三井記念美術館で開催中の・・・
“三井版 日本美術デザイン大辞展” に行ってきました。
こちらは、三井記念美術館が、
古美術入門編として定期的に企画している 「美術の遊びとこころ」 シリーズの最新展。
HPでの告知曰く、
“「飛び出す絵本」 ならぬ 「飛び出す美術辞典」 ”
とのこと。
何やら楽しげな感じはしますが、一体全体どういうことなのでしょう??
日本美術ビギナーにとって、まず最初に立ちふさがる大きな壁が、
「葦手絵」・「鱗文」・「雲母摺」・「吹抜屋台」・「扁壺」 …等々
無数に登場する美術用語。
美術の本やキャプションに、当たり前のように登場しては、
それらの意味がわからない僕らを苦しめる憎いあんちくしょう (←?) です。
そんな苦手意識すら感じる美術用語の数々を、
今回の美術展では、実際の美術品とともに、50音順に辞書形式で紹介しています。
例えば、 「あ」 は、 「葦手絵(あしでえ)」 。
辞典風のキャプションに、以下のような説明がありました。
“漢字や仮名文字を、岩や樹木などの風景のなかに隠すように描いた絵画。料紙装飾などに用いられ、次第に文様化して、蒔絵や服飾などに用いられるようになった。もともと「葦手」は、平安時代に行われた書体のひとつで、葦、水流、鳥、石 ... であった。葦の群生したさまに模したことから、「葦手」の名がある。”
そして、このキャプションとともに紹介されていたのが、 《舟月蒔絵二重手箱》
確かに、上蓋をよく見れば、中央右の岩に、
『夜』 と 『雲』 という漢字が描かれています。
これが、 「葦手絵」 といヤツなのですね。勉強になります。
また、例えば、 “とに~” の 「と」 は、 「饕餮文」 。
実際に、 「饕餮文」 が施された 《古銅龍耳花入》 が展示され、
その脇に添えられた三井版日本美術デザイン大辞展には、 「饕餮文」 の解説がありました。
“中国の商周時代の青銅器に表された文様。大きな目と牙をむき出した怪獣の顔を正面から見た形で、動物の様々な特徴を組み合わせて作られている。しかし、何を表したのか、何のために銅器の文様に用いられたかについては諸説あり、はっきりとわからない。なお、「饕餮」とは文献に現れる怪神の名であるという。”
と、まさに体験する美術辞典のような美術展。
会場では、 「あ」 の 「赤絵」 から始まり、
「わ」 の 「椀・碗」 まで、全部で73コの美術用語を学ぶことが出来ます。
全ての文字を網羅するために、
「り」 で 「柳営御物(りゅうえいごもつ)…徳川将軍家の名物茶道具」 を紹介するなど、
多少、強引な…もとい、力技な部分もありましたが (笑)
それでも、三井版日本美術デザイン大辞典を完成させてしまった担当学芸員さんに拍手です。
そして、何より、この壮大な美術辞典を、
自前で完成させてしまった三井記念美術館のコレクションの幅広さにも、改めて拍手。
ありそうでなかった楽しく学べる日本美術展。
ちなみに。
今回の美術展は、日本美術初心者が楽しめるのは、もちろんのことですが。
それなりに、日本美術に親しんできた人にも、楽しめること請け合いです。
というのも、紹介されている美術品は、
ただ単に、美術用語を解説するために展示されている、そこそこの美術品…では、決してなく。
「ら」 の 「楽焼」 に関連して、
重要文化財の長次郎作の 《黒楽茶碗 銘俊寛》 が。
「う」 の 「雲龍」 に関しては、
京都の本山興正寺が所蔵する狩野探幽作の 《雲龍図》 が、特別出品されています。
他にも、野々村仁清の 《色絵鶏香合》 や、
新発見された円山応挙作の 《鍾馗図》 や、 《北斎漫画》 など名品珍品の数々が、
あくまで美術用語を解説するために、展示されています。
どの美術用語を説明するために、どの美術品が登場するのか。乞うご期待です。
最後に、今回、一番の衝撃を受けた作品群を。
それは、 「牙彫(げちょう)」 として紹介されていた作品たち。
ちなみに、 「牙彫」 とは・・・
“動物の牙を用いた細工物。主に美しい光沢のある象牙が用いられる。奈良時代からみられるが、流行したのは江戸時代中期以降で、とくに根付(ねつけ)に精巧な技巧が凝らされた。明治時代以降も、その細密技巧が外国人にも愛好され、さらに盛んとなり彫刻的な作品も製作された。”
と、ありました。
そこで紹介されていたのが、竹内実雅の 《牙彫田舎家人物置物》 という作品。
1本の象牙を彫って出来上がったのが、こちら↓
http://www.museum.or.jp/uploads/topics/topicsd9368a7bd73495e247710c659f9bf8de.jpg
この完成度は、衝撃的!
