もしも、芸術家たちが漫才をしたら・・・
こんな感じのネタを披露するのかもしれません。
それでは、皆様、どうぞ芸術漫才をお楽しみください!
運慶 「運慶 [1] です」
快慶 「快慶 [2] です」
2人 「2人合わせて、慶派ボーイです。お願いします」
運慶 「あー、ありがとうございます!」
快慶 「(客席から何かを受け取る)」
運慶 「今、客席にいる師匠から 『慶』 の一字を頂きましたけどもね [3]。
ありがとうございますね。こんなんなんぼあってもいいですからね」
快慶 「一番いいですからね」
運慶 「ゆうとりますけどね」
快慶 「うちのおかんがね、好きな像があるらしいんやけど」
運慶 「そうなんや」
快慶 「その名前をちょっと忘れたらしくてね」
運慶 「ほー、好きな像の名前忘れてまうって、どうなってんねん」
快慶 「いろいろ聞くんやけどな。全然わからへんねん」
運慶 「ほんなら俺がね。
おかんの好きな像を一緒に考えてあげるから、どんな特徴言うてたかとか教えてみてよ」
快慶 「コンビしてものすごく怒った表情を浮かべてる寄木造 [4] のやつやって言うてた」
運慶 「金剛力士像 [5] やないかい。
その特徴はもう完全に俺らが作った金剛力士像やがな。すぐわかったよ、こんなもん」
快慶 「いや、俺も金剛力士像やと思てんけどな。
おかんが言うには、それをいつか家に飾ってみたいって言うねんな」
運慶 「ほな、金剛力士像と違うか!
あんな8mもある像なんか家に入らへんからね。
2部屋ぶち抜いて横にして飾るしかないもんね。ものすごい邪魔やがな。
かといって、外に置いとったら、ご近所さんから、
お宅の前通るたびに睨まれて怖いわ、ってクレームが入るもんね。
ほな、金剛力士像ちゃうがなそれ。もうちょっと詳しく教えてくれる?」
快慶 「なんであんなに狭いところに入ってるんかわからんらしい」
運慶 「金剛力士像やないかい!
金剛力士像は、門の中のめちゃくちゃ狭いスペースに押し込められてるんやから!
花火大会の仮設トイレくらい狭いスペースに安置されてるのは、世界中であの像だけ。
金剛力士像やそんなもんは!」
快慶 「わかれへんねん、でも」
運慶 「何がわかれへんねん」
快慶 「俺も金剛力士像や思てんけどな。
おかんが言うには、あんな筋肉に憧れるって言っててん」
運慶 「ほな、金剛力士像ちゃうやないか!
一見、筋骨隆々でカッコ良く見えるけどな。
よう見ると、筋肉の付き方が、『幽遊白書』 の戸愚呂弟ばりに変やねん!
腹筋は全然割れてへんのに、胸筋と腹筋の間が割れてんねん。
どこをシックスパックにしとんねん!
金剛力士像ちゃうがな。もうちょっとなんか言ってなかったか?」
快慶 「よくわからん布みたいなのが巻き付いてるらしい」
運慶 「金剛力士像や!
どこで売ってるかわからん無駄に長い布を、たすき掛けするわけでもなく、
ストールみたく首に巻くわけでもなく、ふわっと浮かせ続けて身に纏ってるわけや。
そんな近未来すぎるファッション、他の像は誰もしてへんねん!
金剛力士像やん絶対!」
快慶 「わからへんねん、でも」
運慶 「なんでわからへんのこれで」
快慶 「おかんが言うには、パート先のスーパーで働いて欲しいって言うねん」
運慶 「ほな金剛力士像ちゃうやないかい!
あいつの本来の仕事は、ガードマンやねん。
寺に入ろうとする悪い奴を排除しようと、門に立って怖い顔で睨んどるわけや。
でも、実際、東大寺の境内を見てみい。
見るからにガラの悪い修学旅行生が、いっぱい入ってるやないか!
なんなら、鹿も入りたい放題や!
あんなんスーパーで働かせてもな、万引き犯の一人も捕まえられんからね。
金剛力士像ちゃうやないか。もうちょっとなんか言ってなかった?」
快慶 「結局、大仏を観てしまうと印象が薄れるらしい」
運慶 「金剛力士像やないか!
