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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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霧の抵抗 中谷芙二子

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先日、水戸芸術館を訪れたときのこと。
夏場は、子どもたちがプールとして利用する (?) 噴水広場に、人だかりができていました。
プールのシーズンは終わったというのに。




一体、何があるというのか。
近づいてみたものの、それらしき何かは見当たりません。

と、次の瞬間です!

いきなり霧が発生し始めました。




あっと言う間に霧に覆われてしまったので、慌てて退避。




離れてみて気が付きましたが、かなりの量の霧が発生していました。
シュルレアリスム絵画のような光景です。




実は、こちらは、『霧のアーティスト』 として、
国際的に活躍する現代美術家、中谷芙二子さんの最新作。
その名も、《抵抗》 です。
9時30分から19時の間、毎時00分と30分のキリのいい時間になると、霧が発生。
霧の彫刻が形づくられます。
しかし、10分後には、霧の発生がストップ。
作品は雲散霧消、跡形もなく消えてしまいます。
温度や湿度、風向きなどの気候条件で、霧の彫刻の形は変わるそう。
まさに、一期一会のアート作品です。
(注:広場でのイベントの都合上、日時によっては作品が鑑賞できない場合も。詳しくは水戸芸術館公式HPにて)


さてさて、実はこちらの新作は、
現在開催中の最新個展 “霧の抵抗 中谷芙二子” に合わせて制作されたものです。




展覧会の会場に入らない段階で、すっかり満喫してしまいましたが。
メインとなるのは、やはり展覧会の会場。
こちらでは、まず世界各地で近年発表された ‟霧の彫刻” の様子が上映されていました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


また、中谷さんが霧の彫刻家としてデビューを果たした、
「大阪万博ペプシ館」 に関する貴重な資料の数々も紹介されていました。




緻密な気象データを採ったり、霧を最適に発生させるための器具を作ったり。
霧の彫刻誕生の裏側に、知られざる苦闘のドラマがあっただなんて。
『プロジェクトX』 を1話分見たかのような充足感がありました。


さらに、今回の展覧会では、
中谷さんの活動のもう一つの柱であるビデオアートの活動にも焦点が当てられています。





"霧の彫刻" だけではない、現代美術家・中谷芙二子さんの全貌が明らかになる展覧会でした。
中谷さんと言えば、今年、高松宮殿下記念世界文化賞の彫刻部門を受賞したばかり。
現代美術ファンであれば、抑えておきたい展覧会です。
星


ちなみに、館内の展覧会場でも新作が発表されています。
室内なのに、なんと霧が発生します。




時間になると、照明が落ち、霧が発生。
すると、霧がスクリーン替わりになり、
そこに飛翔するカラスの映像が投影されるのです。




室内に充満する霧は、まるで雲のよう。
そして、霧ごしに見えるプロジェクターの光は、まるでご来光のよう。




上空何千メートルの高さに浮かんでいるのか。
はたまた、高山の上から雲海を見下ろしているのか。
自分が今いる場所がわからなくなってしまう。
そんな不思議な体験ができる作品でした。

なお、この作品のピーク時は、室内のほとんどが霧で満たされます。
360度、視界が霧で覆われてしまいます。
ジュリーの気分が味わえました。






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