2018年春、中村屋サロン美術館で始動した新企画 “中村屋サロン アーティストリレー” 。
出展作家自身が次の作家を指名し、リレー形式で繋いでいく。
言うなれば、『笑っていいとも』 の 「テレフォンショッキング」 のような展覧会シリーズです。
この前代未聞のアーティストによるリレーのバトンを託された人物は2人。
つまり、2本のコースで、“中村屋サロン アーティストリレー” は繋がっていくのです。
先日、そんな第一走者の1人、新恵美佐子さんの個展を紹介しましたが。
現在は、もう一人の第一走者、染谷聡さんによる個展 “染谷聡「あめのふる穴」” が開催中です。
染谷聡さんは、京都を拠点に活躍する漆芸家。
独自の解釈による “加飾” で、木の一部に漆を塗ったり、
五円玉の穴を漆で埋めたり、
とにかく独自路線をひた走り、これまでにない漆芸作品を生み出し続けています。
いうなれば、ニュータイプの漆芸家です。
染谷さんの代表的な作品のシリーズの一つが、《みしき》 。
形がいいなぁと拾ってきた木の枝や石に合う 「うつわ」 を制作するというシリーズです。
と、それだけ聞くと、いや、実物を目にしても、
“へー。変わってるなァ” くらいの感想しか抱けないでしょうが。
実は、《みしき》 は、意味が分かると深い作品なのです。
漆という素材は、半永久的に残ります。
対して、木の枝は、いつか朽ち果てます。
木の枝の形に合わせて制作した 「うつわ」 なのに、いずれその木の枝は消滅。
そうなると、「うつわ」 は何のために存在することになるのであろうか。
う~ん。いろいろと考えさせられる、想像させられる作品です。
この他にも、「これは柿なのか?それとも、心臓なのか?」 とか、
「これは軍手なのか?突き指なのか?」 とか、
いろいろと考えさせられる、想像させられる作品がズラリ。
いい意味で、頭が疲れる展覧会でした。
観終わった後は、甘いものが無性に食べたくなります。
月餅かクリームパン、もしくは、うすあわせ。
さてさて、今回の展覧会では、菓子繋がりで、
骨董品の浄法寺菓子盆を用いた新作も発表されていました。
そのうちの1つが、こちらの 《動いている模様》 という作品です。
浄法寺菓子盆の特徴は、その絵付けの素朴さ。
中には上手いものもありますが、反対に売り物とは思えないほど雑なものも (笑)
それらを伝言ゲームのように並べてみると、この通り。
桃の絵が最終的には、クレヨンしんちゃんみたいな感じに。
何がどうなって、こうなったのか。
ちなみに、そんな最終形態を受けて、染谷さんが絵付けしたお皿も併せて展示されています。
《動いている模様》 は、そういう作品。
また、同じく骨董品の浄法寺菓子盆が用いられていたのが、
《三保の松原と富士とねずみが空けた池》 という作品です。
三保の松原と富士は、おそらく最初から描かれていた絵柄。
長い年月のどこかで、ネズミに齧られて空いてしまった穴は、
漆の匠、染谷さんによって、風情ある池の姿に劇的大変身を遂げていました。
まぁ、なんということでしょう。
さて、こちらの作品、背後に何やら鏡が設置されています。
覗き込んでみたときに、思わずクスッ。
盆の裏に、齧った張本人が描かれていました。
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染谷聡「あめのふる穴」
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