す現在、練馬区立美術館で開催されているのは、
“戦後美術の現在形 池田龍雄展-楕円幻想” という展覧会。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
こちらは、90歳を目前に控えた現在も、
現役バリバリで活動を続ける画家、池田龍雄さんの大々的な回顧展です。
戦後間もない初期の作品から、
近年発表された最新作まで。
約70年にも及ぶ池田さんの画業は、まさに、“生きる戦後美術史” 。
それらをイッキ見できる展覧会でした。
さて、池田龍雄さんと言えば、「ルポルタージュ絵画 (※)」 の中心人物の一人。
(※1950年代前半、当時の政治的・社会的な事件を取材して描かれた作品群のこと)
もちろん、今回の展覧会にも、数々のルポルタージュ絵画が出展されています。
ちなみに、ルポルタージュ絵画の中でも特に有名な作品の一つ、《網元(《内灘》シリーズ)》 が出展されていました。
こちらは、1953年に石川県のとある漁村で起きた闘争がテーマ。
漁師たちは米軍の試射場建設に反対していたそうなのですが。
接収されると補償金をたんまりと貰える網元は、反対闘争にそこまで本腰を入れていなかったそう。
まさに、絵に描いたような悪い奴を描いた一枚。
これ以上ないくらいに、悪人顔でした。
一度見たら忘れられないインパクトがあります。
また、他のルポルタージュ絵画も、インパクト大。
人間の黒い部分がフィーチャーされているだけに、
観れば観るほど、どんよりとした気持ちになっていきます。
なのに、なぜか目が離せない。
もっと他の作品も見たくなる。
小説界には、『イヤミス (※)』 というジャンルがありますが。
(※読んで嫌な気持ちになったり、後味の悪さを楽しむミステリー)
まさに、あんな感じ。
観て嫌な気持ちになるピクチャー。
『イヤピク』 です (←?)。
さてさて、社会に関心を寄せ、『イヤピク』 を量産していた池田氏ですが。
その後、関心の矛先が社会から宇宙へとシフト。
惑星の軌道が楕円であることから、
宇宙につながるモチーフとして楕円を描くようになります。
近づいて観てみると・・・
楕円の中には、人のような化物のような生物がビッシリ。
少しだけ、電波系の匂いがしました。
とはいえ、理解できるできないは別として、
「これが池田さんの宇宙観なのか!」 ということは伝わってきました。
池田さんの送信機は正常なようです。
ちなみに、この後に池田さんが発表したのが、《BRAHMAN》 シリーズ。
1977年から1988年まで15年間かけ、
全10章×30点=300点で、天地創造の神話を描いたという壮大なシリーズです。
今回の展覧会には、そのうちの56点が出展されていました。
正直なところ、「BRAHMAN=梵」 とか、天地創造とか、ちゃんと理解できる気はしませんが。
この作品群が目に飛び込んできた瞬間、
一気に宇宙空間に放り投げられてしまったような、不思議なトリップ感を味わいました。
何らかを超越したパワーがこの絵画群にあるのは確かなようです。
敬愛する音楽家の一人に、平沢進さんがいるのですが。
《BRAHMAN》 シリーズの世界観と、平沢進さんの壮大な音楽観が、どこか通じているような。
絵の前でトリップ感を味わっていた時に、ずっと平沢さんの音楽が頭の中で鳴り響いていました。
あれっ?僕も電波を受信中??
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