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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展

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今年2020年は、東京オリンピック・パラリンピック開催年。
それにちなんで、今年、パナソニック汐留美術館では、
1年にわたって、日本をテーマにした4つの展覧会が開催されるようです。
そのトップバッターを飾るのが、“モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展” という展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


1930~60年代にかけて、世界中でモダンデザインが普及しました。
日本もまた然り。
特に、5人の外国人と2人の日本人の尽力によって、
日本人のライフスタイルに、モダンデザインが定着したのでした。
そんな日本モダンデザイン界における神7 (?) にスポットを当てた展覧会です。

まず第1章で紹介されていたのは、ドイツ建築家ブルーノ・タウト。
一般的には、京都の桂離宮を訪れた際に、
「泣きたくなるほど美しい」 と発言した感動屋さんと思われていますが (←?)。
実は、日本初の国立デザイン指導機関であった、
仙台の工芸指導所に顧問として招かれ、日本にモダンデザインを指導した立役者でもあります。
実際に指導した期間は4ヶ月ほどだったそうですが、その影響は絶大。
会場には、そんなタウトがデザインした工芸品や、


ブルーノ・タウト 《卵殻螺鈿角形シガレット入れ》 1935年 群馬県立歴史博物館蔵


椅子をはじめとする家具の数々が紹介されていました。




タウトの椅子といえば、『半落ち』 や 『64』 でお馴染みの小説家、
横山秀夫さんの6年ぶりの最新作として話題になった 『ノースライト』 に登場。
物語の大きな鍵を握るアイテムです。

ノースライトノースライト
1,944円
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『ノースライト』 を読まれた方は、
間違いなく、テンションがあがるはず。
『ノースライト』 にも登場した日向邸に関する展示品もありますよ。

同じく第1章では、タウトの日本でのパトロンとなった井上房一郎も紹介。
彼はタウトと組んで、「タウト井上」 というブランドを生み出し、
品質を保証したプロダクトを、銀座にあったミラテスという店舗で販売しました。




そのミテラスをたびたび訪れており、
高崎にある旧井上房一郎邸の設計を担当したのが、続く第2章の主役。
建築家のアントニン&ノエミ・レーモンド夫妻です。




こちらのコーナーでは、彼らが手がけた建築や家具の数々を紹介。
さらに、珍しいところでは、レーモンドが描いた絵画作品も紹介されています。




アントニン・レーモンドといえば、フランク・ロイド・ライトの弟子ですが、
描いた絵に関しては、別の世界的建築家ル・コルビュジエのピュリスム風のスタイルでした。

さて、第3章で紹介されているのは、剣持勇。
『金田一少年の事件簿』 に同姓同名の刑事が登場しますが、もちろん彼ではありません。
仙台の工芸指導所時代には、タウトの助手を務め、
ヤクルトの容器から家具まで幅広いジャンルを手がけた日本を代表するデザイナーです。





代表作は何と言っても、《丸椅子C-315-E》 (写真奥)




こちらは、籐を手作業で編んで形作られているそうで、
形を維持するためには、制作途中で手を止めることはできないのだそうです。
手慣れた職人でも、制作には約10時間かかるとのこと。
一度編み始めたら最後、ぶっ通しで編み続けないといけません。
1日の労働時間が8時間まで、となった現在は、どうやって制作しているのでしょうか??


第4章で紹介されているのは、日系アメリカ人二世ジョージ・ナカシマ。
戦前はアントニン・レーモンド建築事務所で働き、
建築家を目指していましたが、日系人であるために大戦中に収容所に収監されてしまいます。
しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
収容所の中で出会った日系人大工から、
木工技術の基礎を学んだことで、世界的な木工家具作家になったのです。




そんな彼の代表作は、《コノイドチェア》


ジョージ・ナカシマ 《コノイドチェア》 1960(1992)年 武蔵野美術大学 美術館・図書館蔵




2本足で立つ姿は、まるでペリカンかガチョウのよう。
なんとも愛らしく、座るのが忍びなくなる椅子です。
眺めているだけで癒やされました。


さてさて、最後の第5章で紹介されているのは、20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチ。

今展では、彫刻家や造園家・作庭家としての彼の一面よりも、
慶應義塾大学の三田キャンパス内にあったラウンジ萬來舎 (通称ノグチルーム) や、




岐阜の伝統工芸産業である提灯にインスピレーションを受けた 「あかり」 シリーズなど、




インテリアデザイナーとしての彼の一面がフィーチャーされていました。
ちなみに、イサム・ノグチは、レーモンドや剣持と交流があったのだそう。
紹介されていた7人の作品自体も興味深かったですが、
それと同じくらいに、緩やかに繋がった7人の関係性も興味深かったです。
星星


最後に。
7人とは別に、この展覧会で注目したいもう1人をご紹介いたしましょう。
それは、前田尚武さん。
元森美術館の建築・デザインプログラムマネージャーで、
2018年に話題となった “建築の日本展” のキュレーションを担当した人物です。
そんな前田さんが、今回の展覧会の会場構成を担当しています。




日本の数寄屋建築の雰囲気をイメージし、
展示パネルを白木の柱と梁で組んだのだそう。
斜め斜めへと進んでいく、これまでにありそうでなかった会場構成。
斜め上をいく会場です。


 ┃会期:2020年1月11日(土)~3月22日(日)
 ┃会場:パナソニック汐留美術館
 ┃
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/20/200111/

~読者の皆様へのプレゼント~
“モダンデザインが結ぶ暮らしの夢展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、1月25日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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