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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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柳宗悦と古丹波

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瀬戸、常滑、信楽、備前、越前と並んで、
中世から現在まで生産が続く代表的な6つの窯、いわゆる日本六古窯に数えられる丹波焼。
その丹波焼に美を見出し、いち早く正しい評価の光を当てたのが、日本民藝館の創始者・柳宗悦です。
彼は、丹波焼に関して、こんな言葉を残しています。

「最も日本らしき品、渋さの極みを語る品、貧しさの冨を示す品」

丹波焼に魅入られた柳は、その生涯で多くの丹波焼を、
それも、粗雑な品と思われていた丹波焼の日常の器を蒐集しました。
今展では、そんな丹波焼コレクションの中から選りすぐられた約100点と、
そのコレクションの形成に大きな影響を与えたという丹波篠山にある道具商・尚古堂、
その店主が開設した丹波古陶館の名品約50点も併せて展示されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


丹波焼コレクションの日本2トップ・・・、
いや、世界2トップが誇る名品の数々が惜しげもなく展示された展覧会。
まず間違いなく、丹波焼の展覧会としては、世界最高水準の内容でしょう。
星


さてさて、数ある丹波焼の名品の中で、
特に名品中の名品とされるのが、日本民藝館が所蔵する 《自然釉甕》




初期の丹波焼の特徴は、人工的な釉薬を使わないこと。
穴窯の中で長時間焼かれることによって、
器に燃えた薪の灰が降りかかり、原料となる土の中に含まれた鉄分と融け合います。
すると、鳶色や緑色に発色するのです。
これを、自然釉と呼ぶのだそう。
さて、日本民藝館所蔵の 《自然釉甕》 は、
さらにその表面に溶岩のようにゴツゴツボコボコしたものが見て取れます。
この正体は、窯で焼いている際に、薪木の灰が焼物の上に降りかかり、それが固まってしまったもの。
狙って作れるものではなく、まったくの偶然の産物です。
それゆえに、「灰被」 (はいかつぎ) と呼ばれ、珍重されているのだとか。
表面がゴツゴツボコボコしているよりも、ツルツルしているほうが美的な気がしますが。
確かに、改めて、《自然釉甕》 と向き合ってみると、何ともいえない渋さを感じました。
焼き物を鑑賞しているというよりは、
奇岩や鍾乳洞など、自然の景色を眺めている感覚に近いものがあります。

なお、こちらの 《自然釉甕》 は、鎌倉時代に作られたもの。
さすが、日本六 “古” 窯。
鎌倉時代にまで遡るなんて、そんなに歴史が古いのか!
・・・・・と驚いていたら、なんと平安時代末期に作られた丹波焼も展示されていました。




丹波焼の歴史の古さ、どんだけ。
焼き物としての歴史の深さもさることながら、
それだけの歴史を乗り越えて、今に伝わっていることに静かな感動を覚えました。

ちなみに、そんな長い歴史を持つ丹波焼。
江戸時代に入ると、登り窯が導入され、大量生産が可能に。
バリエーションも多種多様になります。




中には、絵付けが施されたものも。




こちらは、《白地鉄絵草花文蝋徳利》 という一品です。
草花文とはありますが、花は咲いておらず、まさかの蕾。
まったく華はありません。
せっかく絵付けがあっても、やはり渋い。
それが、丹波焼なのかもしれません。

個人的には、《魚文壺》 がツボでした。




丹波は山々と水田に囲まれたエリア。
おそらく絵付けした職人は、海で泳ぐ魚の姿を見たことがなかったのかも。
そんな魚の素朴さも愛らしいですが、
とってつけたように描かれた2本の波も愛らしかったです。

また、やはり丹波の職人さんは、魚介系が苦手だったのでしょう。
《筒描海老文皿》も、やはりユルい仕上がりとなっていました。




殻の感じとか、髭や脚の生え方の感じとか。
全体的に、なんとも雑いです。
なのに、目だけは妙にリアル。
懐かしのおもちゃ・モーラーみたいな目をしていました。


今回出展されている中で、もし1点もらえるとするならば、
迷わず選ぶのは、こちらの 《赤土部釉船徳利》 でしょうか。




徳利としては、大きすぎる感は否めませんが。
パッと見た瞬間に、頭に浮かんだのは、
「キレイ!」 でも 「美しい!」 でもなく、「美味そう!」。
美味しそうなブリの照り焼きを連想させる (←?)、
その艶やかな肌合いに、思わず唾を飲み込んでしまいました。


ちなみに、今展に特別協力している丹波古陶館は、なんと開館50周年を迎えるとのこと。
それを記念して、来年の5月から7月にかけて、
“丹波 —いきる力が美をつくる” という特別展が開催されるそうです。
来年そのタイミングで、兵庫県に行かれる予定の方は是非。




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