今年で開館25周年を迎えた千葉市美術館。
これまでは、矢部又吉が設計した旧川崎銀行千葉支店の建物を、
スポッと覆うように新たに建設された地上12階建てのこの建物のうち、
その大半が千葉市中央区の施設として使われていましたが。
今回の大々的なリニューアルにより・・・・・・
なんとこの建物すべてが、
千葉市美術館の施設となりました!!
地上12階、地下3階。
使われていないフロアはあるとはいえ、
おそらく、日本で最もフロア数の多い美術館だと思われます。
ではでは、具体的にどうリニューアルされたのでしょうか?
大学時代から通う千葉市美ヘビーユーザーの僕が、
まず何より驚いたのは、1階にもミュージアムショップが誕生していたこと。
しかも、かなり広くなっています!
取り扱うアイテムが増えていたのはもちろん。
千葉市美術館の外観をデザインに取り入れた、
オリジナルのトートバッグ (3種) も販売されていました。
ではでは、早速、展示室へ。
と、いつものクセで8階に行こうと思ったら、
4階と5階に新たなフロアが誕生していました。
というわけで、まずは4階を訪れてみることに。
これまでは区役所スペースだった4階。
そこに新たに誕生していたのが、びじゅつライブラリーです。
美術にまつわる図書約4500冊をそろえたオープンな図書室。
貸し出しこそ行っていませんが、
子ども向けの絵本や美術書から専門書まで、どの本も閲覧自由となっています。
これまでもちょっとした図書スペースがあったようですが、
今回のびじゅつライブラリー創設のために新たに購入した書籍も多数あるとのこと。
その中には、ありがたいことに・・・・・・・・
『東京のレトロ美術館』 もありました。
これからも千葉市美術館のことを全力で応援していきたいと思います。
さらに、4階に新たに誕生していたのが、「つくりかけラボ」 なる聞き慣れない施設。
「つくりかけラボ」 は今回のリニューアルの目玉の一つで、
「五感で楽しむ」「素材にふれる」「コミュニケーションがはじまる」 という3つのテーマを軸に、
アーティストが、訪れた人びとと関わりながらインスタレーションを制作してゆく施設とのこと。
その第一弾として開催されていたのは、
建築家の遠藤幹子さんによる “おはなしこうえん” です。
日本全国にも伝わっていますが、実は千葉にも伝わる民話 『羽衣伝説』。
そんな 『羽衣伝説』 をモチーフにした作品だそうです。
会場は土足禁止。
靴を脱いで、一歩足を踏み入れると、
そこにはこんな光景が広がっていました。
正直なところ、“意外と殺風景・・・・・” と思ってしまったのですが。
実はこれこそが、 「つくりかけラボ」。
会期を重ねるごとに、作家が参加者とともに、
インタラクティブに会場を作っていくことこそが、このスペースの肝とのこと。
会期終了のその日までが、常に “作りかけ”。
それが 「つくりかけラボ」 なのです。
ちなみに、入場料は無料。
千葉市民、千葉県民で無くても、誰でも自由に参加できます。
さらに、新型コロナウイルスに備えて、ステイホームをされている方のために・・・・・
オンラインでも参加できるようなコンテンツを随時配信しているとのこと。
気になった方はぜひ、まずはオンラインからご参加してみてはいかがでしょうか?
さてさて、続いては5階へ。
こちらには、ワークショップが開催可能なみんなでつくるスタジオと、
これまでの千葉市美術館にはなかった常設展示室が新設されました。
千葉市美術館のコレクションの総数は、実に約10000点!
その柱となるのは、「千葉市を中心とした房総ゆかりの美術」、
「近世近代の日本絵画と版画」 「戦後の現代美術」 の3つとなっています。
今回、新設された常設展示室では、その3つの柱ごとに代表する作品を紹介。
約1ヶ月ごと (現代美術は約3ヶ月ごと) に展示替えが行われるそうです。
(注一部の作品は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
常設展示室がオープンした現在 (~8月2日) は、
江戸美術に定評のある千葉市美コレクションの中でも、えり抜きの名品の数々が展示されています。
肉筆画もさることながら、浮世絵コレクションは特に絶品。
現在、東京都美術館で日本三大浮世絵コレクションが集結した展覧会が開催中ですが。
それに匹敵するクラスの浮世絵を目にすることができます。
なお、写真撮影は不可となっていますが、
「戦後の現代美術」 を紹介するコーナーでは、
千葉市美術館が所蔵する草間彌生作品をほぼすべて一挙公開しています。
まとまった形で草間彌生作品を展示するのは、開館以来今回が初めての機会とのこと。
海外の美術館からの貸出依頼も少なくないという 《無限の網》 の大作も出展されています。
草間彌生ファンならば、是非とも押さえておきたいところです。
ちなみに。
常設展示されていた作品の中で、
個人的に一番印象に残ったのは、こちらの 《古井戸のある風景》 という一枚です。
作者の名前は、ジョルジュ・ビゴー。
歴史がお好きな方なら、ピンとくるかもしれません。
歴史の教科書で一度は目にしたことがあるこの絵を描いた人物です。
(注:常設展示室には出展されていません)
今日の今日まで、風刺画ばかり描いている人物かと思っていたのですが。
パリの名門出身の画家を母に持つ彼は、
母国フランスで、ちゃんと正当な美術教育を受けていたのだそうです。
《稲毛・五月の節句》 、 《稲毛海岸》 とタイトルが付けられたこの2点もビゴーによる油彩作品。
実はビゴーは帰国するまでの約5年間、
稲毛にかつてあった 「海気館」 という旅館に住んでいたのだとか。
大学時代、サークルの新入生歓迎を兼ねて、
毎年5月に、稲毛海岸でバーベキューを行っていましたっけ。
まさか、あの海岸にジョルジュ・ビゴーが頻繁に通っていたとは。
歴史の小さなロマンを感じました。