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Book:34 『喜多川歌麿女絵草紙』

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■喜多川歌麿女絵草紙

 作者:藤沢周平
 出版社:文藝春秋
 発売日:2012/7/10 (新装版)
 ページ数:268ページ

江戸の町の人びとや風景を生き生きと描いた浮世絵師には、素性が知れていない人が多い。

生涯美人絵を描き、「歌まくら」「ねがひの糸口」といった、

枕絵の名作を残した喜多川歌麿は、好色漢の代名詞とされているが、

実は愛妻家の意外な一面もあった。著者独自の手法と構成で人間・歌麿を描き出した傑作長編。
(「BOOK」データベースより)

 

 

「葛飾北斎や歌川国芳に並ぶほどにメジャーな浮世絵師ながら、

 改めて、考えてみると、意外なほどに人物像が思い浮かばない喜多川歌麿。

 そんな歌麿を主役にした小説があるだなんて、

 しかも、あの藤沢周平の手による小説だなんて。

 それは興味深い!

 ということで、早速手に入れて読んでみました。

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 結論から言えば、なんともフワッとした小説でした。

 

 裏表紙のあらすじには、『実は愛妻家の一面もあった。』 とありますが。

 その愛妻は本編には登場しません。

 愛妻はすでに亡くなっていました。

 愛妻とのエピソードは特に描かれず、

 代わりに物語の全編を通じて、描かれているのは、弟子である千代との微妙な関係。

 ・・・・・・・・どこが愛妻家なのか?

 他にも、歌麿は、モデルとなる女性の本質を描こうと入れ込むあまり、

 恋焦がれたり、女性の恋人に嫉妬したり、果てはその仲を引き裂いたり。

 ・・・・・・・・どこがどう、愛妻家なのか?。

 

 ちなみに、個人的にモヤモヤしたのは、ラストシーンです。

 なんかもういろいろ唐突。

 それまで本編にまったく登場しなかった女性が登場しますし。

 それまでハードボイルド小説の主人公みたいなキャラだった歌麿が、

 最後の最後で急にキャラ変し、官能小説の登場人物みたいになりますし。

 結局のところ、この小説を読んだせいで、

 歌麿の人物像が、さらにイメージしづらくなった気がします (笑)

 

 

 とはいえ、歌麿の浮世絵師としての苦悩の細やかな描写は、さすが藤沢周平といったところ。

 自らの才能が衰えていることを密かに自覚する歌麿。

 そこに登場するのが、写楽の役者絵です。

 役者を美化することなく描いた写楽の斬新な画風に、

 嫌悪感を抱きつつも、その強烈な個性は認めざるを得ない。

 芸術家としての歌麿の心理描写は真に迫るものがありました。

 さらに、歌麿に追い打ちをかけるのが、彼を取り立てた蔦屋重三郎からの一言。

 天下の歌麿にこんなことを言うのは大変失礼ながらも、

 若い時から付き合いのある自分しか指摘できないだろうと、蔦屋は意を決してこう言い放ちます。

 

 「顔が同じなんですよ。どの女も」

 

 えっ?やっぱりそうなの??

 

 

 

 歌麿の浮世絵を観るたびに、薄々そう感じていましたが。

 顔が同じに見えるのは自分が現代人だからゆえ。

 江戸時代の人は、ちゃんと浮世絵の顔を見分けられているものだとばかり。

 当時の人も、みんな同じ顔に感じていたのかもしれませんね。

 あだち充の漫画に登場するキャラが、みんな同じ顔に感じられるように。

 

 

 ちなみに。

 この小説には、歌麿のモデルとなるさまざまな女性が登場しますが。

 どの女性ももれなく、幸が薄かったです。

 僕の脳内では、どの女性モデルも木村多江が演じていました。

 スター スター ほし ほし ほし (星2つ)」

 

 

~小説に登場する名画~

 

《当時三美人》

 





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