現在、世田谷美術館では、“作品のない展示室” が開催されています。
なんだか 『題名のない音楽会』 みたいなタイトルですね。
その名の通り、展示室に一切作品が展示されていない展覧会です。
・・・・・・・って、これは展覧会なのでしょうか?
新型コロナウィルスの影響により、
この夏開催される予定だった展覧会が中止に。
「だったら、いっそのこと、あえて何も展示しないというのは?」
「展示室内の窓から砧公園を観てもらうというのは??」
そんな発想から生まれたという、
“ザ・逆転の発想”、いうなれば、ノーガード戦法のような展覧会です。
なお、観覧料は無料となっています。
正直なところ、会場を訪れるまでは、
何もない展示室を観たところで、何の感情も沸かないだろうと思っていたのですが。
いやいやどうして。
かなりグッとくるものがありました。
会場を訪れるなり、走馬灯のように頭をよぎったのが、
これまでに世田谷美術館で開催された数々の展覧会。
作品のない展示室を目の前にして、
“あの展覧会、面白かったよなァ” とか、
“そういえば、あんな展覧会も開催されていたっけ” とか、いろいろと記憶が蘇りました。
そんな懐かしい気持ちを覚えると同時に、
“これからしばらく、あぁいう展覧会が開催されないかも・・・” とも思い、胸が苦しくなりました。
覚えたての言葉を使うなら、ただただエモい展覧会でした。
何も展示しない。
このコンセプトの展覧会は、やろうと思えば、
理屈上、日本全国どこの美術館でも開催できるでしょうが。
ただ、開館して3年とか5年とか、歴史が浅い美術館では、
これほどまでに感情が揺さぶられなかったような気がします。
やはりある程度の積み重ねが無いと。
それから、展示室では、建築家・内井昭蔵の言葉がいくつか紹介されていましたが。
世田谷美術館の建物そのものの魅力も、
感情を揺さぶるのに大きく影響を与えていたように思えます。
単なるホワイトキューブの展示室だったなら、
まず間違いなく、ここまでエモさを感じなかったことでしょう。
ちなみに。
10年以上、世田谷美術館には、展覧会ごとに通っている僕ですが。
今回の展覧会のおかげで初めて・・・・・・・・・
美術館の外に、彫刻作品が設置されていたことに気がつきました (汗)。
失ってみて初めてその価値がわかる。
それを地で行くような展覧会でした。
試みとしてスゴく面白かったですし、
いろいろと考えさせられたので、3ツ星にしたいところなのですが。
作品が展示室に何もなくて3ツ星だとしたら、
“じゃあ、逆にこれまでいろいろと展示していた展覧会は何だったんだ?!”
と本末転倒になってしまいそうなので、あえての1ツ星。
この展覧会を踏まえて、今後世田谷美術館がどんな展覧会を開催していくのか。
次回以降にさらに期待したいと思います!
さてさて。
1階展示室には作品が何も展示されていない世田谷美術館ですが、
2階展示室では、“気になる、こんどの収蔵品―作品がつれてきた物語” が開催中。
(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
こちらでは、ちゃんと収蔵品が展示されています (注:こちらは観覧料が必要となります)。
1万点を超える世田谷美術館のコレクションの中から、
宮本三郎による旧・国立競技場のモザイク壁画の原画を筆頭に、
ここ近年、収蔵された作品の数々を、そのエピソードと共に紹介する展覧会です。
1階展示室にまったく作品が展示されてなかっただけに、
2階展示室に足を踏み入れた瞬間に、思わず 「わー、美術作品だ!」 と声をあげそうになりました。
サウナで我慢すればするほど、ビールが美味しい。
あの感覚に似たものがあります。
と、同時に、コレクションのありがたみを、より実感させられました。
なお、出展作の中には、中川一政による 《ひまわり》 も。
SOMPO美術館で公開中のゴッホの 《ひまわり》 もいいですが。
セタビの 《ひまわり》 もチェックしておきたいところです。
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