今年2019年は、戦後日本の陶芸界を牽引した陶芸家の一人で、
東京芸術大学学長も務めた藤本能道 (よしみち。のうどうとも) の生誕100年に当たる節目の年。
それを記念して、藤本能道と最も関わりの深い美術館、
菊池寛実記念 智美術館では、“生誕100年 藤本能道 生命を描いた陶芸家” が開催されています。
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(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
藤本能道は、「色絵磁器」 の重要無形文化財保持者 (=人間国宝)。
それまでの色絵は、あくまで磁器を飾るデザインとしての絵でしたが。
写生に基づいた写実的な描写を目指した藤本能道は、
技術や釉薬の改良を続け、「色絵磁器」 を新たなステージへと引き上げました。
その全盛期、油が乗った時代に作られたのが、以下のような作品です。
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いい意味で、「もう普通に絵でよくない?」 とツッコミたくなるほどの写実性。
しかも、ただ鳥が写実的で巧く描かれているだけでなく、
その背景はぼんやりとした空気感を漂わせており、奥行きまでも表現されています。
それも含めて絵画的。
平面なのに、立体的な空間性が感じられます。
いや、正確に言えば、立体である磁器の表面 (平面部分) に立体的な空間性が感じられます。
・・・・・う~ん。何かややこしいですね。
とりあえず、1つだけ言えるのは、
こうした表現をモノにしているのは、藤本能道ただ一人。
唯一無二の世界観です。
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さてさて、今回の回顧展にはもちろん、
そんな藤本能道の全盛期の作品も多く出展されていましたが。
若手時代のアヴァンギャルドなオブジェ (ゆるキャラ?) や、
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コーヒーカップやお皿、向付などのテーブルウェアにもスポットが当てられていました。
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そんな数あるテーブルウェアの中で、
特に見逃せないのが、10年ぶりの公開となるこちらのテーブルセット。
そんじょそこらのテーブルセットではありません。
通称、「幻の食器」。
昭和天皇皇后両陛下のために制作されたというテーブルセットです。
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「幻の食器」(1976年作) のテーブルセッティング 菊池寛実記念 智美術館蔵 (撮影:尾見重治、大塚敏幸)
※美術館敷地内の西洋館 (非公開) にて撮影
1976年に茨城県下で行われた植樹祭の折、
昭和天皇皇后両陛下が、菊池家の施設に宿泊されることになりました。
そこで、伝説の現代陶芸コレクターにして智美術館創始者である菊池智は、
その時の晩餐で使用するテーブルセットを、藤本能道にフルオーダーしたのだそう。
究極のおもてなしエピソードです。
製作期間は、およそ2年。
試作を重ねること5回。
それまでに廃棄した試作品は、700点を超えていたとのこと。
かくして1点1点デザインが異なった、
総数230ピースからなる藤本渾身のテーブルセットは完成しました。
ちなみに、このテーブルセットが実際に使われたのは、その晩餐の一夜のみ。
まさしく、「幻の食器」 です。
また、今回の展覧会の後半では、
藤本能道のラストワークである 「陶火窯焔」 の作品群が紹介されています。
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《霜白釉釉描色絵金彩焰と蛾図扁壺》 1990年 菊池寛実記念 智美術館蔵 (撮影:田中良)
これら赤い炎が象徴的な作品の数々は、
藤本の生前最後の個展 “陶火窯焔 藤本能道新作展” で発表されたもの。
病気と闘いながら、まさに命を燃やして制作した作品群だそうです。
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写実であることを通り越して、
もはや情念や業といったものまでが表現されているよう。
五社英雄の世界感を彷彿とさせるものがあります。
ちなみに、今展の出展作の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、《雪白釉釉描色絵金銀彩花鳥図八角大筥》 という作品。
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色合いや雰囲気が、萩尾望都チック。
なんとなく 『ポーの一族』 感がありました。
それから、ある意味で印象的だったのが、《染付鵜之図長四角皿》 という作品。
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他の写実的な絵付とは違って、
なんともホンニャラとしたテイストでした。
こちらは、植田まさしチック。
1位を目指して、ランキングに挑戦中。
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東京芸術大学学長も務めた藤本能道 (よしみち。のうどうとも) の生誕100年に当たる節目の年。
それを記念して、藤本能道と最も関わりの深い美術館、
菊池寛実記念 智美術館では、“生誕100年 藤本能道 生命を描いた陶芸家” が開催されています。

