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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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明治期における官立高等教育施設の群像

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今年2018年は、明治元年 (1868) から数えて150年の節目の年。
そんなメモリアルイヤーだけに、
国立科学博物館で絶賛開催中の “明治150年記念 日本を変えた千の技術博” をはじめ、
数多くの博物館や美術館で、『明治150年』 に絡めた展覧会が開催されています。
今年、めでたく開館5周年を迎えた国立近現代建築資料館で、




現在開催中の展覧会 “明治期における官立高等教育施設の群像” もその一つ。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


こちらは、明治期の日本における、いわゆる「旧制」の、
大学とそれ以外の専門学校や高等学校などの高等教育施設に焦点を当てた展覧会で、
貴重な図面や古写真、模型などの建築資料が数多く紹介されています。




その数、実に約200点!
北は北海道 (=北海道大学。旧・札幌農学校) から、
南は鹿児島 (=鹿児島大学。旧・鹿児島農林高等学校) まで。
日本全国、全44の教育施設から資料が集められていました。
無料とは思えないほど、気合の入った展覧会です。
(ただし、土日祝は、都立旧岩崎邸庭園と同時観覧のため、そちらの入園料 [一般400円] が必要となります)




地味か地味でないかで言えば、限りなく地味な展覧会なのですが (笑)
明治期の日本が、欧米の諸外国に追い付くべく、
日本各地に教育施設を設立せんとする、熱意のようなものがジワジワ感じられました。
と同時に、我が母校もその一環として設立されたことを知って、
サボりまくっていた学生時代を思い出し、ジワジワ恥ずかしくもなりました。
そういう意味では、すべての大学生、特に国立の大学生に目にして欲しい展覧会。
きっと明日から、ちょっとだけ真面目に授業を受けたくなるはずです。
星


ちなみに、全体的には、解説が多めなので、
よほど興味が無い限りは、解説文が右から左へと流れていくこととなるでしょう。
そういう場合は、無理に文字を追わず、図面の線の美しさを鑑賞することをオススメします。





コンピューターなんて無い時代。
もちろん、線は手書きで引かれています。
が、そうとは思えないほど、正確無比。
凛とした美しさすら感じました。
また、この時代は、大判の紙がなかったそう。
美濃紙をミリ単位で張り合わせることで、大きな紙にしていたそうです。
図面をじーっと見ると、張り合わせた後がありました。
たかが図面。されど図面。
図面自体が、一つの工芸品のようでした。


今回出展されていた資料の中で、個人的に印象に残ったのは、
明治45年に竣工したという東京大学本郷キャンパスの正門です。




赤門のほうの印象が強すぎて、正門なのに印象が薄い感は否めませんが。
改めて、よくよく見てみると、
冠木門をモチーフとしていたり、青海波や唐草紋様があったり、
和と洋が絶妙に (?) ブレンドされた不思議な門です。
設計したのは、築地本願寺の設計でも知られる伊東忠太とのこと。
なるほど。なんか納得です。
ちなみに、最上部は、瑞雲の間から登る旭日を表現しているのだとか。
頭が良すぎる人が、頭が良すぎる人たちのために設計すると、こういう門が生まれるのですね。


それから、もう一つ印象的だったのが、札幌農学校の演武場の時計塔の図面。




“どこかで見たことがあるような・・・” と思ったら、
札幌のアイコンともいうべき、あの時計台の図面でした。
クラーク博士のあとを継いで、2代目教頭となったホイーラー教授が基本の構想図を作成したとのこと。
それゆえに、図面は英語で書かれています。
設計に携わった当時の日本人は、
建築の知識だけでなく、英語の知識も持ち合わせていたのですね!
それを知った上で、札幌市時計台を見たなら、がっかりすることは無さそうです。




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