水戸芸術館で開催中の展覧会、
“内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える” に行ってきました。
こちらは、国内外で活躍する現代美術家・内藤礼さんの、
国内においては2014年以来の個展にして、過去最大規模となる展覧会です。
今回の展覧会の一番の特徴は何と言っても、展覧会史上初となる自然光のみでの展示。
会場内に照明やスポットライトが無いのはもちろん、
特別な許可を取ったそうで、展覧会期間中は非常灯の光もオフになっています。
最初の展示室1に入ると、まず現れたのは、無数の小さな光の粒。
それらが空中に浮いています。
よく見ると、浮いているのは、天井から垂れ下がる糸に結びつけられたガラスのビーズ。
ただのビーズではなく、吹きガラスの手法で作られたビーズだそうで、
「息を吹き込む=魂を吹き込む」 ということを象徴しているのだそうです。
触れたら壊れてしまいそうな・・・いや、実際に触れたら壊れてしまう。
なんとも繊細な印象の作品でした。
思わず、息を止めて鑑賞してしまいました。
そんな繊細な作品の次に展示されていたのは、
《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 という作品です。
《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 2005年 アサヒビール大山崎山荘美術館、京都 撮影:森川昇
こちらは、むしろ息を吹きかけるべき作品。
白い水路のようなオブジェクトに、薄く水が張ってあります。
そこに息を吹きかけると、水が波打ち、息が可視化されるという作品です。
せっかくなので、チャレンジしてみることに。
フッと息を吹きかけてみましたが、さざ波程度のチョロチョロとした波しか発生しません。
もっと息を強く吹きかけるように指示されました。
そこで、バースデーケーキのろうそくを全部吹き消すくらいの力で、息を吹きかけてみることに。
が、それでも波は水路の途中で消えてしまいました。
端から端まで波打たせるには、もっと強い力で息を吹きかけなくてはならないようです。
内藤礼さんと言えば、“生” の内と外をテーマに制作を続けているアーティスト。
あのあと、さらに強く息を吹きかけ続けていたら、間違いなく “生” の外に行ってしまうところでした。
展示室1に関しては、天窓から光が射しこんでいたので、明るさは申し分なし。
自然光だけでも、なんとかイケるものですね。
しかし、続く展示室2には、天窓はありません。
当然、薄暗いのだろうと思いきや、先ほどの展示室1と、
その先に続く展示室3 (天窓あり) から洩れてくる光のおかげで、そこまで暗く感じませんでした。
光に満ちた部屋が 「“生” の内」 であり、
こちらの暗い部屋は 「“生” の外」 を表しているとのこと。
その住人である 《ひと》 が、あちこちにいます。
《ひと》 2012年 ギャラリー小柳、東京 撮影:木奥惠三
暗いとは言っても、決して不気味な暗さではなく、
《ひと》 の放つ雰囲気とあいまって、柔らかい暗さ、優しい暗さといった印象でした。
とは言え、僕が訪れたのは、晴れた日のお昼頃。
これが曇りの日や雨の日、夕方くらいだったら、また違った印象だったのかもしれません。
(ちなみに、自然光のみの展示であるため、9月1日より開館時間が通常の18時から17時閉場に変更となるそうです)
さてさて、《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 や 《ひと》 のように、
内藤礼さんが言わんとすることが、それなりに伝わってくる、理解できる作品もあるのですが。
天井から絹糸が1本垂れ下がっているだけだったり、
風船や鈴が紐でぶら下げられていたり、水の入ったガラス瓶が床に直置きされていたり。
《無題》 2009年(2008年-) 神奈川県立近代美術館 鎌倉、神奈川 撮影:畠山直哉
一体全体、何を表しているのか。
もはや禅問答に近い作品も多々ありました。
考えても考えても答えが出なかったので、
ギブアップして担当学芸員さんに回答を求めたところ・・・
「本当のところは内藤礼さんにしかわからない」
とのことでした。
ただ、内藤礼さんはフィーリングで適当に作っているわけでは決してなく。
絹糸をどこに設置するのか、風船や鈴を床からどれくらいの高さにするのか、
ガラス瓶の水の量をどれくらいにするのか、すべてミリ単位で悩みながら決めているそうです。
なので、間違いなくすべての作品に、ちゃんと意味があるのでしょう。
全体的には、とてもシンプルな展示空間なので、
引き算の美学のように感じられましたが、むしろ逆。
10からいろいろ引いた結果、1になったのではなく、
0.1や0.01といった繊細な作品を積み重ねた結果、1になった感じでした。
・・・・・・・う~ん。我ながら、上手く伝えられた気がしません (汗)
この展覧会ばかりは、もう実際に観に行って、内藤礼ワールドを感じて頂くしかないです。
Don't Think. Feel!
