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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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Film:46 『天才画家ダリ 愛と激情の青春』

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■天才画家ダリ 愛と激情の青春

  監督:ポール・モリソン
  出演:ロバート・パティンソン、ハビエル・ベルトラン他
  2008年/イギリス・スペイン/112分

1922年、マドリード。
サン・フェルナンド王立美術学校に入学した青年サルバドールはそこで、
詩人のフェデリコ・ガルシア・ロルカや映画監督志望のルイス・ブニュエルと出会い、友情を育んでいく。
やがて、フェデリコとサルバドールは互いに友情以上の感情を抱くようになり……。
(「映画.com」より)


「そのタイトルから、天才画家ダリを主役にした映画かとばかり思っていたのですが・・・。
 蓋を開けてみれば、主人公は、ダリではなく、
 詩人のフェデリコ・ガルシア・ロルカのほうでした。
 スペインでは有名な詩人だそうですが、日本ではほとんど知名度なし。
 それゆえ、ダリの名前を前面に押し出した邦題にしたのでしょう。
 ちなみに、原題は・・・

 


 『Little Ashes』 (=小さな灰)。
 これは、劇中にも登場する、ロルカが名付けられたダリの絵の題名です。




 まぁ、確かに、『小さな灰』 よりは、
 『天才画家ダリ 愛と激情の青春』 のほうが観たくなりますけれども。
 若干騙された気分は否めません。
 ダリ好きをひっかけるためのダリダリ詐欺です。

 騙されたといえば、映画の内容も。
 ダリが登場することから、芸術映画かとばかり思っていたのですが・・・。
 蓋を開けてみれば、ロルカとダリの恋模様を描いた恋愛映画でした。
 2人の恋は、唐突に始まります。
 さっきまでは青春映画だったのに、次のシーンでは恋愛モードに突入。
 しかも、両想い。
 展開が早すぎて、ついていけません。
 
 おまけに、恋愛シーンが、もはやコントのよう。
 例えば、女性と歩くロルカの姿を見かけ、
 居ても立っても居られなくなったダリが尾行するシーン。
 動きが大げさすぎて、ほとんどMr.ビーンでした。
 それから、夜の海で上半身裸の2人が、
 泳ぎながら、手を取り合って、最後にはキスするシーン。
 ほとんどBLコントでした。
 

 さてさて、何よりも気になったのは、
 そもそも、ダリが同性愛者だったのかということ。
 ロルカ自身は、同性愛者であることは知られているようですが、
 ダリに関しては、同性愛のエピソードは聞いたことがありません。
 映画のラストには、こんな一文が登場します。

 「ロルカの死後に沈黙を通したダリが、
  死の直前になって語ったロルカとの思い出話から着想を得て作られた作品である」


 調べてみると、確かにダリは晩年、ロルカとの想い出を語っているようです。
 とはいえ、映画のニュアンスとは、かなり異なります。

 「彼は狂ったように私に恋していた。私は尻を二度狙われた」

 この発言だけ聞くと、ロルカの一方通行、
 それも、かなり激しい一方通行のような気が・・・。
 “狙われた” って、完全に被害者目線です。
 
 もしかしたら、ダリが同性愛者だった可能性もなくはないのでしょうが。
 フィクションだけで、これほどまでに具体的な同性愛エピソードを作り上げてしまうだなんて。
 フェイクニュースならぬ、フェイクムービー。
 下手なホラー映画よりも、よっぽどホラーでした。


 ちなみに。
 2人が恋に落ちるシーンも唐突でしたが、破局も唐突。 
 さらに、いきなり8年が経過し、久しぶりに登場したダリが、
 それまでのナイーブな青年から、僕らがよく知るヒゲを生やした奇天烈な姿に様変わり。
 例によって、その間の説明は、ほとんどありませんでした。
 映画内の時間の進み方が、グニャグニャ。
 さすが、ダリの映画だけはあります。
 スター 半分星 ほし ほし ほし (星1.5つ)」

~映画に登場する名作~

《アンダルシアの犬》






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