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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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シュルレアリスムとダリ〜幻想と驚異の超現実〜

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日本最大級、いや、アジア最大級のダリ美術館である諸橋近代美術館が、
福島県の裏磐梯高原の地にオープンして、今年でちょうど20年目となりました。




それを記念し、計3回にわたって、開館20周年企画展が予定されているとのこと。
そのスタートを飾るのが、現在開催中の展覧会、
“シュルレアリスムとダリ〜幻想と驚異の超現実〜” です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


諸橋近代美術館では、これまでにも何度か、
「シュルレアリスムとダリ」 というテーマで展覧会を開催しているそうなのですが。
今回は、そのスペシャル版。
展示フロアを全部使って、「シュルレアリスムとダリ」 の関係性を掘り下げています。

展覧会は、全4章で構成。
まず第1章では、ピカビアの作品をはじめ、


フランシス・ピカビア 《アンピトリテ》 1935年頃 広島県立美術館館蔵


シュルレアリスム前夜ともいうべき、ダダイスムの作家の作品が紹介されています。




第一次世界大戦が勃発し、戦禍を目の当たりにした若き芸術家たち。
大きなショックを受けた彼らは、
それまで当たり前に存在していた宗教や社会の常識、つまり 「現実」 に懐疑の念を抱くように。
やがて、「現実」 を破壊するような作品を制作していきました。
それが、ダダイスム。

しかし、破壊だけでは何も生まれません。
それどころか最終的には何もなくなってしまいます。
そこで次に誕生した芸術が、シュルレアリスム。
もっと深いところにあり、誰にも破壊できない 「現実」= 「超現実」。
そう、人間の無意識の世界を描こうと試みたのです。

第2章では、そんなシュルレアリスムを代表する画家たちを紹介。
エルンストやミロ、デルヴォーといった、
シュルレアリスム界のスーパースターの作品が勢ぞろいしています。
もちろんシュルレアリスムといえば、マグリットは外せません。
今展では、諸橋近代美術館史上最大となる4点のマグリットの油彩画が出展されています。




ダリとマグリット。
開館20周年企画展ならではの豪華な競演をお楽しみくださいませ。


さて、続く第3章で、いよいよダリにスポットライトが当たります。
グループの発足以来、無意識の世界を描くために、
無意識の状態を意図的に作り出し、制作に励んでいたシュルレアリスムのメンバーたち。
そこに、一人の男が途中加入します。
それが、ダリ。
彼は自ら編み出した 「偏執狂的=批判的方法」 というスタイルで、一躍グループの中でスターに!


マン・レイ 《シュルレアリストのグループ》 1930年/モダン・プリント 岡崎市美術博物館蔵


こちらは、その頃に撮影された写真なのでしょうか。
途中加入メンバーとは思えないほど、どセンターで写っています。
もはや、ダリとその仲間たち状態 (笑)

ところで、「偏執狂的=批判的方法」 とは、一体どんなものなのでしょうか?
簡単にいえば、妄想や幻想といった無意識化にあるイメージを、
あくまでも意図的に、あえて意識的にビジョン化する方法のことです。

“・・・・・それって、無意識化で制作してないから、シュルレアリスムじゃなくない?”

そう疑問に思った方は、鋭いです。
まさに、それ。
最初は、ダリの画期的なスタイルに一目を置いていた、
シュルレアリスムのオリジナルメンバーたちも、徐々に疑問を持つように。
くわえて、政治的思想の不一致、拝金主義的になっていくダリの態度に、メンバーの不満が爆発!
1934年に、ダリの処遇を問う公開裁判、いわゆる “吊し上げ” がグループ内で行われたのだそうです。
ちなみに、その際に、ダリは体調不良を装い、
あえて何十枚もセーターを着こんでいったのだとか。
そして、リーダーであるアンドレ・ブルトンに叱責されるたび、
1枚ずつ脱ぐというパフォーマンス (?) をして、より反感を買ったとのこと。
さすがは、ダリ (笑)
そのこともあって、1938年にはついに除名処分を受けることとなったのです。


なんとシュルレアリスムをクビ (?) になっていたダリ。
しかし、今ではむしろシュルレアリスムの画家の代名詞として定着しています。
一体、なぜ?
その答えは、展覧会のラストを飾る第4章で明らかになります。





実は、ダリは他のシュルレアリスムの画家よりも先に、ニューヨークに出入りしていたのだそう。
そこで、積極的にメディアに露出し、
自分がシュルレアリスムの代表格であると、大々的にアピールし続けたのだそうです。
なお、除名から4年後に出版された自伝にも、ちゃっかりこんな一文が。




シュルレアリスムのオリジナルメンバーからすれば、たまったものではないですが。
皮肉にもダリという広告塔がいたおかげで、
アメリカでのシュルレアリスム画家たちの社会的地位は高まったのだとか。
ムカつくけど憎めない。
それが、ダリ。
ダリのことがちょっと嫌いになって、ちょっと好きになる展覧会でした。
星星


そうそう、今展に出展されていたダリ作品の中で、
特に印象に残っているのは、画面中央のコラージュ作品です。
(注:大人の事情により、接写していません。あしからず)




こちらは、もともとはオーダスという香水の広告として制作されたもの。
香水瓶の写真や 「Audace」 の文字が画面の右下に配置されています。
もっとも目立つ中央部に、貼り付けられているのは、なんとシャネルの香水瓶の写真。
それ、ライバル社のヤツ!
ちなみに、タイトルは、《大胆な試み》 とのこと。
・・・・・・・大胆にもほどがあります。



最後に、告知を。

【イベント】アジア最大級のダリ美術館 20周年記念トークショー「ダリナイト」20世紀を代表する芸術家、ダリは世界屈指の中2病!?やはり天才!?

が、いよいよ6月4日に迫りました。
大野学芸員のダリ愛を引き出すべく、こんなコーナーを用意しています (笑)




どうぞお楽しみに♪
皆さまのご来場を心よりお待ちしております。




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