この秋、京都国立博物館で開催されているのは、
“流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美” という展覧会。
鎌倉時代の絵巻物 《佐竹本三十六歌仙絵》 を中心に、
和歌にまつわる美術や書の名品を紹介する展覧会です。
展覧会の目玉はもちろん、《佐竹本三十六歌仙絵》。
小野小町や大伴家持ら、いわゆる三十六歌仙を描いた、
「三十六歌仙絵」 の中で最高峰と称される名品中の名品です。
旧秋田藩主・佐竹侯爵家に伝わったことから、《佐竹本三十六歌仙絵》 と呼ばれています。
そんな 《佐竹本三十六歌仙絵》 ですが、
1917年に、佐竹家からとある実業家へと売却されることとなりました。
ところが、すぐさまその実業家が経営難に。
再び、《佐竹本三十六歌仙絵》 は売りに出されます。
しかし、あまりにも高額であったため、購入できる日本人はいません・・・。
このままでは、外国人コレクターに購入され、海外に流出してしまう!!
そのピンチを救ったのが、近代の代表的な茶人の一人で、
実業家でもあった益田孝 (号・鈍翁) を中心とする財界人や古美術商でした。
日本の文化を救うアベンチャー的な彼らは、
あるとんでもないアイディアを思い付きました。
そうだ 分断、しよう。
もともとは2巻だった 《佐竹本三十六歌仙絵》。
それを、一歌仙ずつバラバラに分割し、
37人がそれぞれ1枚ずつ購入することにしたのです。
(「住吉大明神」 も含まれるので、正式には計37枚に分割)
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 源 信明》 鎌倉時代 13世紀 泉屋博古館蔵 通期展示
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 小大君》 鎌倉時代 13世紀 大和文華館蔵
(注:展示期間は11/6~11/24)
さてさて、当然ですが、三十六歌仙の中には、
人気がある歌仙もいれば、人気がない歌仙もいます。
ビックリマンシールやプロ野球カードのように。
そこで、公平を期すために採用された方法が・・・・・
(籤取花入とくじ。「絵巻切断」の当日、実際に使用されたくじ。花入はくじを入れていた筒を仕立て直したもの)
そう、くじ引きです。
お目当ての歌仙を見事手に入れた人もいれば、
全然欲しくない歌仙を購入せざるを得なかった人もいます。
ちなみに、言い出しっぺの益田孝は、
不人気だった僧侶の絵を引き当ててしまったのだそう。
それにより、一気に不機嫌になる益田。
結果、一番人気の 「斎宮女御」 を当てた人物が、
空気を読んで、益田孝の僧侶の絵と交換する羽目になったのだとか (笑)
(このエピソードには諸説あり)
・・・・・とこのように、《佐竹本三十六歌仙絵》 が分断されたのは、1919年のこと。
今からちょうど100年前の出来事です。
今展では、あの日以来バラバラになった 《佐竹本三十六歌仙絵》 が、100年ぶりに大集結しています!
(注:会場は撮影禁止です。記事に使用している画像は、主催者より特別に提供して頂いたものです)
全37点のうち、実に31点が一堂に会していました。
これを奇跡と言わずとして、なんと言う!
正直なところ、《佐竹本三十六歌仙絵》 そのものには、そこまでピンと来ませんでしたが。
100年ぶりに再集合を果たしたその光景には、確かに震えるものがありました。
また、展覧会には、平安時代に書かれたという 「ちはやふる」 の歌や、
重要文化財 《寸松庵色紙「ちはやふる」》 平安時代 11世紀、京都国立博物館蔵、通期展示
「佐竹本」 と双璧をなす鎌倉の歌仙絵の名品で、
経緯は不明ながら、やはり断簡の 《上畳本三十六歌仙絵》 など、
見逃せない作品が多数出展されています。
正直なところ、《佐竹本三十六歌仙絵》 だけでも十分にお腹いっぱい。
それに加えて、あれも食べ。これも食べ。
おばあちゃん家に来たのかと思いました (←?)。
さて、話を 《佐竹本三十六歌仙絵》 に戻しますと、
女性歌仙や僧侶以外は、ほとんど同じような恰好なので、そこまで変わり映えはしないのですが。
表具は、所有者がそれぞれで仕立てているため、一つとして同じものは無し。
そのセンスを見比べてみるのもまた一興です。
中でも、特にセンスを感じたのは、益田孝の弟、英作による表具。
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則》 鎌倉時代 13世紀 文化庁蔵 通期展示
絵画オン絵画。
中世の絵画をそのまま表具にしてしまうという斬新なセンスでした。
むしろ、彼に全部の表具を頼めばよかったのに。
ちなみに。
個人的に気になって仕方がなかったのは、
男性歌仙の装束の背中からビローンと伸びるアレ。
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 源 公忠》 鎌倉時代 13世紀 京都・相国寺蔵 通期展示
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 大中臣頼基》 鎌倉時代 13世紀 遠山記念館蔵
(注:展示は10/29~11/24)
なぜに、そんなにも伸ばすのか。
万が一にも踏まれたら、よろけてしまうことは必至なのに。
特にインパクトがあったのは、《上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文》 に描かれたアレ。
《上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文》 鎌倉時代 13世紀 通期展示
ビエネッタの上の部分みたいになっていました。
┃会期:2019年10月12日(土)〜2019年11月24日(日)
┃会場:京都国立博物館
┃https://kasen2019.jp/
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“流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美” という展覧会。
鎌倉時代の絵巻物 《佐竹本三十六歌仙絵》 を中心に、
和歌にまつわる美術や書の名品を紹介する展覧会です。
展覧会の目玉はもちろん、《佐竹本三十六歌仙絵》。
小野小町や大伴家持ら、いわゆる三十六歌仙を描いた、
「三十六歌仙絵」 の中で最高峰と称される名品中の名品です。
旧秋田藩主・佐竹侯爵家に伝わったことから、《佐竹本三十六歌仙絵》 と呼ばれています。
そんな 《佐竹本三十六歌仙絵》 ですが、
1917年に、佐竹家からとある実業家へと売却されることとなりました。
ところが、すぐさまその実業家が経営難に。
再び、《佐竹本三十六歌仙絵》 は売りに出されます。
しかし、あまりにも高額であったため、購入できる日本人はいません・・・。
このままでは、外国人コレクターに購入され、海外に流出してしまう!!