東大寺に入るときに、金剛力士像観て、まず 「おー!」 と感動すんねん。
でもな、その後に、めっちゃでっかい大仏観るやろ。
そうすると、その時点で、もう頭の中から金剛力士像のことはすっかり消えてまうねん!
ほんでな、お寺を出る時にな、もう一回、門通るやろ?
そん時なんか、誰一人、金剛力士像なんて観てないねんから。
金剛力士像のブームなんて、秒で終わんねん。
金剛力士像に決まり!」
快慶 「わからへん」
運慶 「わからへんことない!おかんの好きな像は金剛力士像」
快慶 「おかんが言うには、金剛力士像ではないって言うてた」
運慶 「ほな、金剛力士像ちゃうやないか!
おかんが金剛力士像ではないと言えば、金剛力士像ちゃうがな!」
快慶 「そうやねん」
運慶 「先言えよ!俺が東大寺に入る時と出る時の違いを力説してる時どう思てたん?」
快慶 「申し訳ないなと思って」
運慶 「ほんまにわかれへんがな。それどうなってんねん」
快慶 「おとんが言うには、モアイ像ちゃうかって」
運慶 「いや、絶対ちゃうやろ!もうええわ」
2人 「どうもありがとうございました」
[1] 運慶 (生年不詳~1224)
言わずと知れた日本一有名な仏師。
20代のデビュー作で国宝の 《大日如来坐像》 (奈良・円成寺)の台座の天板の裏に、運慶の花押 (サイン) がある。
実は、このサインは、現在確認されている中で最も古い仏師のサインとのこと。
アーティスト気質の強い仏師であったようです。
[2] 快慶 (生没年不詳)
運慶の父である康慶 (生没年不詳) の弟子。
運慶より腕が一歩劣るとされるが、作品は運慶よりも数多く制作している。
[3] 運慶と快慶は、康慶より 「慶」 の一字をもらった。
なお、慶派の仏師に、「慶」 の一字が受け継がれることが多いのは、南北朝時代まで。
それ以降は、「康」 の一字が受け継がれることが多くなる。
[4] 正式には、《木造金剛力士立像(所在南大門)》
日本最大の山門といわれる東大寺の南大門に安置されている。
向かって右側にあるのが、口を開けた阿形。左側が口を閉じた吽形。
運慶、快慶率いる慶派の仏師がワンチームで制作。わずか70日余りで造成された。
[5] 一本の大木が必要な一木造とは違って、寄木造はいくつかの木材をはぎ合せて仕上げる。
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快慶 「快慶 [2] です」
2人 「2人合わせて、慶派ボーイです。お願いします」
運慶 「あー、ありがとうございます!」
快慶 「(客席から何かを受け取る)」
運慶 「今、客席にいる師匠から 『慶』 の一字を頂きましたけどもね [3]。
ありがとうございますね。こんなんなんぼあってもいいですからね」
快慶 「一番いいですからね」
運慶 「ゆうとりますけどね」
快慶 「うちのおかんがね、好きな像があるらしいんやけど」
運慶 「そうなんや」
快慶 「その名前をちょっと忘れたらしくてね」
運慶 「ほー、好きな像の名前忘れてまうって、どうなってんねん」
快慶 「いろいろ聞くんやけどな。全然わからへんねん」
運慶 「ほんなら俺がね。
おかんの好きな像を一緒に考えてあげるから、どんな特徴言うてたかとか教えてみてよ」
快慶 「コンビしてものすごく怒った表情を浮かべてる寄木造 [4] のやつやって言うてた」
運慶 「金剛力士像 [5] やないかい。
その特徴はもう完全に俺らが作った金剛力士像やがな。すぐわかったよ、こんなもん」
快慶 「いや、俺も金剛力士像やと思てんけどな。
おかんが言うには、それをいつか家に飾ってみたいって言うねんな」
運慶 「ほな、金剛力士像と違うか!
あんな8mもある像なんか家に入らへんからね。
2部屋ぶち抜いて横にして飾るしかないもんね。ものすごい邪魔やがな。
かといって、外に置いとったら、ご近所さんから、
お宅の前通るたびに睨まれて怖いわ、ってクレームが入るもんね。
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運慶 「金剛力士像やないかい!
金剛力士像は、門の中のめちゃくちゃ狭いスペースに押し込められてるんやから!
