日本では5年ぶりとなるイギリス美術界の巨匠J・M・W・ターナーの大規模な展覧会、
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の “ターナー 風景の詩” に行ってきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
イギリス各地の美術館や所蔵家、
日本の美術館から厳選された油彩や水彩、版画作品約120点が紹介されています。
日本初公開のものも含め、出展作はすべてターナーの作品。
右を見てもターナー、左を見てもターナー。
ターナー100%の展覧会です。
(1点だけ、ウイリアム・アランという画家が描いたターナーの肖像画がありましたが、それも、まぁ広い意味ではターナーの作品といえましょう)
ターナーと言えば、風景画。
今でこそ、美術の1ジャンルとして人気の高い風景画ですが。
実は、ターナーが活躍した当時、美術界には、
「歴史画>肖像画>>風景画」 というヒエラルキーが存在していました。
歴史画と比べたら、取るに足らないもの。
そんな扱いを受けていたのです。
そこで、その生涯において、風景画にこだわったターナーは、
風景画の地位を向上させるべく、風景画に “崇高” という概念を持ち込みました。
そのように描かれたターナーの風景画は、よく言えば、神々しくドラマチック!
悪く言えば、やや演出しすぎなきらいがあります。
例えば、こちらの 《スノードン山、残照》 という作品。
《スノードン山、残照》 1798-1799年 水彩、スクレイピングアウト・紙 52.7×75.6cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群
©Trustees of the National Galleries of Scotland
スノードン山の広大で荒涼としたパノラマだけでも十分に絵になっているというのに。
あえて日没後のわずかに光が残る様子、
マジックアワーの光景を描くことで、よりドラマチックな風景画に仕上げています。
単なる風景画というレベルを超えて、ドキュメンタリー映像を観ているかのよう。
『情熱大陸』でお馴染みの窪田等さんのナレーションが聞こえてくるかのようでした。
・・・・・と思ったら、空耳ではなく、音声ガイドを担当しているのが窪田等さんでした。
ちなみに、今回出展されていた中で、
もっとも演出多め、やりにいってる (←?) 作品が、こちら。
《ストーンヘンジ、ウィルトシャー》 1827-1828年 水彩・紙 27.9×40.4cm ソールズベリー博物館
On loan from The Salisbury Museum, England
世界七不思議の一つ、ストーンヘンジを題材にした一枚です。
ストーンヘンジ単体でも、絵力は強め。
それに加えて、立ち込める雲、稲妻、雷に打たれた羊が描きこまれています。
さらに、人も倒れています。
その横には、吠える犬。
さすがに要素が多すぎ。
内容が渋滞しています。
やりすぎターナー。
また、日本と同じく海洋国であったイギリス。
それゆえ、ターナーは海の絵、いわゆる海景画を多く描いています。
その中で特に心に残ったのは、ターナー自身もお気に入りで、
晩年に買い戻そうとした (結果的には実現せず) 《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》 です。
《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》 1802年展示 油彩・カンヴァス 91.5×122cm サウサンプトン・シティ・アート・ギャラリー
On loan from Southampton City Art Gallery ©Bridgeman Images / DNPartcom
漁師たちを乗せた小舟が今にも転覆しそうな予感。
緊張感が漂っています。
“こんな荒天の時に、わざわざ漁に出るなんて” とも思いますが、
空を見るに、晴れ間が一部覗いているので、急に悪天に変わった可能性も無きにしも非ずです。
ちなみに、この作品、今でこそ 《風下側の海辺にいる~》 というタイトルですが。
長い間、タイトルが不明だったそうで、1977年に現在のタイトルに落ち着いたとのこと。
それまでは、《波》 というタイトルだったそうです。
ざっくりしすぎ!適当に付けた感満載です。
長い間、あの漁師の存在は無視されていたのですね。
ちなみに、もう一つ心に残った海景画が、《海辺の日没とホウボウ》 という作品。
画面の手前に2匹のホウボウらしき魚が描かれています。
頭が大きく、というか、ほぼ頭。
モンスターのたぐいです。
日没に海。
あとはイルカがいれば、皆に愛される絵になろうというのに。
ホウボウを描いたばかりに、グロテスクな印象の絵となっていました。
個人的には、ラッセンより普通に好きですが。
最後に、ジワジワときた作品をご紹介。
《モンテ・マリオから見たローマ》 です。
こちらは、ターナーがイタリア旅行をした際に、スケッチした素描をもとに描いた一枚。
そんなローマの景色はさておき、何よりも気になるのは手前に描かれた1組の男女です。
男性のほうは、リコーダー的なものをピューと吹いています。
しかも、2本同時に!