そのピンチを救ったのが、近代の代表的な茶人の一人で、
実業家でもあった益田孝 (号・鈍翁) を中心とする財界人や古美術商でした。
日本の文化を救うアベンチャー的な彼らは、
あるとんでもないアイディアを思い付きました。
そうだ 分断、しよう。
もともとは2巻だった 《佐竹本三十六歌仙絵》。
それを、一歌仙ずつバラバラに分割し、
37人がそれぞれ1枚ずつ購入することにしたのです。
(「住吉大明神」 も含まれるので、正式には計37枚に分割)
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 源 信明》 鎌倉時代 13世紀 泉屋博古館蔵 通期展示
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 小大君》 鎌倉時代 13世紀 大和文華館蔵
(注:展示期間は11/6~11/24)
さてさて、当然ですが、三十六歌仙の中には、
人気がある歌仙もいれば、人気がない歌仙もいます。
ビックリマンシールやプロ野球カードのように。
そこで、公平を期すために採用された方法が・・・・・
(籤取花入とくじ。「絵巻切断」の当日、実際に使用されたくじ。花入はくじを入れていた筒を仕立て直したもの)
そう、くじ引きです。
お目当ての歌仙を見事手に入れた人もいれば、
全然欲しくない歌仙を購入せざるを得なかった人もいます。
ちなみに、言い出しっぺの益田孝は、
不人気だった僧侶の絵を引き当ててしまったのだそう。
それにより、一気に不機嫌になる益田。
結果、一番人気の 「斎宮女御」 を当てた人物が、
空気を読んで、益田孝の僧侶の絵と交換する羽目になったのだとか (笑)
(このエピソードには諸説あり)
・・・・・とこのように、《佐竹本三十六歌仙絵》 が分断されたのは、1919年のこと。
今からちょうど100年前の出来事です。
今展では、あの日以来バラバラになった 《佐竹本三十六歌仙絵》 が、100年ぶりに大集結しています!
(注:会場は撮影禁止です。記事に使用している画像は、主催者より特別に提供して頂いたものです)
全37点のうち、実に31点が一堂に会していました。
これを奇跡と言わずとして、なんと言う!
正直なところ、《佐竹本三十六歌仙絵》 そのものには、そこまでピンと来ませんでしたが。
100年ぶりに再集合を果たしたその光景には、確かに震えるものがありました。
また、展覧会には、平安時代に書かれたという 「ちはやふる」 の歌や、
重要文化財 《寸松庵色紙「ちはやふる」》 平安時代 11世紀、京都国立博物館蔵、通期展示
「佐竹本」 と双璧をなす鎌倉の歌仙絵の名品で、
経緯は不明ながら、やはり断簡の 《上畳本三十六歌仙絵》 など、
見逃せない作品が多数出展されています。
正直なところ、《佐竹本三十六歌仙絵》 だけでも十分にお腹いっぱい。
それに加えて、あれも食べ。これも食べ。
おばあちゃん家に来たのかと思いました (←?)。
さて、話を 《佐竹本三十六歌仙絵》 に戻しますと、
女性歌仙や僧侶以外は、ほとんど同じような恰好なので、そこまで変わり映えはしないのですが。
表具は、所有者がそれぞれで仕立てているため、一つとして同じものは無し。
そのセンスを見比べてみるのもまた一興です。
中でも、特にセンスを感じたのは、益田孝の弟、英作による表具。
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則》 鎌倉時代 13世紀 文化庁蔵 通期展示
絵画オン絵画。
中世の絵画をそのまま表具にしてしまうという斬新なセンスでした。
むしろ、彼に全部の表具を頼めばよかったのに。
ちなみに。
個人的に気になって仕方がなかったのは、
男性歌仙の装束の背中からビローンと伸びるアレ。
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 源 公忠》 鎌倉時代 13世紀 京都・相国寺蔵 通期展示
重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 大中臣頼基》 鎌倉時代 13世紀 遠山記念館蔵
(注:展示は10/29~11/24)
なぜに、そんなにも伸ばすのか。
万が一にも踏まれたら、よろけてしまうことは必至なのに。
特にインパクトがあったのは、《上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文》 に描かれたアレ。
《上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文》 鎌倉時代 13世紀 通期展示
ビエネッタの上の部分みたいになっていました。
┃会期:2019年10月12日(土)〜2019年11月24日(日)
┃会場:京都国立博物館
┃https://kasen2019.jp/
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