現在、原美術館で開催されているのは、
“現代美術に魅せられて―原俊夫による原美術館コレクション展” の後期です。
前期は、原俊夫館長が原美術館を開館する前、
1970年代後半から80年代前半にかけてコレクションされた作品を中心に紹介。
いうなれば、原美術館エピソード1のような展覧会でした。
続く後期では、美術館の活動を通して出会い購入した作品や、
これまで開催された企画展などをきっかけにコレクションされた作品の数々が紹介されています。
右:ミカリーン トーマス 《ママ ブッシュ:母は唯一無二の存在》 2009 ほか 展示風景撮影:木奥惠三
中央:増田佳江 《遠い歌 近い声》 2012 ほか 展示風景撮影:木奥惠三
と、それだけに、
“あっ、この作品、あの展覧会の時に観たなぁ”
“おっ、そうそう、この作品もあった!あの時は、あっちの部屋に展示されてなかったかな?”
といった具合に、嬉しい再会に懐かしい記憶が次々と呼び戻されました。
まさに、原美術館40年の総集編のような展覧会です。
原美術館ファンにとっては、永久保存版のような展覧会。
反対に、原美術館を数えるほどしか訪れたことがない、
または一度も訪れたことがない人にとっては、40年をダイジェストで楽しめる展覧会といえましょう。
誰にとっても貴重な機会です。
さてさて、今回出展されていた作品の中で、特に印象に残った作品をいくつかご紹介。
まずは、ブラジル出身の作家アドリアナ・ヴァレジョンによる 《スイミングプール》 です。
アドリアナ ヴァレジョン 《スイミングプール》 2005年 カンヴァスに油彩 110x140cm ©Adriana Varejaõ
何の変哲もないスイミングプールが描かれているだけなのに、
ジーッと見つめていると、胸を締め付けられるといいますか、トラウマを思い返すといいますか。
妙に不安感を煽られました。
同じ 《スイミングプール》 をモチーフにした作品でも、金沢21世紀美術館にあるのとは大違いです。
水がゆらゆらと揺らめいている様子に、単純に目が酔ってしまうというのもありますが。
画面に描かれていない誰かの存在を感じずにはいられないのも不安の一因です。
それと、構図的に、自分がスイミングプールに飛び込む、
その直前の光景のように感じられるのも不安の原因かもしれません。
続いては、加藤泉さんの彫刻作品。
加藤泉 《無題》 2007年 木、アクリル絵具、木炭、シリコン、椅子 95x65x45.5cm ©Izumi Kato
カワイイんだか、気味が悪いんだか。
悲しげなんだか、微笑ましいんだか。
生きてるんだか、無機物なんだか。
見れば見るほど、考えれば考えるほど、
ナニモノなのかわからなくなってくる不思議なヤツです。
ともあれ、あの日鑑賞して以来、自分の心の中にもコイツが住みついている気がします。
心の片隅でちょこんと座ってます。
もう少し奥に腰掛ければいいのに。
それから、奈良美智さんの 《Eve of Destruction》 も印象的な一枚でした。
奈良美智 《Eve of Destruction》 2006年 カンヴァスにアクリル絵の具 117x91cm ©Yoshitomo Nara
三戸なつめ並みに前髪を切りすぎた少女が、焼け野原に一人たたずんでいます。
そして、なぜか表情には微笑みを浮かべています。
手にしているのは、タートルズのレコード。
とりあえず、このレコードを聴けよ、
聴けばわかると言われているような気がしてなりませんでした。
画風は全く違うのですが、『20世紀少年』 の世界観と通ずるものを感じます。
そうそう、この絵に合わせる形で、
横尾忠則さんと柳幸典さんの戦争をテーマにした作品も展示されていました。
この展示空間は、特にメッセージ性が濃かった気がします。
左:横尾忠則 《戦後》 1985 右:柳幸典 《38度線》 1991 展示風景撮影:木奥惠三
ちなみに、今回改めて原美術館コレクションを目にして、
作品の年代も作風も、作家の地域やジャンルが、実に多岐にわたっていることを実感しました。
いい意味で、バラバラ。
なぜ、その作品をコレクションに加えたのか?
