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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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1968年 激動の時代の芸術

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今からちょうど50年前。
三億円事件が発生し、全共闘運動が各地で勃発し、
『週刊少年ジャンプ』 や 『ビックコミック』 が創刊された1968年。
日本が最も熱かった時代です。

もちろん、この時代は現代美術界も激アツ!
赤瀬川原平、高松次郎、横尾忠則、宇野亜喜良、土方巽、森山大道、関根伸…etc
日本美術界にその名を刻み込むアーティストたちが大暴れしていました。
そんな 「1968年」 にスポットを当てたのが、
現在、千葉市美術館で開催中の “1968年 激動の時代の芸術” という展覧会。




1968年前後の日本の現代美術界の動向を、
絵画や写真、立体など、約400点の作品や資料を交えて紹介する展覧会です。





1968年のアートシーンを語るうえで、
まず何と言っても欠かせないのが、インターメディア。
現代美術、演劇、舞踏、映画、建築、デザイン、漫画など、
多ジャンルとの垣根を超えた刺激的なアート作品が次々と生み出されました。




そして、もう一つが、サイケデリック。
1968年当時は、まだ合法だったため、
LSDによる幻覚をビジュアル化したようなアートが若者に人気を博していたそうです。




そんなサイケデリック・ムーヴメントの中で特に重要なのが、1968年にオープンし、
川端康成や三島由紀夫、丹下健三ら各界の有名人が通っていたという伝説のサイケデリックディスコ。
その名も、MUGENです。
今回の展覧会では、MUGENのプロデューサー浜野安宏の協力のもと、
当時の若者が熱狂したサイケデリック・オイルショーが完全再現されていました。




美術館がパリピの巣窟に?!

ディスコはもとより、クラブにも一度も足を踏み入れたことがない僕。
この先に進んでいいのか。
入り口付近で二の足を踏んでしまいました。
しかし、「レポートをせねば!」 の一心で、MUGEN (の再現) の内部へ!
すると、そこにあったのは・・・




OHP。
今は懐かしき、視聴覚室にあった備品です。




実は、当時、MUGENでは、
このOHPを用いて、波線などの幾何学模様を壁に投影していたのだそうです。
もちろん、そのままでは静止画なので、シートを常に動かし続ける係の人がいたのだとか。




チームラボのデジタルアートが当たり前になった現代の僕から見ると、

「なんてアナログな!」

と、衝撃的でしかありませんでしたが。
これが当時最先端のプロジェクションマッピングだったわけです。
この映像体験で、川端康成や三島由紀夫、丹下健三らがトリップ感を味わっていたわけです。




それを想像すると、一周回って、いや二周、三周回って、新鮮な感じがしました。
(ちなみに、さすがにOHP上のシートをずっと動かし続ける係を用意するわけにいかないので、
 MUGENのサイケデリック・オイルショーをそれっぽく再現した映像が、複数のプロジェクターで壁に投影されています)

星

そんなMUGENと同じくらいに印象的だったのが、万博に関する展示コーナー。
1968年に活躍していた多くのアーティストは、
その2年後に国家を挙げて開催された万博でも大いに活躍したそうです。
その中でひときわ目立っていたのが、こちらの不気味な人形。




四谷シモンによる 《ルネ・マグリットの男》 です。
横尾忠則がデザインした ”せんい館” に20体ほどあったそうで、
シルクハットの穴から、繊維をイメージするレーザー光線が出たのだとか。
まるで悪夢のような光景を見た当時の少年は、きっとトラウマになっているに違いありません。


そんな国民的イベントの万博に対して、
真っ向から批判を行っていたアーティストが少なからずいたことに、驚かされました。




中には、全裸で反対活動をして、逮捕されたアーティストも。




万博にNOを突き付ける。
その熱さは伝わってきましたが、
なぜ、全裸になったのかは、結局よくわからずじまい (笑)。
全裸になりたいから全裸になった。
そうとしか思えませんでした。


ちなみに、展覧会のラストでは、関根信夫や菅木志雄など、
今世界的に注目されている “もの派” の作品も紹介されています。




同時代の熱い作品に比べて、圧倒的にシンプルでした。
同じ1968年前後の作品とは思えませんでした。
“もの派” の作品は単体で見ても、相当に薄味ですが、
こうして、同時代の熱狂的な作品と併せて展示されると、薄味具合がより引き立ちます。
薄味というか、もはや無味。
良くも悪くも、霞を食っているような鑑賞体験でした。




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