ちなみに、個人的にオススメなのは、
内藤礼さんがここ近年手掛けている 《color beginning》 シリーズの展示コーナー。
(↑こちらは、資生堂ギャラリーでの “椿会展 2015- 初心 -” の展示風景です)
《color beginning》 は、パッと見は、ただの真っ白なキャンバスなのですが、
じ~っと見つめ続けていると、淡いピンクや淡いオレンジ、淡い黄色が見えてくる絵画作品です。
これまで何度も美術館やギャラリーで発表されていますが、今回は初となる自然光での展示。
いつもよりも色を感じられました。
こんなにもカラフルな作品だったのですね。
最後に、この展覧会を訪れる際の注意ポイントを。
展覧会を観終わった直後には、他の展覧会を訪れないほうがベターです。
内藤礼さんの作品の薄味に身体がチューニングされてしまっているので、
その足で、普通のアーティストの作品を観ると、「味、濃っ!」 となってしまいますよ (体験談)。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
“内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える” に行ってきました。
こちらは、国内外で活躍する現代美術家・内藤礼さんの、
国内においては2014年以来の個展にして、過去最大規模となる展覧会です。
今回の展覧会の一番の特徴は何と言っても、展覧会史上初となる自然光のみでの展示。
会場内に照明やスポットライトが無いのはもちろん、
特別な許可を取ったそうで、展覧会期間中は非常灯の光もオフになっています。
最初の展示室1に入ると、まず現れたのは、無数の小さな光の粒。
それらが空中に浮いています。
よく見ると、浮いているのは、天井から垂れ下がる糸に結びつけられたガラスのビーズ。
ただのビーズではなく、吹きガラスの手法で作られたビーズだそうで、
「息を吹き込む=魂を吹き込む」 ということを象徴しているのだそうです。
触れたら壊れてしまいそうな・・・いや、実際に触れたら壊れてしまう。
なんとも繊細な印象の作品でした。
思わず、息を止めて鑑賞してしまいました。
そんな繊細な作品の次に展示されていたのは、
《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 という作品です。
《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 2005年 アサヒビール大山崎山荘美術館、京都 撮影:森川昇
こちらは、むしろ息を吹きかけるべき作品。
白い水路のようなオブジェクトに、薄く水が張ってあります。
そこに息を吹きかけると、水が波打ち、息が可視化されるという作品です。
せっかくなので、チャレンジしてみることに。
フッと息を吹きかけてみましたが、さざ波程度のチョロチョロとした波しか発生しません。
もっと息を強く吹きかけるように指示されました。
そこで、バースデーケーキのろうそくを全部吹き消すくらいの力で、息を吹きかけてみることに。
が、それでも波は水路の途中で消えてしまいました。
端から端まで波打たせるには、もっと強い力で息を吹きかけなくてはならないようです。
内藤礼さんと言えば、“生” の内と外をテーマに制作を続けているアーティスト。
あのあと、さらに強く息を吹きかけ続けていたら、間違いなく “生” の外に行ってしまうところでした。
展示室1に関しては、天窓から光が射しこんでいたので、明るさは申し分なし。
自然光だけでも、なんとかイケるものですね。
しかし、続く展示室2には、天窓はありません。
当然、薄暗いのだろうと思いきや、先ほどの展示室1と、
その先に続く展示室3 (天窓あり) から洩れてくる光のおかげで、そこまで暗く感じませんでした。
光に満ちた部屋が 「“生” の内」 であり、
こちらの暗い部屋は 「“生” の外」 を表しているとのこと。
その住人である 《ひと》 が、あちこちにいます。
《ひと》 2012年 ギャラリー小柳、東京 撮影:木奥惠三
暗いとは言っても、決して不気味な暗さではなく、
《ひと》 の放つ雰囲気とあいまって、柔らかい暗さ、優しい暗さといった印象でした。
とは言え、僕が訪れたのは、晴れた日のお昼頃。
これが曇りの日や雨の日、夕方くらいだったら、また違った印象だったのかもしれません。
(ちなみに、自然光のみの展示であるため、9月1日より開館時間が通常の18時から17時閉場に変更となるそうです)
さてさて、《タマ/アニマ(わたしに息を吹きかけてください)》 や 《ひと》 のように、
内藤礼さんが言わんとすることが、それなりに伝わってくる、理解できる作品もあるのですが。
天井から絹糸が1本垂れ下がっているだけだったり、
風船や鈴が紐でぶら下げられていたり、水の入ったガラス瓶が床に直置きされていたり。
《無題》 2009年(2008年-) 神奈川県立近代美術館 鎌倉、神奈川 撮影:畠山直哉
一体全体、何を表しているのか。
もはや禅問答に近い作品も多々ありました。
考えても考えても答えが出なかったので、
ギブアップして担当学芸員さんに回答を求めたところ・・・
「本当のところは内藤礼さんにしかわからない」
とのことでした。
ただ、内藤礼さんはフィーリングで適当に作っているわけでは決してなく。
絹糸をどこに設置するのか、風船や鈴を床からどれくらいの高さにするのか、
ガラス瓶の水の量をどれくらいにするのか、すべてミリ単位で悩みながら決めているそうです。
なので、間違いなくすべての作品に、ちゃんと意味があるのでしょう。
全体的には、とてもシンプルな展示空間なので、
引き算の美学のように感じられましたが、むしろ逆。
10からいろいろ引いた結果、1になったのではなく、
0.1や0.01といった繊細な作品を積み重ねた結果、1になった感じでした。
・・・・・・・う~ん。我ながら、上手く伝えられた気がしません (汗)
この展覧会ばかりは、もう実際に観に行って、内藤礼ワールドを感じて頂くしかないです。
Don't Think. Feel!
ちなみに、個人的にオススメなのは、
内藤礼さんがここ近年手掛けている 《color beginning》 シリーズの展示コーナー。
(↑こちらは、資生堂ギャラリーでの “椿会展 2015- 初心 -” の展示風景です)
《color beginning》 は、パッと見は、ただの真っ白なキャンバスなのですが、
じ~っと見つめ続けていると、淡いピンクや淡いオレンジ、淡い黄色が見えてくる絵画作品です。
これまで何度も美術館やギャラリーで発表されていますが、今回は初となる自然光での展示。
いつもよりも色を感じられました。
こんなにもカラフルな作品だったのですね。
最後に、この展覧会を訪れる際の注意ポイントを。
展覧会を観終わった直後には、他の展覧会を訪れないほうがベターです。
内藤礼さんの作品の薄味に身体がチューニングされてしまっているので、
その足で、普通のアーティストの作品を観ると、「味、濃っ!」 となってしまいますよ (体験談)。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!