これまで数多くの彫刻作品を観ていますので、
ちょっとやそっとでは驚かなくなっている僕ですが、思わず声を上げてしまいました。
手前の人々、木、家の表現も見事すぎますが、
家の横にある水車の表現は、もはや神の領域!!
(画像ではわかりませんが、会場にて右横から観ると、そのスゴさがわかります)
家の中にいる人に関しては、もはやどのように彫刻したのか、想像すら出来ません!!!
さらに驚かされたのは、こんなにも超絶技巧な作品に関わらず、
当時出展した文部省美術展覧会では、三等の評価だったとのこと。
一等、二等は、どんなんだ?!
《牙彫田舎家人物置物》 で十分すぎるほど驚いたのですが、
その隣にも、安藤緑山なる人物による驚くべき牙彫作品が・・・。
http://www.museum.or.jp/uploads/topics/topics1d5876e1c74d51556b633f57e1244c68.jpg
どこからどう見ても、本物の果物にしか見えないのですが、
こちらは、 《染象牙果菜置物》 という立派な牙彫作品。
知らずに食べたら、歯が折れます。
さて、この牙彫に彩色する技術は、安藤緑山なる人物が独自で考案したものだそうで、
彼が、誰にも教えず、この世を去ってしまったことから、一代限りの幻の技術になってしまったのだとか。
いやぁ、牙彫は奥が深い。 (←今日覚えたての美術用語)
次の 「美術の遊びとこころ」 シリーズは、 “大牙彫展” を希望します。
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“三井版 日本美術デザイン大辞展” に行ってきました。
こちらは、三井記念美術館が、
古美術入門編として定期的に企画している 「美術の遊びとこころ」 シリーズの最新展。
HPでの告知曰く、
“「飛び出す絵本」 ならぬ 「飛び出す美術辞典」 ”
とのこと。
何やら楽しげな感じはしますが、一体全体どういうことなのでしょう??
日本美術ビギナーにとって、まず最初に立ちふさがる大きな壁が、
「葦手絵」・「鱗文」・「雲母摺」・「吹抜屋台」・「扁壺」 …等々
無数に登場する美術用語。
美術の本やキャプションに、当たり前のように登場しては、
それらの意味がわからない僕らを苦しめる憎いあんちくしょう (←?) です。
そんな苦手意識すら感じる美術用語の数々を、
今回の美術展では、実際の美術品とともに、50音順に辞書形式で紹介しています。
例えば、 「あ」 は、 「葦手絵(あしでえ)」 。
辞典風のキャプションに、以下のような説明がありました。
“漢字や仮名文字を、岩や樹木などの風景のなかに隠すように描いた絵画。料紙装飾などに用いられ、次第に文様化して、蒔絵や服飾などに用いられるようになった。もともと「葦手」は、平安時代に行われた書体のひとつで、葦、水流、鳥、石 ... であった。葦の群生したさまに模したことから、「葦手」の名がある。”
そして、このキャプションとともに紹介されていたのが、 《舟月蒔絵二重手箱》
確かに、上蓋をよく見れば、中央右の岩に、
『夜』 と 『雲』 という漢字が描かれています。
これが、 「葦手絵」 といヤツなのですね。勉強になります。
また、例えば、 “とに~” の 「と」 は、 「饕餮文」 。
実際に、 「饕餮文」 が施された 《古銅龍耳花入》 が展示され、
その脇に添えられた三井版日本美術デザイン大辞展には、 「饕餮文」 の解説がありました。
“中国の商周時代の青銅器に表された文様。大きな目と牙をむき出した怪獣の顔を正面から見た形で、動物の様々な特徴を組み合わせて作られている。しかし、何を表したのか、何のために銅器の文様に用いられたかについては諸説あり、はっきりとわからない。なお、「饕餮」とは文献に現れる怪神の名であるという。”
と、まさに体験する美術辞典のような美術展。
会場では、 「あ」 の 「赤絵」 から始まり、
