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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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森本草介展

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昨年10月25日の豪雨により浸水被害を受けたホキ美術館。

その被害は甚大で、地下2階の電気設備や展示室の一部が水に浸かってしまったそうです。

さらに、作品にも被害が及び、収蔵庫にあった約100点が水に濡れた状態に。

うち50点は修復が必要なほどのダメージを受けてしまいました。

(ちなみに、額縁は全部廃棄とのこと)。

 

 

・・・・・・・・ところで。

住宅街の一角に位置するホキ美術館。

その周辺には、川や大きな池は見当たりません。

 

 

 

どうしてまた、こんなにも大変な水害に遭ってしまったのでしょうか??

 

その理由は、美術館裏側に地下2階へと続くスロープがあったゆえ。

ここから一気に、辺り一帯の水が流れ込んでしまったそう。

つまり、ホキ美術館が住宅街に溜まった水を一手に引き受けたのです。

なお、そのおかげで、周囲の住宅には浸水被害は無かったとのこと。

結果的に、身を挺して、ホキ美術館は街を守った形となりました。

 

 

さてさて、そんな水害から約9ヶ月。

電気室を上階に移設し、2階展示室の床や壁紙を張り替え、

「災害に強い美術館」 へと生まれ変わった新生・ホキ美術館が、

本日8月1日に、ついにリニューアルオープンを果たしました!

おめでとうございます!!そして、お帰りなさい!!

星星星

 

 

そんなリニューアルオープン1発目に、

開館10周年記念も兼ねて開催されているのが、“森本草介展”

 

(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)

 

 

ホキ美術館に縁ある写実作家は数多くいますが、

その中でももっとも縁の深い写実作家である森本草介の作品を一挙公開する展覧会です。

 

 

 

今では約480点の写実絵画コレクションを誇るホキ美術館ですが、

その記念すべき第一号となったのが、森本草介の 《横になるポーズ》 です。

 

 

 

それまでは西洋の美術作品を集めていたという保木将夫元館長 (現会長)。

ある日、美術年鑑をパラパラとめくっていた際に、森本作品が目に留まったのだそうです。

どうしても実物を見てみたくなった保木さんは、

森本草介の作品も出展されていた都内の某百貨店のグループ展へ。

その会場で保木さんの目に飛び込んできたのは、色鮮やかに輝いた森本作品。

周りの作品はすべて、グレーに感じられたそうです。

それほどまでの鮮烈な体験を機に、保木さんはすっかり森本作品の虜に。

《横になるポーズ》 を皮切りに、30数点を誇る日本屈指の森本コレクションを築いたのです。

 

さてさて、そんな森本作品の最大の特徴はなんといっても、セピアトーンの画面。

人物画に限らず、風景画も静物画も、

 

森本草介 《アリエー川の流れ》  2013年 ホキ美術館

 

森本草介 《牡丹》  1997年 ホキ美術館

 

 

一目で森本作品だとわかる独特の色調があります。

森本草介は生前このように語っています。

「私の目にはセピア色のレンズがはまっており、見えるものすべて好きなセピア色なのです」 と。

スマホの写真アプリのフィルターのようなものでしょうか。

作品には常に  『Morimoto』 というフィルター加工が施されていたのですね。

 

 

ちなみに。

今回の展覧会には、全部で34点の森本作品が出展されています。

その中には、修復したてホヤホヤの 《午後のくつろぎ》 も。

 

 

 

近くでマジマジと観ましたが、まったく汚れが感じられませんでした。

すっかり元の美しい姿を取り戻しています。

改めて、これほど美しい作品が修復不可能な状態にならなかったことに、ホッとしました。

なお、《モノクロームの肖像》《背のポーズ》 の2点に関しては、現在鋭意修復中とのこと。

そちらも早く元の美しい姿を取り戻せますように。

 

 

さてさて、現在、“森本草介展” と同時開催されているのが、

本来なら昨年11月に開催予定だった “第3回ホキ美術館大賞展” です。

 

 

 

ホキ美術館大賞とは、40歳以下の新人写実画家を対象とする賞レース。

第3回の総応募点数は93点で、うち21点が入選しています。

その中から栄えあるグランプリに選ばれたのは、《次の音》 という作品。

 

中西優多朗 《次の音》  2019年

 

作者は、中西優多朗さん。

前回のホキ美術館大賞展の際に、高校2年生で最年少で入選していた人物です。

今回、19歳 (応募時) という若さで、見事大賞に輝きました。

19歳にしてこの完成度!

写実絵画界の藤井聡太。

写実絵画界の第7世代です。

 

実は、僕と中西さん・・・・・いや、

ここからはいつものように中西君と呼ばせて頂きます。

僕と中西君との出会いは、4年前。

ホキ美術館大賞展の内覧会でのことでした。

「入選者のインタビュー動画を作るから、とに~さん、インタビュアーやって」 と、

ホキ美術館の広報さんから会場でいきなり無茶ぶりされ、流れで引き受けることに。

(その模様は動画としてアップされています)

 

 

 

このインタビューで、中西君と初めて出会いました。

画家の道に進むか悩んでいた中西君。

そんな未来ある少年に対し、インタビューハイになっていた僕は、

「君は才能があるから、このまま画家になったほうがいい!

 もし、仕事が無かったら、僕がギャラリーを紹介する!」 と発破を掛けたのです。

・・・・・・無責任にも。

 

さらに、この男は何を思ったのか、中西君に 「とに~賞」 を贈呈したらしいのです。

そんな何の役にも立たない賞が、中西君にとっては励みの一つとなったそう (本人談)。

そして、絵画に必死に打ち込んだ結果、今回の大賞受賞となったのだそうです (本人談)。

 

本人にそう言ってもらえて、光栄な限りです。

大賞を受賞したのも心から嬉しかったです。

 

 

 

立派な中西君が、メディアの前で自身の作品を紹介している時は、

甥っ子の成長を見守るような気持ちになり、ジーンと胸が熱くなっていました。

ただ、そんな中西君に一つだけ言わせて欲しい。

「いや、それにしてもペース速いよw」 と。

勝手な言い分なのは重々承知してますが、

少年ジャンプの漫画のように成長していく過程を、もう少し楽しませて欲しかった!

ちゃんと段階を経てくれ!

一気にスーパーサイヤ人になってどうする (笑)?!

とはいえ、中西君のさらなる成長をこれからも見守っていきたいと思います。

 

 

最後に。

先日のスポーツ報知の取材の様子が、動画でアップされています。

動画で使われると思っていなかったので、だいぶ館長と好き勝手しゃべっています (笑)

お時間あれば、ぜひご覧くださいませ。

 

 

 



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