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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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トム・サックス ティーセレモニー

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プラダのロゴで便器を手作りしたり、
エルメスの包装紙でマクドナルドのバリューセットを手作りしたり。
手作りで既製品を作るアメリカの人気現代アーティスト、トム・サックス。
本人自身も開催を切望していたという日本での初個展が、
現在、東京オペラシティアートギャラリーにて開催されています。




その名も、“トム・サックス ティーセレモニー”
ティーセレモニー、つまり茶道をテーマにした展覧会です。
冒頭のシアターで30分に1回のペースで、映像作品が上映されているそうなのですが、
次の上映まで約20分ほど時間があったので、まずは展覧会場を観てしまうことにしました。




展示室に入っていきなり現れたのは、存在感のある謎のオブジェ。
どことなくイサム・ノグチっぽいなァ・・・と思ったら、ずばり正解!
イサム・ノグチの石彫作品をオマージュして制作した作品なのだそうです。
ただし、こちらは段ボール製。
見た目とは裏腹に、ずっと軽い作品なのです。
ちなみに、「古い伝統の真の発展を目指す」 というイサム・ノグチの姿勢に着想を得て、
トム・サックスは、ティーセレモニーを構成する一連の作品を制作するようになったのだとか。
まさに展覧会の出発点を飾るに相応しい作品です。


続いては、左にある小さな一室へ。
こちらは、ヒストリカル・ルーム。
トムがこれまでに制作した作品の一部が紹介されています。
兜的な何やらや、




レッドロブスター的な何やら、




棚にビッシリと収められた茶碗 (しかも、NASAの文字入り!) などなど、




実にシュールな作品の数々が展示されていました。
特にこれといった共通点はないのですが、
不思議と、一目でトム・サックスの作品だとわかります。




しいていえば、どの作品にもアメリカ臭が漂っています。
そして、どの作品もダサい。
と同時に、一周回ったカッコよさも感じられます。
DA PUMPの 『U.S.A.』 に匹敵するくらいのダサかっこよさです。

それを踏まえた上で (?)、メインとなる会場へ。
この門をくぐると、外露地・・・らしきエリアが待ち受けています。




そこには、石灯篭・・・らしきオブジェや、




腰掛待合・・・らしきスペース、




日本庭園には欠かせない池・・・らしきものが配置されていました。




その池の中を覗いてみると、




鯉・・・らしき・・・って、えっ?!マジで泳いでる!!
「そこは本物なんかい!」
トムの謎のこだわりです。


そんな外露地の先に広がっていたのは、もちろん内露地。




こちらには、つくばい・・・らしきものに、




松の木・・・らしきもの、




ティーセレモニーのメインスペースとなる茶室・・・らしきものが配置されています。





どれもこれも、いちいちツッコミどころ満載なのですが、
トム・サックスワールドに浸かりすぎて、免疫ができてしまったのでしょう。
茶室に辿り着く頃には、これはこれで、
そういうものなのだと、すっかり素直に受け入れている自分がいました。


この後も展覧会のラストまで、
トム・サックスによるクレイジーな茶道な世界は続くのですが。
むしろこっちの世界観に慣れ過ぎて、
普通の茶道の世界が思い出せなくなってしまったほどでした。
わびさび、って何かね?




僕としては、とても楽しかったですが。
トム・サックスが、〇千家の人に怒られないかだけが心配です (笑)


さてさて、時間になったので、冒頭のシアターへ。
こちらで上映されていたのは、茶会の準備からお点前まで、
トム・サックス自身が独自に解釈した茶会の様子を映した映像作品です。
この映像作品を観て初めて、会場に配置されていた謎のオブジェの意味が判明!
なるほど。そういう用途で使われるものだったのですね!
確かに、姿かたちや素材はヘンテコかもしれませんが、
実は、どのオブジェも茶道の形式には忠実に制作されていました。
間違いなく、僕を含むそこら辺の日本人よりも、
トム・サックスのほうが茶道の知識は深いようです。


そんな映像を観てから、改めて会場の作品を目にしてみると、
ふざけたYoutuber的アメリカ人がナンチャッテ茶道をしているわけでは、決してなく、
茶道の文化を取り入れて、それをトム・サックス流にアウトプットしているのが、よくわかりました。




正直なところ、最初にトム・サックスの茶筅を目にしたときは、
「茶筅にモーターを装備するだなんてwww」 と、鼻で嗤ってしまいましたが。
もし、現代に千利休が生きていたなら、
案外、この茶筅を見て、これは便利だと思うかもしれません。
『伝統を守る=新しく考えることを放棄する』 のではなく、
根っこの部分は大事にしつつ、アップグレードするところはアップグレードする。
それぞまさに、イサム・ノグチの言っていた 「古い伝統の真の発展を目指す」 ではないでしょうか。

そんな大切なことを、トム・サックスに教わった展覧会です。
結構なお手前でした。
星




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