現在、笠間日動美術館の企画展示室では、
今なおブームが続く写実絵画をテーマにした展覧会、“写実絵画のいまむかし” が開催中です。
展覧会は、大きく分けて2部構成。
まず第1会場で紹介されているのは、「いま (=現代)」 の写実絵画です。
上皇ご夫妻の肖像画を描いたことでも知られる写実絵画の巨匠・野田弘志さんや、
購入希望者が多いため抽選販売がマストという超人気写実画家・山本大貴さんといった、
写実絵画界のレジェンドやトップランナーの作品はもちろんのこと。
施設や工場など建築物の廃墟を得意とする若手の注目株・橋本大輔さんをはじめ、
写実絵画界でのこれからの活躍が期待されるネクストブレイク候補の作品も紹介されていました。
まさに写実絵画の 「いま」 が凝縮された展示会場です。
本物そっくりに描かれた写実絵画を観ると、
ついつい 「写真みたい!」 と口にしてしまいがちですが。
多くの写実画家たちが目指しているのは、写真のような絵を描くことでありません。
写真には写らない美しさ、存在感のようなものを描こう、
3次元の世界を、2次元のキャンバスの中に可能な限り再現しようとしているのです。
そんな作品たちの中で、一つ異彩を放っていたのが、
1984年生まれの山本隆博さんの 《無題(西洋の少女)》 という作品でした。
こちらは、古い肖像写真をモチーフにした作品なのだとか。
もともと2次元のものを、2次元で忠実に写し取った作品です。
さらに、ただ図像を写し取るだけでなく、
写真に付いた傷や折れ目、汚れなども、忠実に再現しているとのこと。
その執拗さ (?) には、ちょっと・・・いや、かなりゾワっとするものがありました。
この西洋の少女には、何の罪もありませんが。
お願いだから、夢には出てきて欲しくないものです。
ちなみに、もう1点印象的だったのが、
安西大さんの 《飾られた絵画(パンと果実)》 という一枚。
パッと見は、わりとオーソドックスな静物画。
しかし、よく見ると、その表面のガラスが割れています。
(一部は、マスキングテープ的なもので留められています)
「大丈夫なの??」 と心配になりますが、もちろんそれも含めての絵画作品。
いやぁ、まんまとダマされました。ちゃんちゃん・・・と思いきや。
その静物画を飾る額縁も、さらにその周囲の少し破れが目立つ壁紙も、実物ではなく絵。
二重ドッキリの構造を持つ複雑なだまし絵です。
もはや、この絵画の背後の本物の壁さえも、
「描かれたものなのでは?」 と疑いたくなるほどでした (←混乱)。
さてさて、続く第2会場では、「むかし」 といっても、
大昔ではなく、ちょっと昔、近代の写実絵画が紹介されています。
特にフィーチャーされていたのが、『近代洋画の父』 こと高橋由一。
自画像や風景画を含む5点の貴重な高橋由一作品が紹介されていました。
それらの中には、由一の代表作ともいうべき、《鮭図》 も。
東京芸術大学が所蔵する重要文化財の 《鮭図》 と、まったく同じように思えますが。
実は、かなり違います。
(注:本展にはこちらの 《鮭図》 は出展されていません)
笠間日動美術館の 《鮭図》 は、だいぶ身が食べられてしまっているのです。
新巻鮭ビフォーアフター。
また、由一と同時期に活躍した洋画界の華麗なる一族、
五姓田一家にも、大きくスポットが当てられていました。
特に必見なのは、五姓田一家の星・五姓田義松の傑作 《人形の着物》。
こちらは、フランスの官展 (サロン) にて、
なんと油彩画で日本人として初めて入選を果たした記念すべき作品なのだそう。
左下には、フランス語でのサインが、右下には日本語でのサインが添えられています。
子どもの顔はそんなに可愛くなかったですが、
床でスヤスヤ眠る猫の可愛らしさに、思わず頬が緩んでしまいました。
ちなみに、「むかし」 の写実絵画の中で、
個人的に一番印象に残ったのは、渡部審也による 《供侍図》 です。
主人がなかなか戻ってこないのでしょう。
待ちくたびすぎて、露骨なくらいにテンションが下がっています。
「あぁ~早く帰りて~よ~」 という心の声がダダ洩れしているかのよう。
奥に描かれた赤い服の彼は、もはや感情がゼロ。
表情が完全に死んでいました。
今も昔もブラックな職場はあるようです。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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今なおブームが続く写実絵画をテーマにした展覧会、“写実絵画のいまむかし” が開催中です。
