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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―

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1919年にドイツの都市ヴァイマールに開校した伝説の造形芸術学校。

それが、バウハウス。

 

ヴァルター・グロピウス 《バウハウス・デッサウ校舎》 1925-26年 撮影:柳川智之(2015年)

 

 

ナチスの弾圧を受けたため、わずか14年という短さで閉鎖されてまいますが。

バウハウスから生まれた造形教育やデザインは、

今日にいたるまで、アートとデザインの分野に大きな影響を及ぼしています。

そんなバウハウスが開校して100年という節目の年を祝って、昨年2019年は、

bauhaus100 japanというプロジェクトが立ち上がり、日本各地で様々なイベントが開催されていました。

“開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―” という巡回展もその一つ。

兵庫西宮市大谷記念美術館を皮切りに、香川、静岡を巡り、

この夏、東京ステーションギャラリーでの展示で、フィナーレを迎えます。

 

 

 

さて、こちらの展覧会は、全部で5章の構成となっています。

まずは、「学校としてのバウハウス」

 

(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)

 

 

こちらでは、バウハウスの教育理念やカリキュラム、学校案内、

さらには、バウハウスで学ぶ生徒の姿を映した写真の数々が紹介されています。

「バウハウスの生徒=センスの塊」 的なイメージを勝手に抱いていたので。

普通の学生生活を送っていないような印象を持っていましたが・・・・・・・

 

フリッツ・シュライバー 《学生たち(アトリエのバルコニー)》 1932年頃、ミサワホーム株式会社

 

 

意外と、普通にちゃんと学生っぽいこともしていたようでした (笑)

『バウハウス青春白書』  もあったのですね。

 

第2章は、「バウハウスの教育」

カンディンスキーやパウル・クレーといった美術界の巨匠たちが、

教師として、どのような造形教育を行っていたのかを資料を交え紹介しています。

 

 

 

1枚の紙を切ったり、曲げたり、折ったりして、

これまでにない造形を作り出すヨゼフ・アルバースの授業や、

 

 

 

コンパスと定規を使ってレタリングを完成させるヨースト・シュミットの授業など、

 

 

 

一流講師陣によるユニークかつ実践的な授業の数々が紹介されていました。

美大のオープンキャンパスを見学しているかのよう。

もしくは、東進ハイスクールのCMを見ているかのよう。

何はともあれ、バウハウスに入学したい気持ちが湧いてくること請け合いです。

 

 

第3章は、「工房教育と成果」

基礎教育を修了した学生は、より専門な課程として、「工房教育」 に進むことができたそうです。

家具工房や金属工房、印刷・広告工房など、

全部で10の工房があり、生徒たちはどれか一つを選択しました。

会場では、それらの工房から生まれた成果 (=作品) の数々が紹介されています。

 

 

 

それらの中には、マルセル・ブロイヤーによる名作椅子 「ヴァシリー・チェア」 も。

 

 

 

世界初のスチールパイプ椅子として名高いこの椅子も、

実は何を隠そう、バウハウスの家具工房から生まれたもの。

バウハウスの一期生であったブロイヤーが、

のちにバウハウスのマイスター (教官) になった際に、

生徒時代の恩師であるヴァシリー・カンディンスキーのために制作したのが、この椅子だったのです。

それゆえに、“ヴァシリー” チェア。

ちなみに、自転車のフレームに着想を得て、

それまで家具の素材として使われなかったスチールパイプを使用したのだとか。

その斬新な発想は、家具の世界に大きな衝撃を与えたそうです。

もし、バウハウスが無かったら、パイプ椅子は生まれていなかったのかもしれませんね。

 

また、会場ではバウハウスの彫刻工房が生んだあの傑作デザインも展示されていました。

 

ヨゼフ・ハルトヴィッヒ 《チェス・セット》 1924年頃、ミサワホーム株式会社

 

 

一見すると、積み木のように思えますが。

その正体は、チェスセットです。

 

 

 

駒のパワーバランスや動きを、大きさや形で表現。

チェスをしたことが無い人でも、視覚的にパッと理解できる。

まさに傑作デザインです。

もし、ヨゼフ・ハルトヴィッヒが将棋の駒をデザインしたらどうなっていたのでしょう。

 

 

続く第4章では、「『総合』の位相」 と題し、

画家、彫刻家、建築家、それぞれが独立するのではなく、

すべての造形活動を統合させようとしたバウハウスのビジョンを紹介しています。

 

 

 

そして、展覧会のラストを飾る 「バウハウスの日本人学生」 では、

日本人留学生4人 (水谷武彦、山脇巌、山脇道子、大野玉枝) の活動を紹介。

 

 

 

彼らはただバウハウスに学んだだけでなく、

帰国後、さまざまな教育機関と関わり、バウハウスの理念を広める役割を果たしたそうです。

彼らがいたからこそ、バウハウスが日本に根付いたのですね。

展覧会を通じて、今なお日本でバウハウスの人気が根強い、その理由の一端を知れました。

星

 

 

ちなみに。

こちらは、我が家の近くで見つけたバウハウス。

 

 

 

バウハウスの影響は、こんなところにも。

 

 

 ┃会期:2020年7月17日(金)~9月6日(日)
 ┃会場:東京ステーションギャラリー

 ┃注:ご来館前に日時指定のローソンチケットをご購入ください。
 ┃https://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202006_bauhaus.html



~読者の皆様へのプレゼント~
“バウハウス展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、8月12日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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