烈。
3種の虎を、毛並みまで丹念に描ききった作品です。
その独特のふわふわ感も強烈でしたが、純粋にホワイトタイガーの顔が強烈でした。
・・・・・何、この悪魔の生き物は?
殺人ピエロみたいな顔をしています。
どうか夢に出てきませんように。
最後に紹介したいのは、鳥取の絵師で 「鯉の稲皐」 の異名を持つ黒田稲皐の 《群鯉図》 です。
《群鯉図》 というタイトルから想像する鯉の数の数倍は描かれていました。
群ではなく、大群です。
大量の鯉が池に集まっているようにも見えるのですが。
しばらく見ていると、実は泳いでいる鯉は数匹で、
それらがアニメーションのように描かれているようにも見えてきます。
どちらにせよ、鯉の “のそ~っ” とした泳ぐスピードが、絵から感じ取れました。
「鯉の稲皐」 の異名は伊達ではありませんね。
ちなみに、うまいもんの聖地・大阪は、
絵師は絵師でも、浮世絵師がフィーチャーされていましたが・・・
全っ然、オモロくなかったです (笑)
話術やキャラのオモシロさに関しては、大阪が圧倒的ですが。
こと、絵のオモシロさに関しては、意外と苦手なのかもしれません。
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百花繚乱列島−江戸諸国絵師めぐり−
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