■絵金、闇を塗る
作者:木下昌輝
出版社:集英社
発売日:2018/7/5
ページ数:336ページ
江戸末期に土佐に生まれ、幼少より絵の才能を発揮し、
狩野派の技法を信じがたい短期間で習得した天才絵師、絵金。
江戸で絵を学んで故郷に戻り、土佐藩家老のお抱え絵師となるも、とある事件により追放される……。
狩野派を学びながらも独自の美を追究した絵金は、
血みどろの芝居絵など見る者を妖しく魅了する作品を描いた。
その絵に魅入られ、人生を左右された男たちの生きざまから、
絵金のおそるべき芸術の力と、底知れぬ人物像が浮かび上がる、傑作時代小説。
(Amazonより)
「伊藤若冲に葛飾北斎、狩野永徳、俵屋宗達・・・と、
日本美術史に名を残す絵師を主人公にした小説は数多くあれど。
まさか、“絵金” こと、弘瀬金蔵 (絵師金蔵) を主人公にした小説があったとは!
絵金は、高知県のご当地絵師。
地元では、もちろん有名なのでしょうが。
絵金の大々的な展覧会が、首都圏で開催されたことはないので、
日本美術が好きな人でも、絵金を知っている人は、おそらく相当少ないはず。
“そんなマイナーもマイナーな絵師の小説が面白いわけが・・・ (´ー`)┌”
と、あまり期待せずに読み進めたのですが。
気づけば、寝る間を惜しんで、一気読み!
そして、読み終わっても、しばらく余韻が抜けず、なかなか寝付けませんでした。
目を閉じると、まぶたの裏に現れる絵金の血みどろの絵。
しばらく、そんな日々が続きそうです。。。
小説は連作短編集の形式となっています。
それぞれの語り手は、絵金に関わりの深い人物。
絵金を召し抱えた土佐藩家老であったり、絵金の師匠に当たる狩野派の絵師であったり。
語り手の中には、八代目市川團十郎や武市半平太といった歴史上の著名人たちも。
彼らに共通しているのは、絵金の絵によって、人生が狂わされてしまうこと。
八代目市川團十郎が自殺した理由や、
土佐勤皇党が土佐藩士・吉田東洋を暗殺した理由は、絵金の絵に狂わされたから。
それだけ聞くと、さすがにフィクションにもほどがある気がしますが。
小説で読んでいると、まったく違和感なし。
むしろ、そうであったのではないかという気さえします。
不思議な説得力がありました。
語り手ではないですが、土佐を舞台にした小説ゆえ、
もちろん坂本龍馬や、人斬り以蔵こと岡田以蔵も登場!
彼らも例外なく、絵金の絵の魔力に憑りつかれてしまいます。
そこまで人を狂わせる絵金の絵を、実際にこの目で見てみたい。
でも、怖い。
見たいような、見たくないような。
とりあえず、絵金が描いた芝居屏風が公開されるという絵金祭りの日程をチェック。
くしくも、今月の第3土日だそうです。
行きたいような、行きたくないような。
ともあれ、これまで読んだ美術小説の中でも1,2を争う面白さでした。
強いて言うなら、『絵金、闇を塗る』 というタイトルが、若干ダサいかなぁと。
シンプルに、『絵金』 で良かった気も。
もしくは、表紙にデザインされているように、ローマ字で 『EKIN』 とか。
あ、でも、それだと、ET-KINGかHIKAKINみたいな感じですね。
それから、序盤に、やたらと性器の話題が登場します。
このまま最後まで、性器推しの小説なのだろうかと不安に思いましたが。
第二章からは、あまり登場しなくなりました。ホッ。
(星4.5つ)」
~小説に登場する名画~
武市瑞山 (半平太) 《獄中自画像》