展覧会は、大きく分けて2部構成。
まず第1会場で紹介されているのは、「いま (=現代)」 の写実絵画です。
上皇ご夫妻の肖像画を描いたことでも知られる写実絵画の巨匠・野田弘志さんや、
購入希望者が多いため抽選販売がマストという超人気写実画家・山本大貴さんといった、
写実絵画界のレジェンドやトップランナーの作品はもちろんのこと。
施設や工場など建築物の廃墟を得意とする若手の注目株・橋本大輔さんをはじめ、
写実絵画界でのこれからの活躍が期待されるネクストブレイク候補の作品も紹介されていました。
まさに写実絵画の 「いま」 が凝縮された展示会場です。
本物そっくりに描かれた写実絵画を観ると、
ついつい 「写真みたい!」 と口にしてしまいがちですが。
多くの写実画家たちが目指しているのは、写真のような絵を描くことでありません。
写真には写らない美しさ、存在感のようなものを描こう、
3次元の世界を、2次元のキャンバスの中に可能な限り再現しようとしているのです。
そんな作品たちの中で、一つ異彩を放っていたのが、
1984年生まれの山本隆博さんの 《無題(西洋の少女)》 という作品でした。
こちらは、古い肖像写真をモチーフにした作品なのだとか。
もともと2次元のものを、2次元で忠実に写し取った作品です。
さらに、ただ図像を写し取るだけでなく、
写真に付いた傷や折れ目、汚れなども、忠実に再現しているとのこと。
その執拗さ (?) には、ちょっと・・・いや、かなりゾワっとするものがありました。
この西洋の少女には、何の罪もありませんが。
お願いだから、夢には出てきて欲しくないものです。
ちなみに、もう1点印象的だったのが、
安西大さんの 《飾られた絵画(パンと果実)》 という一枚。
パッと見は、わりとオーソドックスな静物画。
しかし、よく見ると、その表面のガラスが割れています。
(一部は、マスキングテープ的なもので留められています)
「大丈夫なの??」 と心配になりますが、もちろんそれも含めての絵画作品。
いやぁ、まんまとダマされました。ちゃんちゃん・・・と思いきや。
その静物画を飾る額縁も、さらにその周囲の少し破れが目立つ壁紙も、実物ではなく絵。
二重ドッキリの構造を持つ複雑なだまし絵です。
もはや、この絵画の背後の本物の壁さえも、
「描かれたものなのでは?」 と疑いたくなるほどでした (←混乱)。
さてさて、続く第2会場では、「むかし」 といっても、
大昔ではなく、ちょっと昔、近代の写実絵画が紹介されています。
特にフィーチャーされていたのが、『近代洋画の父』 こと高橋由一。
自画像や風景画を含む5点の貴重な高橋由一作品が紹介されていました。
それらの中には、由一の代表作ともいうべき、《鮭図》 も。
東京芸術大学が所蔵する重要文化財の 《鮭図》 と、まったく同じように思えますが。
実は、かなり違います。
(注:本展にはこちらの 《鮭図》 は出展されていません)
笠間日動美術館の 《鮭図》 は、だいぶ身が食べられてしまっているのです。
新巻鮭ビフォーアフター。
また、由一と同時期に活躍した洋画界の華麗なる一族、
五姓田一家にも、大きくスポットが当てられていました。
特に必見なのは、五姓田一家の星・五姓田義松の傑作 《人形の着物》。
こちらは、フランスの官展 (サロン) にて、
なんと油彩画で日本人として初めて入選を果たした記念すべき作品なのだそう。
左下には、フランス語でのサインが、右下には日本語でのサインが添えられています。
子どもの顔はそんなに可愛くなかったですが、
床でスヤスヤ眠る猫の可愛らしさに、思わず頬が緩んでしまいました。
ちなみに、「むかし」 の写実絵画の中で、
個人的に一番印象に残ったのは、渡部審也による 《供侍図》 です。
主人がなかなか戻ってこないのでしょう。
待ちくたびすぎて、露骨なくらいにテンションが下がっています。
「あぁ~早く帰りて~よ~」 という心の声がダダ洩れしているかのよう。
奥に描かれた赤い服の彼は、もはや感情がゼロ。
表情が完全に死んでいました。
今も昔もブラックな職場はあるようです。
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