「わ」 の 「椀・碗」 まで、全部で73コの美術用語を学ぶことが出来ます。
全ての文字を網羅するために、
「り」 で 「柳営御物(りゅうえいごもつ)…徳川将軍家の名物茶道具」 を紹介するなど、
多少、強引な…もとい、力技な部分もありましたが (笑)
それでも、三井版日本美術デザイン大辞典を完成させてしまった担当学芸員さんに拍手です。
そして、何より、この壮大な美術辞典を、
自前で完成させてしまった三井記念美術館のコレクションの幅広さにも、改めて拍手。
ありそうでなかった楽しく学べる日本美術展。
ちなみに。
今回の美術展は、日本美術初心者が楽しめるのは、もちろんのことですが。
それなりに、日本美術に親しんできた人にも、楽しめること請け合いです。
というのも、紹介されている美術品は、
ただ単に、美術用語を解説するために展示されている、そこそこの美術品…では、決してなく。
「ら」 の 「楽焼」 に関連して、
重要文化財の長次郎作の 《黒楽茶碗 銘俊寛》 が。
「う」 の 「雲龍」 に関しては、
京都の本山興正寺が所蔵する狩野探幽作の 《雲龍図》 が、特別出品されています。
他にも、野々村仁清の 《色絵鶏香合》 や、
新発見された円山応挙作の 《鍾馗図》 や、 《北斎漫画》 など名品珍品の数々が、
あくまで美術用語を解説するために、展示されています。
どの美術用語を説明するために、どの美術品が登場するのか。乞うご期待です。
最後に、今回、一番の衝撃を受けた作品群を。
それは、 「牙彫(げちょう)」 として紹介されていた作品たち。
ちなみに、 「牙彫」 とは・・・
“動物の牙を用いた細工物。主に美しい光沢のある象牙が用いられる。奈良時代からみられるが、流行したのは江戸時代中期以降で、とくに根付(ねつけ)に精巧な技巧が凝らされた。明治時代以降も、その細密技巧が外国人にも愛好され、さらに盛んとなり彫刻的な作品も製作された。”
と、ありました。
そこで紹介されていたのが、竹内実雅の 《牙彫田舎家人物置物》 という作品。
1本の象牙を彫って出来上がったのが、こちら↓
http://www.museum.or.jp/uploads/topics/topicsd9368a7bd73495e247710c659f9bf8de.jpg
この完成度は、衝撃的!
これまで数多くの彫刻作品を観ていますので、
ちょっとやそっとでは驚かなくなっている僕ですが、思わず声を上げてしまいました。
手前の人々、木、家の表現も見事すぎますが、
家の横にある水車の表現は、もはや神の領域!!
(画像ではわかりませんが、会場にて右横から観ると、そのスゴさがわかります)
家の中にいる人に関しては、もはやどのように彫刻したのか、想像すら出来ません!!!
さらに驚かされたのは、こんなにも超絶技巧な作品に関わらず、
当時出展した文部省美術展覧会では、三等の評価だったとのこと。
一等、二等は、どんなんだ?!
《牙彫田舎家人物置物》 で十分すぎるほど驚いたのですが、
その隣にも、安藤緑山なる人物による驚くべき牙彫作品が・・・。
http://www.museum.or.jp/uploads/topics/topics1d5876e1c74d51556b633f57e1244c68.jpg
どこからどう見ても、本物の果物にしか見えないのですが、
こちらは、 《染象牙果菜置物》 という立派な牙彫作品。
知らずに食べたら、歯が折れます。
さて、この牙彫に彩色する技術は、安藤緑山なる人物が独自で考案したものだそうで、
彼が、誰にも教えず、この世を去ってしまったことから、一代限りの幻の技術になってしまったのだとか。
いやぁ、牙彫は奥が深い。 (←今日覚えたての美術用語)
次の 「美術の遊びとこころ」 シリーズは、 “大牙彫展” を希望します。
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