本来なら、3月31日から6月14日までの会期で、日本民藝館で開催される予定だった展覧会、
“洋風画と泥絵 異国文化から生れた「工芸的絵画」” が会期をズラして開催されることとなりました。
2ヶ月ぶりに再開した日本民藝館は、コロナウィルス予防対策もバッチリ!
館内の各所に消毒用アルコールが設置されていたり、
ドアノブや手すりなど不特定多数の人の手が触れる場所は、定期的に消毒作業が行われていたり。
さらに、通常時は入口で靴を脱いでスリッパに履き替える日本民藝館ですが。
現在は・・・・・・・・・
(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
シューズカバーを利用する方式が採用されています。
シューズカバーを付けているとはいえ、
土足で日本民藝館の中を歩き回るのは、なんだか新鮮な感じでした。
さてさて、話を展覧会に戻しまして。
現在開催されているのは、日本民藝館の創始者である柳宗悦が蒐集した 「工芸的絵画」、
具体的には、江戸時代後期に描かれた 「洋風画」 や 「泥絵」 にスポットを当てた展覧会です。
ちなみに、これらの工芸的絵画コレクションを、
日本民藝館でまとめて紹介するのは初めての機会なのだとか。
そんな貴重な展覧会が中止にならずに済んで,本当に良かったです。
展覧会の主役、洋風画。
洋画ではなく、洋 “風” 画。
西洋絵画に衝撃を受けた当時の日本人が、
西洋の画家に直接学ぶことなく、見よう見まねで描いたのが洋風画です。
音楽に例えるならば、ビートルズに影響を受けて誕生したグループサウンズのような感じでしょうか。
洋風画に関して、まず特徴的だったのが、やたらと船がモチーフとなっていたこと。
今回紹介されていた洋風画の5点に1点くらいは、船が登場していました。
現代と違って、飛行機がない時代。
今以上に、「西洋=船」 というイメージが強かったのでしょうね。
それから、何と言っても特徴的だったのが、
それまでの日本美術にはなかった遠近法を取り入れようとしていること。
自分も遠近法をやってみたい。
拙いながらも独学でチャレンジしてみるその健気な姿勢に、微笑ましさすら感じました。
無難に巧い絵よりも、よっぽど胸を打つものがあります。
ちなみに、個人的に一番グッときたのは、《殿中》 という作品です。
遠近法をやりたいがための1枚。
シンプルすぎて、ミニマルアートのようにも感じられました。
ただ、よくよく観てみると、一番奥の部屋は、手前の3部屋とは向きが異なっています。
謎のカーブ。
くの字型の建物なのでしょうか??
また、遠近法と同様に、西洋の絵画から影響を受けたのが陰影法。
そんな陰影法を、ちゃんとものにしている画家もいましたが。
中には、そこまででもない作品も。
目元と鼻にクッキリと陰影が施されています。
この陰影のせいで、ただでさえ怖い表情が、より怖いものに・・・。
西洋絵画感が増したというよりは、伊藤潤二感が増していました。
ちなみに、陰影といえば、こんな作品もありました。
キャプションには、「絵が変化します。」 とあります。
とりあえず、右側面のスイッチを上げてみました。
すると・・・・・・・
ん?何がどう変化したん??
パッと見たところ何も変化していません。
もしや騙されたのかと思い、作品に顔を近づけてみたところ、
自分の影が覆い被さったことで、ようやくその変化に気づくことが出来ました。
なるほど。こういう仕掛けだったのですね!
さてさて、今回の展覧会のもう一つの主役が、泥絵です。
泥絵とは、浮世絵の一種。
実際に泥で描いているのではなく、
顔料に胡粉を混ぜ、直接筆で描いた肉筆浮世絵の一種です。
今回初めて目にしましたが、泥絵という名前とは裏腹に、
まったく泥臭くなく、初期のCGのようで、むしろスタイリッシュな印象でした。
人物の表現は、どこかジュリアン・オピーに通ずるところがあります。
この展覧会を機に、泥絵ブームが来るのでは?
ジュリアン・オピーのTシャツみたいに、泥絵Tシャツをグッズ化して頂きたいものです。
最後に、妙に気になってしまった作品をご紹介いたしましょう。
川原慶賀による 《魯西亜軍旗持兵および椅子・靴持兵行列図》 です。
勇ましい軍人たちが行列をなしています。
何よりも気になったのは、列の後ろにいたこの人たち。
右手と左手それぞれに靴を一足ずつ持っています。
何その役割?!
というか、箱みたいなのに入れて、まとめて運べよ。
非効率にもほどがあります。