体系だったコレクションを形成したいわけでも、
お客さんに人気がありそうな作品だから収集したわけでもなし。
原館長がその作品を気に入ったから、コレクションに加えた。ただそれだけ。
美術コレクションなんて、それでいいのだ。
そんな基本的なことを教えられたような展覧会でした。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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“現代美術に魅せられて―原俊夫による原美術館コレクション展” の後期です。
前期は、原俊夫館長が原美術館を開館する前、
1970年代後半から80年代前半にかけてコレクションされた作品を中心に紹介。
いうなれば、原美術館エピソード1のような展覧会でした。
続く後期では、美術館の活動を通して出会い購入した作品や、
これまで開催された企画展などをきっかけにコレクションされた作品の数々が紹介されています。
右:ミカリーン トーマス 《ママ ブッシュ:母は唯一無二の存在》 2009 ほか 展示風景撮影:木奥惠三
中央:増田佳江 《遠い歌 近い声》 2012 ほか 展示風景撮影:木奥惠三
と、それだけに、
“あっ、この作品、あの展覧会の時に観たなぁ”
“おっ、そうそう、この作品もあった!あの時は、あっちの部屋に展示されてなかったかな?”
といった具合に、嬉しい再会に懐かしい記憶が次々と呼び戻されました。
まさに、原美術館40年の総集編のような展覧会です。
原美術館ファンにとっては、永久保存版のような展覧会。
反対に、原美術館を数えるほどしか訪れたことがない、
または一度も訪れたことがない人にとっては、40年をダイジェストで楽しめる展覧会といえましょう。
誰にとっても貴重な機会です。
さてさて、今回出展されていた作品の中で、特に印象に残った作品をいくつかご紹介。
まずは、ブラジル出身の作家アドリアナ・ヴァレジョンによる 《スイミングプール》 です。
アドリアナ ヴァレジョン 《スイミングプール》 2005年 カンヴァスに油彩 110x140cm ©Adriana Varejaõ
何の変哲もないスイミングプールが描かれているだけなのに、
ジーッと見つめていると、胸を締め付けられるといいますか、トラウマを思い返すといいますか。
妙に不安感を煽られました。
同じ 《スイミングプール》 をモチーフにした作品でも、金沢21世紀美術館にあるのとは大違いです。
水がゆらゆらと揺らめいている様子に、単純に目が酔ってしまうというのもありますが。
画面に描かれていない誰かの存在を感じずにはいられないのも不安の一因です。
それと、構図的に、自分がスイミングプールに飛び込む、
その直前の光景のように感じられるのも不安の原因かもしれません。
続いては、加藤泉さんの彫刻作品。
加藤泉 《無題》 2007年 木、アクリル絵具、木炭、シリコン、椅子 95x65x45.5cm ©Izumi Kato
カワイイんだか、気味が悪いんだか。
悲しげなんだか、微笑ましいんだか。
生きてるんだか、無機物なんだか。
見れば見るほど、考えれば考えるほど、
ナニモノなのかわからなくなってくる不思議なヤツです。
ともあれ、あの日鑑賞して以来、自分の心の中にもコイツが住みついている気がします。
心の片隅でちょこんと座ってます。
もう少し奥に腰掛ければいいのに。
それから、奈良美智さんの 《Eve of Destruction》 も印象的な一枚でした。
奈良美智 《Eve of Destruction》 2006年 カンヴァスにアクリル絵の具 117x91cm ©Yoshitomo Nara
三戸なつめ並みに前髪を切りすぎた少女が、焼け野原に一人たたずんでいます。
そして、なぜか表情には微笑みを浮かべています。
手にしているのは、タートルズのレコード。
とりあえず、このレコードを聴けよ、
聴けばわかると言われているような気がしてなりませんでした。
画風は全く違うのですが、『20世紀少年』 の世界観と通ずるものを感じます。
そうそう、この絵に合わせる形で、
横尾忠則さんと柳幸典さんの戦争をテーマにした作品も展示されていました。
この展示空間は、特にメッセージ性が濃かった気がします。
左:横尾忠則 《戦後》 1985 右:柳幸典 《38度線》 1991 展示風景撮影:木奥惠三
ちなみに、今回改めて原美術館コレクションを目にして、
作品の年代も作風も、作家の地域やジャンルが、実に多岐にわたっていることを実感しました。
いい意味で、バラバラ。
なぜ、その作品をコレクションに加えたのか?
体系だったコレクションを形成したいわけでも、
お客さんに人気がありそうな作品だから収集したわけでもなし。
原館長がその作品を気に入ったから、コレクションに加えた。ただそれだけ。
美術コレクションなんて、それでいいのだ。
そんな基本的なことを教えられたような展覧会でした。
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