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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき

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現在、DIC川村記念美術館で開催されているのは、
“描く、そして現れる―画家が彫刻を作るとき” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


20世紀の前衛画家たちが制作した彫刻作品、
つまり平面ではなく立体作品にスポットを当てた展覧会です。
画家が彫刻を作るイメージはあまり無いかもしれませんが。
実は、ルネサンス時代まで遡れば、ミケランジェロを筆頭に、
画家でもあり彫刻家でもある芸術家はたくさん存在していました。
その後、分業化が進み、画家は平面作品を、
彫刻家は立体作品を、と棲み分けられるようになりますが。
写真が誕生する印象派の時代あたりから、
ルノワールやドガなど、また画家が立体作品を制作するようになります。
そして、20世紀に突入すると、その傾向はますます強まっていくのです。

なぜ、彼らは画家なのに立体作品を制作するのか?
果たして、彼らの立体作品と絵画作品には、何か関係があるのか?

それらを検証しようというのが、今回の展覧会。
会場には、ピカソやマグリット、草間彌生といった、
20世紀を代表する前衛画家25名の平面作品と立体作品が並べて展示されています。





展覧会の第1章では、『絵画の実験から彫刻へ』 と題し、
ピカソやマグリット、ミロといった画家たちの作品が紹介されていました。
この章で何より感じたのは、
画家として偉大であればあるほど、立体作品がそこまで得意ではないということ。




自立させるために、少しでも重さを減らすべく、内部が妙な具合にくり抜かれていたり。
そもそも、自立させることに興味がないのか、支柱のようなもので支えられていたり。
岡本太郎の立体作品に関しては・・・




床にそのまま寝かせられて (?) いました。
どう見たって立てる気がしません。

改めて考えてみると、彫刻家や建築家など、立体を制作している芸術家は、
まずは、デッサンやスケッチ、図面など平面を制作するところから始めます。
しかし、画家の場合、先に立体を作って、
それから平面を制作するということは、まずありえません。
なるほど。画家が立体を作るのが得意ではないはずです。
短距離走と長距離走の選手が使っている筋肉がそれぞれ違うように、
画家と彫刻家では使っている芸術家筋肉 (?) が違うということを実感させられました。


続く第2章では、『反絵画としてのオブジェ、あるいは彫刻』 と題し、
そもそも絵画に疑問を抱き、「絵画って何かね?」 と考えたタイプの画家の作品が紹介されています。
例えば、画面中央に見えるのは、高松次郎の 《布の弛み》 という作品。




床に直置きされているのは、正方形の帆布。
つまり、絵が描かれていないカンヴァスです。
よく見ると、布のセンターが弛んで、少し立体的になっています。
実は、そうなるように計算して、複数の布を縫合している作品なのだとか。
平面作品に欠かせないカンヴァスが立体作品に。
考えてみると、面白いような気がしないでもない作品です。

また例えば、画面中央のアクリルケースに入っている筒状の作品。




こちらは、イタリアの芸術家ピエロ・マンゾーニによる 《5.1メートルの線》 という作品です。
マンゾーニは、長いロール紙に、1本の黒い線を引きました。
その長さ、実に5.1メートル。
そんな長い黒い線が引かれたロール紙をくるくる丸め、筒へと入れます。
果たして、それは平面作品なのでしょうか?それとも立体作品なのでしょうか?
これもまた、そう考えてみると、面白いような気がしないでもない作品です。


・・・・・と、第2章では、このように頭を使って鑑賞する作品が続々登場。
そして、その流れは、第3章、第4章にも引き継がれていきます。




第4章の 『絵画の向こう側:映像と空間』 にいたっては、
正直なところ、“ちょっと何言ってるかわからない” 状態。。。
脳みそをフル回転させすぎたため、危うく向こう側の世界へと行ってしまうところでした。


今回の展覧会を通じて、平面と立体とは何なのか、
むしろその根本のところから、よくわからなくなってしまった気がします (笑)
ただ、答えを教えてもらうことよりも、考えることに意義があるのです。
たまには、このように “自分が頭脳を使うとき” を設けるのも悪くないのかもしれません。
星


ちなみに。
DIC川村記念美術館の魅力の一つと言えば、自然豊かな庭園。
オーバーヒートしてしまった脳をリフレッシュさせようと、
庭園へと向かって歩みを進めたところ、こんな張り紙がしてありました。




先日の台風の影響が、DIC川村記念美術館にも。
台風が直撃した日から約2週間が経ちますが、
地元の千葉は、まだまだ大変なことになっています。
がんばれ千葉県!




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