■線は、僕を描く
作者:砥上裕將
出版社:講談社
発売日:2019/6/27
ページ数:322ページ
両親を交通事故で失い、喪失感の中にあった大学生の青山霜介は、
アルバイト先の展覧会場で水墨画の巨匠・篠田湖山と出会う。
なぜか湖山に気に入られ、その場で内弟子にされてしまう霜介。
それに反発した湖山の孫・千瑛は、翌年の 「湖山賞」 をかけて霜介と勝負すると宣言する。
水墨画とは、筆先から生みだされる 「線」 の芸術。
描くのは 「命」。
はじめての水墨画に戸惑いながらも魅了されていく霜介は、線を描くことで次第に恢復していく。
(Amazonより)
「これまで、このコーナーでは、
実在の芸術家をモチーフにした映画や小説を取り上げてきました。
しかし、こちらの 『線は、僕を描く』 は、完全なるフィクション。
青山霜介という若手水墨画家は存在しませんし、
水墨画の巨匠・篠田湖山なる人物も存在していません。
ついでに、「湖山賞」 もありません。
それでもあえて紹介したのは、
作者の砥上裕將さんが、なんと水墨画家だから。
そう、こちらは、現役の水墨画家が、水墨画の世界をテーマに描いた小説なのです。
水墨画に触れたことがない、ましてや、まったく筆を持ったことがない、
そんな大学生の主人公が、ひょんなことから、水墨画界の重鎮と出逢い、
ひょんなことから、その水墨画の巨匠に、才能を見いだされ、教えを受けることに。
そして、才能がめきめきと開花する。
まるで 『ガラスの仮面』 や 『ヒカルの碁』 のような、漫画的な展開です。
さらに、主人公のライバルには、美人水墨画家 (二人の関係性はやがて・・・)。
主人公の親友 (悪友) には、ちょっと変わった野郎。
と、キャラクター造形も、まさに漫画チックです。
それなのに、内容が薄っぺらく感じられないのは、
何といっても、肝心の水墨画の描写にリアリティがあるからに他なりません。
さすがプロ。さすが本職。
説得力ありありでした。
なるほど。水墨画って、そういうところが見どころなのか!
そういう風に楽しむのか!その表現って、実は難易度が高いのか!
知らないことだらけで、読めば読むほど勉強になりました。
読み終わった後、無性に水墨画を観に行きたくなります。
(その欲は、富山県水墨美術館で満たしました)
そして、無性に水墨画を描きたくなります。
試しに、家にあった墨と筆で蘭を描いてみましたが、
主人公と違って、僕には水墨画の才能が全く無かったようです。
でしょうね。
なお、砥上裕將さんは、この小説がデビュー作とのこと。
しかも、森博嗣さんや西尾維新さん、辻村深月さんなど、
そうそうたる人気小説家を輩出してきた 『メフィスト賞』 を今作で受賞したのだそう。
30歳半ばにして小説を書いてみたら、いきなり名誉ある賞を受賞してしまうだなんて。
事実は小説よりも奇なり。
主人公よりも、とんでもない才能の持ち主です。
ちなみに。
漫画みたいな設定の小説だと思っていたら・・・
実際に、漫画化もされているそうです。
小説では、イケメン設定はなかったのに、
漫画では、だいぶ主人公がイケメンに描かれています。
才能もあって、フェイスも良くて・・・・・チッ(・д・)
僕は、漫画よりも断然、小説派です。
(星4つ)」
~小説に登場する名画~