Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Film:43 『フィセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』

芸術の本場ヨーロッパを含む世界60か国で高い評価を収め、
なおかつ、興行的にも大成功を収めている映画館上映企画シリーズ 『アート・オン・スクリーン』
その第三弾となる 『フィセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点』 が、10月6日より公開されます。
それに先がけて、一足先に鑑賞させて頂きました。




■フィセント・ファン・ゴッホ:新たなる視点

  監督:デビッド・ビッカースタッフ
  2015年/イギリス/90分

美術史を変えた芸術家たちの人生にスポットをあて、
ヨーロッパで話題を集めたドキュメンタリー 「アート・オン・スクリーン」 シリーズの1作で、
フィンセント・ファン・ゴッホを題材に描いた。
人々のイマジネーションを刺激し続けてきた、
ゴッホの波乱に満ちた生涯を深く掘り下げ、彼の人生を追体験。
さらに、ゴッホ美術館のキュレーターの独占インタビューも交えながら、
これまでにない新たな視点でゴッホの世界を紹介していく。
(「映画.com」より)


「日本公開第1弾の 『ミケランジェロ:愛と死』 は、『日曜美術館』 のようなテイスト。
 第2弾となる 『私は、クロード・モネ』 は、『ザ・ノンフィクション』 のようなテイスト。
 で、今回のは、ゴッホの時系列に沿って、その生涯が紹介され、
 途中で、学芸員さんによる解説やゴッホ役の役者さんの演技が挟まれ、
 まさに、『美の巨人たち』 のようなテイストでした。
 途中、小林薫のナレーションが聞こえた気がしましたが、きっと気のせいでしょう。

 前2作と比べると、芸術家の人生を紹介するプログラムとしては、かなりオーソドックスな作り。
 調べてみると、全2作が2017年製作だったのに対し、
 今回のゴッホの映画は、2015年に制作されたものでした。
 『アート・オン・スクリーン』 の初期の作品だったのですね。
 それだけに、全体を通して、丁寧に丹念に作られている印象を受けました。
 (↑前2作が適当に作られているという意味ではありません。前2作は野心的に作られている印象)
 この1本を観るだけで、ゴッホの生涯や画家としてのゴッホの魅力、革新性が理解できます。
 これからもゴッホの展覧会はコンスタントに、
 日本で開催されるでしょうから、観ておいて絶対に損はない映画です。
 
 ただ、一つ難を言うなら、2015年に制作された映画なので、
 副題にある ‟新たなる視点” が、そこまで 「新たな」 視点ではなかったこと。
 ゴッホについての新発見は、毎年のように発表されているので、
 ゴッホの情報を追いかけている人からすると、ちょっぴり古い情報に感じるかもしれません。
 とはいえ、冷静に考えれば、毎年のように新発見が発表されているということは、
 それだけ研究する人が多いということ&ゴッホに興味を持っている人が多いということ。
 改めて、ゴッホ人気のスゴさを感じます。

 それと、もう一つだけ難を言うならば (←まだあるのかよ!)。
 ゴッホ美術館が全面協力した映画であるため、
 基本的には、ゴッホ美術館が所蔵する絵画、ゴッホ美術館の関係者しか登場しませんでした。
 全編を通して、まるでゴッホ美術館の告知映像のよう。
 (観終わった後は、まんまとゴッホ美術館に行きたくなりましたw)
 ゴッホ美術館の学芸員が分担して、ゴッホの生涯を解説するのですが。
 映画の中盤で、女性の学芸員さんが、ゴッホの最後の恋人について言及、
 そして、「その後は、売春宿で性欲を満たしていた」 と真顔で解説していました。
 いやいや、それは男性の学芸員が担当しろよ!
 亡くなった後に、性欲事情を暴露される。しかも、女性に。
 想像するだに、地獄です。
 今頃、ゴッホは草葉の陰で泣いていることでしょう。

 あと、難ではないのですが。
 何度かインタビューで登場するラックラン・グーディーとなる画家が、
 森田順平と峰竜太と大泉洋を足して、3で割ったような顔をしていました。
 そのことばかりに気が取られて、肝心の話の内容があまり入ってきませんでした (笑)


 今回の映画を通じて、個人的に強く感じたのは、テオの存在の大きさ。
 ゴッホからテオへの手紙をベースに映画は進んでいきます。
 もし、この手紙がなかったら、
 ゴッホの芸術に対する思いや考え方は、現代に伝わっていなかったわけです。
 手紙を書きたくなる相手がいたというのは、
 ゴッホの芸術家人生にとっては幸せなことだったのでしょう。
 もし、遠い未来に、僕のことを研究しようとする奇特な人が現れたとします。
 しかし、僕と弟とのメールのやり取りなんて頻度も少ないし、
 残念ながら、どうでもいいやり取りしかないので、そもそも何の役にも立ちません。
 あぁ、僕にも芸術論を交わせる弟がいたなら・・・。
 
 生前は絵がほとんど売れることなく、この世を去ったゴッホ。
 彼は今、悲運の画家として、カリスマ的な人気を誇るわけですが。
 生涯に渡って兄を支え、その死後に、ゴッホの地位向上に奮闘するも、
 兄の死から半年後、志半ばにして、33歳という若さで後を追うように亡くなったテオ。
 悲劇度では、むしろ、彼のほうが上回っている気がしました。
 今回の映画の真の主役は、テオといっても過言ではありません。


 と、いろいろ好き勝手なことを言っていますが、今日はこのあたりで。
 続きは、上映前トークショーで語り尽くします。
 『ミケランジェロ:愛と死』 に引き続き、2度目の抜擢。
 しかも、10月6日公開初日のオープニング回 (10時10分~) の上映前トークショーです。
 詳細は、近日、東劇のHPで公開される予定です。
 もし、いつまで立っても詳細が公開されなかったら、
 それはたぶん、この記事でいろいろ好き勝手を言ってしまったせい。
 Image may be NSFW.
Clik here to view.
スター
Image may be NSFW.
Clik here to view.
スター
Image may be NSFW.
Clik here to view.
スター
Image may be NSFW.
Clik here to view.
半分星
Image may be NSFW.
Clik here to view.
ほし
(星3.5つ)」


~映画に登場する名作~

《ひまわり》

Image may be NSFW.
Clik here to view.

Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles