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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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北斎のなりわい大図鑑

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現在、すみだ北斎美術館では、
“北斎のなりわい大図鑑” という展覧会が開催中。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


江戸時代の生業、つまり、江戸時代の職業に注目し、
北斎とその弟子たちが描いた作品の数々を紹介する展覧会です。





例えば、こちらの 《冨嶽三十六景 尾州不二見原》 という一枚。




ついつい桶の向こうに小さく描かれた富士山に注目してしまいがちですが。
桶職人に注目してみると、槍鉋をかける工程が実にリアルに描かれているのがわかります。
それから、桶の下にもご注目!
木槌がかませてあります。
これは、桶が転がらないのを防ぐためなのだとか。
確かに、この木槌がなかったら・・・・・




ラートみたいなことになりかねませんよね。


また例えば、《冨嶽三十六景 東海道江尻田子の浦略図》 という一枚。




やはり富士山や波の表現に、目が向かいがちですが。
画面手前には、波と格闘しながら、漁に勤しむ人々の姿がリアルに描かれています。
さらに、画面の奥に注目してみると・・・




塩田で働く人々、江戸時代の 「塩軍団」 が、
まるで粒塩のごとく描かれているのが見て取れます。
職業に注目することで、北斎の浮世絵がこれほど新鮮に感じられるとは!
切り口の妙が光る展覧会。
学芸員という “なりわい” の重要性を改めて感じる展覧会でした。
星


さてさて、今回の展覧会の目玉作品となるのは、
すみだ北斎美術館コレクションに新たに加わった肉筆画 《蛤売り図》




絵には、「蜆子 (しじみ) かと思いの外 (ほか) の蛤は げにぐりはまな思ひつき影」 という賛があります。
『ぐりはま』 とは、江戸時代の言葉。
蛤の貝殻は、もともと一緒だった殻同士でないとピッタリと合いません。
そこから、蛤という言葉を業界用語風に逆にした 『ぐりはま』 が、
ピッタリ合わない、食い違うという意味で使われるようになったのだとか。
さてさて、それを踏まえて、賛をざっくり訳すと、
「蜆かと思ったら蛤だったなんて!まさに、『ぐりはま』 だぜと思ったよ」となります。




ところが、何ともややこしいことに、
この 《蛤売り図》 は、ここ最近まで、シジミ売りを描いた絵だと思われていたとのこと。
「シジミ売りかと思ったら、蛤売りだったのかい!」
そんな賛があるシジミ売りの絵と、長年勘違いされていたのだそうです。
あまりにややこしすぎて、
正直なところ、蛤でもシジミでもどっちでもよくなってきました (笑)


展覧会では、他にも珍しい職業が多数紹介されています。
特に印象的だったのは、留女 (とめおんな)




旅人を強引に引き留め、宿に連れ込もうとする職業なのだそう。
旅人のうちの一人は、荷物をガッツリ掴まれています。
歌舞伎町のキャッチよりも、たちが悪いです。

それと、もう一つ印象的だったのが、唐辛子売り。




張り子の巨大な唐辛子を肩からかけ、売り歩く職業とのこと。
この張り子の中に、粉唐辛子の小袋が入っているのだそうです。
ちなみに、下積み時代の北斎は、生活費を稼ぐために、唐辛子売りをしていたのだとか。
世界のHOKUSAIにも、スパイシーな過去があったのですね。




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