花火大会の仮設トイレくらい狭いスペースに安置されてるのは、世界中であの像だけ。
金剛力士像やそんなもんは!」
快慶 「わかれへんねん、でも」
運慶 「何がわかれへんねん」
快慶 「俺も金剛力士像や思てんけどな。
おかんが言うには、あんな筋肉に憧れるって言っててん」
運慶 「ほな、金剛力士像ちゃうやないか!
一見、筋骨隆々でカッコ良く見えるけどな。
よう見ると、筋肉の付き方が、『幽遊白書』 の戸愚呂弟ばりに変やねん!
腹筋は全然割れてへんのに、胸筋と腹筋の間が割れてんねん。
どこをシックスパックにしとんねん!
金剛力士像ちゃうがな。もうちょっとなんか言ってなかったか?」
快慶 「よくわからん布みたいなのが巻き付いてるらしい」
運慶 「金剛力士像や!
どこで売ってるかわからん無駄に長い布を、たすき掛けするわけでもなく、
ストールみたく首に巻くわけでもなく、ふわっと浮かせ続けて身に纏ってるわけや。
そんな近未来すぎるファッション、他の像は誰もしてへんねん!
金剛力士像やん絶対!」
快慶 「わからへんねん、でも」
運慶 「なんでわからへんのこれで」
快慶 「おかんが言うには、パート先のスーパーで働いて欲しいって言うねん」
運慶 「ほな金剛力士像ちゃうやないかい!
あいつの本来の仕事は、ガードマンやねん。
寺に入ろうとする悪い奴を排除しようと、門に立って怖い顔で睨んどるわけや。
でも、実際、東大寺の境内を見てみい。
見るからにガラの悪い修学旅行生が、いっぱい入ってるやないか!
なんなら、鹿も入りたい放題や!
あんなんスーパーで働かせてもな、万引き犯の一人も捕まえられんからね。
金剛力士像ちゃうやないか。もうちょっとなんか言ってなかった?」
快慶 「結局、大仏を観てしまうと印象が薄れるらしい」
運慶 「金剛力士像やないか!
東大寺に入るときに、金剛力士像観て、まず 「おー!」 と感動すんねん。
でもな、その後に、めっちゃでっかい大仏観るやろ。
そうすると、その時点で、もう頭の中から金剛力士像のことはすっかり消えてまうねん!
ほんでな、お寺を出る時にな、もう一回、門通るやろ?
そん時なんか、誰一人、金剛力士像なんて観てないねんから。
金剛力士像のブームなんて、秒で終わんねん。
金剛力士像に決まり!」
快慶 「わからへん」
運慶 「わからへんことない!おかんの好きな像は金剛力士像」
快慶 「おかんが言うには、金剛力士像ではないって言うてた」
運慶 「ほな、金剛力士像ちゃうやないか!
おかんが金剛力士像ではないと言えば、金剛力士像ちゃうがな!」
快慶 「そうやねん」
運慶 「先言えよ!俺が東大寺に入る時と出る時の違いを力説してる時どう思てたん?」
快慶 「申し訳ないなと思って」
運慶 「ほんまにわかれへんがな。それどうなってんねん」
快慶 「おとんが言うには、モアイ像ちゃうかって」
運慶 「いや、絶対ちゃうやろ!もうええわ」
2人 「どうもありがとうございました」
[1] 運慶 (生年不詳~1224)
言わずと知れた日本一有名な仏師。
20代のデビュー作で国宝の 《大日如来坐像》 (奈良・円成寺)の台座の天板の裏に、運慶の花押 (サイン) がある。
実は、このサインは、現在確認されている中で最も古い仏師のサインとのこと。
アーティスト気質の強い仏師であったようです。
[2] 快慶 (生没年不詳)
運慶の父である康慶 (生没年不詳) の弟子。
運慶より腕が一歩劣るとされるが、作品は運慶よりも数多く制作している。
[3] 運慶と快慶は、康慶より 「慶」 の一字をもらった。
なお、慶派の仏師に、「慶」 の一字が受け継がれることが多いのは、南北朝時代まで。
それ以降は、「康」 の一字が受け継がれることが多くなる。
[4] 正式には、《木造金剛力士立像(所在南大門)》
日本最大の山門といわれる東大寺の南大門に安置されている。
向かって右側にあるのが、口を開けた阿形。左側が口を閉じた吽形。
運慶、快慶率いる慶派の仏師がワンチームで制作。わずか70日余りで造成された。
[5] 一本の大木が必要な一木造とは違って、寄木造はいくつかの木材をはぎ合せて仕上げる。
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