そんな謎のパフォーマンスを間近で見させられている女性は、なぜか顔を覆っています。
“ええええ~~~!?何なに、この人~~?!2本同時に笛吹いてる――――!!(ガビーン)”
的なツッコミを、心の中でしてるのかもしれません。
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東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の “ターナー 風景の詩” に行ってきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
イギリス各地の美術館や所蔵家、
日本の美術館から厳選された油彩や水彩、版画作品約120点が紹介されています。
日本初公開のものも含め、出展作はすべてターナーの作品。
右を見てもターナー、左を見てもターナー。
ターナー100%の展覧会です。
(1点だけ、ウイリアム・アランという画家が描いたターナーの肖像画がありましたが、それも、まぁ広い意味ではターナーの作品といえましょう)
ターナーと言えば、風景画。
今でこそ、美術の1ジャンルとして人気の高い風景画ですが。
実は、ターナーが活躍した当時、美術界には、
「歴史画>肖像画>>風景画」 というヒエラルキーが存在していました。
歴史画と比べたら、取るに足らないもの。
そんな扱いを受けていたのです。
そこで、その生涯において、風景画にこだわったターナーは、
風景画の地位を向上させるべく、風景画に “崇高” という概念を持ち込みました。
そのように描かれたターナーの風景画は、よく言えば、神々しくドラマチック!
悪く言えば、やや演出しすぎなきらいがあります。
例えば、こちらの 《スノードン山、残照》 という作品。
《スノードン山、残照》 1798-1799年 水彩、スクレイピングアウト・紙 52.7×75.6cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群
©Trustees of the National Galleries of Scotland
スノードン山の広大で荒涼としたパノラマだけでも十分に絵になっているというのに。
あえて日没後のわずかに光が残る様子、
マジックアワーの光景を描くことで、よりドラマチックな風景画に仕上げています。
単なる風景画というレベルを超えて、ドキュメンタリー映像を観ているかのよう。
『情熱大陸』でお馴染みの窪田等さんのナレーションが聞こえてくるかのようでした。
・・・・・と思ったら、空耳ではなく、音声ガイドを担当しているのが窪田等さんでした。
ちなみに、今回出展されていた中で、
もっとも演出多め、やりにいってる (←?) 作品が、こちら。
《ストーンヘンジ、ウィルトシャー》 1827-1828年 水彩・紙 27.9×40.4cm ソールズベリー博物館
On loan from The Salisbury Museum, England
世界七不思議の一つ、ストーンヘンジを題材にした一枚です。
ストーンヘンジ単体でも、絵力は強め。
それに加えて、立ち込める雲、稲妻、雷に打たれた羊が描きこまれています。
さらに、人も倒れています。
その横には、吠える犬。
さすがに要素が多すぎ。
内容が渋滞しています。
やりすぎターナー。
また、日本と同じく海洋国であったイギリス。
それゆえ、ターナーは海の絵、いわゆる海景画を多く描いています。
その中で特に心に残ったのは、ターナー自身もお気に入りで、
晩年に買い戻そうとした (結果的には実現せず) 《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》 です。
《風下側の海辺にいる漁師たち、時化模様》 1802年展示 油彩・カンヴァス 91.5×122cm サウサンプトン・シティ・アート・ギャラリー
On loan from Southampton City Art Gallery ©Bridgeman Images / DNPartcom
漁師たちを乗せた小舟が今にも転覆しそうな予感。
緊張感が漂っています。
“こんな荒天の時に、わざわざ漁に出るなんて” とも思いますが、
空を見るに、晴れ間が一部覗いているので、急に悪天に変わった可能性も無きにしも非ずです。
ちなみに、この作品、今でこそ 《風下側の海辺にいる~》 というタイトルですが。
長い間、タイトルが不明だったそうで、1977年に現在のタイトルに落ち着いたとのこと。
それまでは、《波》 というタイトルだったそうです。
ざっくりしすぎ!適当に付けた感満載です。
長い間、あの漁師の存在は無視されていたのですね。
ちなみに、もう一つ心に残った海景画が、《海辺の日没とホウボウ》 という作品。
画面の手前に2匹のホウボウらしき魚が描かれています。
頭が大きく、というか、ほぼ頭。
モンスターのたぐいです。
日没に海。
あとはイルカがいれば、皆に愛される絵になろうというのに。
ホウボウを描いたばかりに、グロテスクな印象の絵となっていました。
個人的には、ラッセンより普通に好きですが。
最後に、ジワジワときた作品をご紹介。
《モンテ・マリオから見たローマ》 です。
こちらは、ターナーがイタリア旅行をした際に、スケッチした素描をもとに描いた一枚。
そんなローマの景色はさておき、何よりも気になるのは手前に描かれた1組の男女です。
男性のほうは、リコーダー的なものをピューと吹いています。
しかも、2本同時に!
そんな謎のパフォーマンスを間近で見させられている女性は、なぜか顔を覆っています。
“ええええ~~~!?何なに、この人~~?!2本同時に笛吹いてる――――!!(ガビーン)”
的なツッコミを、心の中でしてるのかもしれません。
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