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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶

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現在、サントリー美術館で開催されているのは、
“黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶” という展覧会です。




「やきものの展覧会って、なんか地味そう・・・」

と、敬遠している人もいらっしゃるかもしれませんが。
「しびれるぜ、桃山。」 というキャッチコピーからも、なんとなく予感できるように。
意外とパンクでロックな展覧会です。


会場には、日本全国から美濃焼の名品が大集結!
美濃焼を代表する黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部、
それぞれの名物が一堂に会す贅沢な内容となっています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


ところで、“美濃” 焼なのに、何で、黄 “瀬戸”、“瀬戸” 黒というのでしょう??
実は、長い間、美濃焼は愛知県の瀬戸で焼かれたと考えられていたのだそうです。
美濃焼が岐阜県の美濃地方で焼かれたと判明したのは、なんと昭和5年のこと。
人間国宝にも認定された陶芸家・荒川豊蔵が、
岐阜県の古窯跡から志野茶碗の陶片を発掘し、美濃焼の本当の産地が判明したのだそうです。
この大発見がきっかけとなり、空前の美濃焼ブームが起こったのだとか。
益田孝 (鈍翁) や根津嘉一郎、原三溪ら、
当時の数寄者たちは、こぞって美濃焼の名品を蒐集したそうです。
今展のラストでは、そんな彼ら近代数寄者たちが所有していた名品が一挙大公開されています。




美濃焼のスターが勢ぞろい。
しびれるほどのラインナップでした。
まさに、美濃焼界のフジロックフェスです。
星星


さてさて、黄瀬戸も瀬戸黒も志野も良かったですが。
個人的には、大名茶人・古田織部の好みを反映したとされる織部にハートを撃ち抜かれました。


《織部四方蓋物》 桃山時代 17世紀 サントリー美術館


《織部洲浜形手鉢》 桃山時代 17世紀 サントリー美術館


一言で言えば、アヴァンギャルド。
黄瀬戸も瀬戸黒も志野も、全体的に落ち着いた雰囲気を醸し出していましたが、
織部に関しては、器の内側から、パッションが滲み・・・いや、ダダ洩れしていました。
形も色も模様もフリーダムで、どことなく即興的な印象を受けますが、
しばらく眺めていると、それらが絶妙に調和していることに気づかされます。
絵画に例えるなら、バスキアの絵画に近いものがありました。
そういえば、バスキアも、近年多くのコレクターにこぞって蒐集されていますよね。
織部とバスキア。
どこか通ずるところがあるのかもしれません。

そうそう。織部といえば、こんな作品も。


《織部南蛮人燭台》 桃山時代 17世紀 サントリー美術館


南蛮人をモチーフにした珍しいタイプの燭台です。
頭の上にロウソクを置くための皿がありましたが、
「ワタシタチ、ソンナコトシナイヨ!」 と、
この燭台を目にした南蛮の人々の怒りに火をつけてしまわないか、若干心配になりました。
なお、よくよく見てみると・・・




眉毛が繋がっていました。
しかも、立派なカモメ眉。
桃山時代の両さんです。


また、織部というと、緑と赤のカラフルなイメージでしたが、
織部黒、もしくは、黒織部といったモノトーンのタイプのものもあったそう。
その中で特に印象的だったのは、《黒織部花文茶碗》 です。


画面左) 《黒織部花文茶碗》 桃山時代 17世紀 個人蔵   画面右) 《織部暦文沓茶碗》 桃山時代 17世紀 個人蔵


黒いボディに映える大胆なシンボル。
どことなく、バンドTシャツを思わせるものがあります。
もしくは、ロックのリストバンド。
黒織部が裏原宿で売っていたとしても、案外、違和感はなさそうです。


ちなみに。
今回の展覧会には、美濃焼ブームの火付け役・荒川豊蔵と、


画面左) 荒川豊蔵 《志野茶碗》 昭和28年(1953) 五島美術館   
画面右) 荒川豊蔵 《志野練上手茶碗 銘 霜朝》 昭和24年(1949) 東京国立近代美術館



志野を生涯のテーマとし、美濃焼の再現に力を尽くした加藤唐九郎、


画面左) 加藤唐九郎 《黄瀬戸茶碗》 昭和57年(1982) 唐九郎陶芸記念館   
画面右) 加藤唐九郎 《茜志野茶碗》 昭和60年(1985) 唐九郎陶芸記念館



2人の名品の数々も紹介されています。
彼らの作品は、桃山時代の名品にも全く負けていませんでした。
しびれるぜ、昭和も。




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