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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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わらしべ長者生活 <第十二話 凄技>

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美術品を手に、銀座を代表するギャラリーの数々を訪問し、
昔話 『わらしべ長者』 のように、物々交換してもらおうという企画。
それが・・・

わらしべ


銀座7丁目にある黒田陶苑にやってきました。




創業は、昭和10年。今年で開業84年目 (!) を迎えます。
元々は、北大路魯山人の作品の専売店としてスタート。
やがて、板谷波山や濱田庄司、加藤唐九郎といった気鋭の陶芸家の作品を扱うように。
今現在では、人間国宝や物故巨匠の名品から、
現代の陶芸家の作品まで、幅広いジャンルの陶磁器作品を取り揃えています。




ちなみに、黒田陶苑のロゴは、人間国宝の富本憲吉によるデザインとのこと。




黒田陶苑の3階に掲げられた 『陶苑』 の文字は、熊谷守一による揮毫とのこと。




開業84年の歴史を感じますね。
さて、今回ご協力頂くのは、黒田陶苑の黒田瑠美さん。
早速、持参した岡本東子さんの絵画作品を観てもらい、
交換してもいいと思える作品をいくつか選んで頂きました。
まず、黒田さんが選んだのは、北大路魯山人の複製画です。




“複製画かー。。。”

と、一瞬声に出してしまいそうになりましたが。
実は、ただの複製画ではないとのこと。
DNPが誇る最新のデジタル技術による複製再現された、高精細な複製画なのだそうです。
時代の経過とともに原画に付いてしまったシミや汚れ、
色褪せてしまった部分を、デジタル技術で1つ1つ丁寧に除去 (←気の遠くなるような作業!)。
当時のままの姿を忠実に再現したという超絶技巧の複製画です。
確かに、言われてみないと・・・いや、言われてみても、複製画とは思えません。


ちなみに、せっかくなので、北大路魯山人の器も見せてもらいました。




お値段も、こっそり教えてもらうことに。

「!!!」

さすがに、「複製画よりも器のほうと交換してください」 とは言えなかったです(笑)


続いて黒田さんが紹介してくれたのが、
同じ若手女性作家繋がりで、小林佐和子さんの作品でした。




「カワイイ~ラブラブ

さらに、蓋を開けると・・・




「中もカワイイ~ラブラブ


で、何気なく蓋を裏返してみると・・・




「カワ・・・えっ?え~~~っ!」

ただ可愛い紋様を絵付けしているのかと思いきや、練上手 (ねりあげで) で作られていたのですね!
練上手とは、色の異なる土を組み合わせて焼き上げた陶器。
焼き上げる前に色が付いているため、
金太郎あめの要領で、表も裏も同じような模様となるのです。
実は超絶技巧が随所に施された作品。
ファンシーでポップな見た目に騙されるところでした (←?)。

そんな小林佐和子さんの新作で、
「因幡の白兎」 をモチーフにしたオブジェと交換してくださるとのこと。
その作品が、こちらです。




白兎が着てる服の柄も、和邇の表面の模様も、もちろん練上手。
白兎と和邇の目は、象嵌なのだとか。




「カワイイ!」「スゴイ!」 が同時に押し寄せてくる、凄カワイイ作品です。

「じゃあ、(交換は) これでお願いします!」

「いや、とに~さん、もう1つ候補があるんです (汗)。
 岡本さんの描いた女性の手元に似合いそうな作品なんですけど」

そう言って、黒田さんが取り出したのが、こちら↓




“陶芸界の生けるレジェンド” 鯉江良二さんによる 《引出し黒茶盌》 です。
先ほどの小林さんの作品と比べてしまうと、
地味は地味なのですが、妙に惹き付けられるものがありました。
心をグワッと鷲掴みされる感じといいましょうか。
特に、この黒い色に惹かれます。

「あのー、黒田さん。“引出し黒” って何ですか?」

「普通、やきものを焼くときは、焼き終わった後に数日冷ましてから取り出すんですけど。
 鯉江さんの “引出し黒” の作品は、熱々の状態のまま取り出して、
 それを、水を張ったバケツみたいなところに入れて、急激に冷やして作るんです」

「何すか、そのワイルドな技法!」





確かに、表面を眺めれば眺めるほど、
マグマが急激に冷やされて固まった岩石や鉱石のように見えてきました。
「やきもの」 は、やはり 「焼き物」 なのですね。
そんな根本に気づかせてくれる作品です。


というわけで、小林さんの作品とも悩みましたが、
鯉江さんのワイルドな作品と交換させて頂くことにしました。




肌合いといい重さといい、持った感じが最高です。
交換から毎日、特に意味もなく手に取っています。




《不全の実》 の女性が、常に手元でクルミを弄んでいたように。


ちなみに。
来週5月25日に、1年に1度だけのスペシャル企画、
銀座の画廊が夜21時まで開廊する 「画廊の夜会」 が開催されます。
これまでに 『わらしべ長者企画』 にご協力くださった画廊のほとんどが参加しています。
もちろん、黒田陶苑も参加。
21時まで開廊しています。
是非、この機会に足を運んでみてはいかがでしょう?
各画廊で、「とに~さんのブログを観て来ました」 というと、何かあるかも?!


【今回ご協力いただいた画廊】
黒田陶苑
住所:東京都中央区銀座7-8-6




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