(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)
藤本能道は、「色絵磁器」 の重要無形文化財保持者 (=人間国宝)。
それまでの色絵は、あくまで磁器を飾るデザインとしての絵でしたが。
写生に基づいた写実的な描写を目指した藤本能道は、
技術や釉薬の改良を続け、「色絵磁器」 を新たなステージへと引き上げました。
その全盛期、油が乗った時代に作られたのが、以下のような作品です。


いい意味で、「もう普通に絵でよくない?」 とツッコミたくなるほどの写実性。
しかも、ただ鳥が写実的で巧く描かれているだけでなく、
その背景はぼんやりとした空気感を漂わせており、奥行きまでも表現されています。
それも含めて絵画的。
平面なのに、立体的な空間性が感じられます。
いや、正確に言えば、立体である磁器の表面 (平面部分) に立体的な空間性が感じられます。
・・・・・う~ん。何かややこしいですね。
とりあえず、1つだけ言えるのは、
こうした表現をモノにしているのは、藤本能道ただ一人。
唯一無二の世界観です。


さてさて、今回の回顧展にはもちろん、
そんな藤本能道の全盛期の作品も多く出展されていましたが。
若手時代のアヴァンギャルドなオブジェ (ゆるキャラ?) や、

コーヒーカップやお皿、向付などのテーブルウェアにもスポットが当てられていました。


そんな数あるテーブルウェアの中で、
特に見逃せないのが、10年ぶりの公開となるこちらのテーブルセット。
そんじょそこらのテーブルセットではありません。
通称、「幻の食器」。
昭和天皇皇后両陛下のために制作されたというテーブルセットです。


「幻の食器」(1976年作) のテーブルセッティング 菊池寛実記念 智美術館蔵 (撮影:尾見重治、大塚敏幸)
※美術館敷地内の西洋館 (非公開) にて撮影
1976年に茨城県下で行われた植樹祭の折、
昭和天皇皇后両陛下が、菊池家の施設に宿泊されることになりました。
そこで、伝説の現代陶芸コレクターにして智美術館創始者である菊池智は、
その時の晩餐で使用するテーブルセットを、藤本能道にフルオーダーしたのだそう。
究極のおもてなしエピソードです。
製作期間は、およそ2年。
試作を重ねること5回。
それまでに廃棄した試作品は、700点を超えていたとのこと。
かくして1点1点デザインが異なった、
総数230ピースからなる藤本渾身のテーブルセットは完成しました。
ちなみに、このテーブルセットが実際に使われたのは、その晩餐の一夜のみ。
まさしく、「幻の食器」 です。
また、今回の展覧会の後半では、
藤本能道のラストワークである 「陶火窯焔」 の作品群が紹介されています。


《霜白釉釉描色絵金彩焰と蛾図扁壺》 1990年 菊池寛実記念 智美術館蔵 (撮影:田中良)
これら赤い炎が象徴的な作品の数々は、
藤本の生前最後の個展 “陶火窯焔 藤本能道新作展” で発表されたもの。
病気と闘いながら、まさに命を燃やして制作した作品群だそうです。


写実であることを通り越して、
もはや情念や業といったものまでが表現されているよう。
五社英雄の世界感を彷彿とさせるものがあります。
ちなみに、今展の出展作の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、《雪白釉釉描色絵金銀彩花鳥図八角大筥》 という作品。

色合いや雰囲気が、萩尾望都チック。
なんとなく 『ポーの一族』 感がありました。
それから、ある意味で印象的だったのが、《染付鵜之図長四角皿》 という作品。

他の写実的な絵付とは違って、
なんともホンニャラとしたテイストでした。
こちらは、植田まさしチック。
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