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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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眠らない手:エルメスのアーティスト・レジデンシー展Vol. 1

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銀座メゾンエルメス フォーラムで開催されているのは、
"眠らない手:エルメスのアーティスト・レジデンシー展"
2010年からエルメス財団が開始したアーティスト・イン・レジデンスのプログラム、
アーティスト・レジデンシーに参加したアーティストの作品を紹介する展覧会です。

一般的なアーティスト・イン・レジデンスは、
ある土地にアーティストを招聘し、一定期間滞在させて制作活動に取り組んでもらう制度ですが。
アーティスト・レジデンシーは、少し特殊なアーティスト・イン・レジデンス。
招聘された若手アーティストは、エルメスのさまざまな工房 (クリスタル、革、シルク等) に滞在。
その工房の卓越した技術を持つ職人とともに、制作活動に取り組みます。
「職人技×アーティストの想像力=これまでにないアート作品」 が生まれるというわけです。

例えば、こちらは、セリア・ゴンドルの 《アペイロン(無限なるもの)の観測可能性》 という作品。




ファブリックを扱う工房に滞在した彼女は、
工房の職人の協力のもと、シルクに独自の星図をプリントした作品を制作しました。




その長さは、なんと40m!
1階の売り場にあったエルメスのスカーフが、
ウン万円で販売されていましたので、これほど大きなシルクだと、いくらくらいになるのでしょう。
まさに、天文学的な数字になるはずです。


また例えば、こちらは、彫刻家のルシア・ブルによる 《(モヴィーダス) 》 という作品。





クリスタルの工房に滞在した彼女は、
そこで棒状にしたクリスタルを何本も作成したそうです。
続いて、その棒状のクリスタリルを、のこぎりで細かく切断しキューブ状に。
一つ一つ丁寧に砂吹きで磨いていきます。
こうして完成した数千個にも及ぶクリスタルのキューブと、
陶器で作られたキューブを混ぜたものが、床に散らばっていました。
一見、シンプルなのですが、実は、途方もない作業を経て制作された作品なのです。


途方もないといえば、ブラジル生まれのクラリッサ・ボウマンの作品も。




作品の中央にピンと張られた何の変哲もないワイヤー。
実は、この正体は、スプーン。
作品タイトルも、そのものズバリで 《スプーン》 です。
彼女は滞在した銀細工の工房で、熟練の職人とともに、
1本の銀のスプーンを限界まで引き伸ばし続け、ついには1本のワイヤーを完成させたとのこと。
その途中経過の様子も、作品として紹介されています。




スプーンを曲げる超能力よりも、はるかに衝撃的でした。
ちなみに、作品に設置されたスピーカーから幻想的な音が流れていたのですが、
これはボウマンがこのワイヤーを指に挟み、動かすことで発生した音なのだとか。
カレーを食べてるときに鳴る音とは違い、なんとも繊細な音色でした。


今回紹介されていた中で、個人的にお気に入りなのは、
元米軍という異色の経歴を持つガラス作家DH・マクナブの作品でした。
彼の独特のセンスとエルメスの職人技、
さらに、レンゾ・ピアノが設計したメゾンエルメスの空間が絶妙にマッチ。




スペシャルなコラボを果たしていました。
僕が訪れたのは、残念ながら曇りの日。
無料の展覧会なので、次は、もっと光が射しこむ時を狙って訪れたいと思います。
星


・・・・・と、展覧会も面白かったのですが。
それ以上に面白かったのが、ウィンドウのディスプレイ。
あの 『ピタゴラスイッチ』 の企画・制作を手掛けるユーフラテスが担当しています。
回転台の上には、エルメスの傘。
その傍らには、変な隙間が空いた白いボードが設置されています。




いやいや、あんな変な隙間を通るわけが・・・・・




ん?




えっ?あれっ?




通ったーーー!!

ついつい何周も見てしまいました。
また、正面だけでなく、サイドのウィンドウにも、ユーフラテスらしい仕掛けが。
思わずニヤリとすること請け合いです。










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