現在、太田記念美術館で開催されているのは、“月岡芳年 血と妖艶” 。
最後の浮世絵師ともいわれた月岡芳年の魅力を、
「血」 「妖艶」 「闇」 という3つのテーマで紹介する展覧会です。
1階と2階の展示室で紹介されていたのは、「妖艶」 と 「闇」 の2つのテーマ。
「妖艶」 では、どことなく妖しさが漂う女性たちが登場する浮世絵を、
「闇」 では、幽霊や妖怪が描かれた浮世絵や、夜を舞台にした戦争画などが紹介されていました。
続く地下1階の展示室では、「血」 をテーマに、
《英名二十八衆句 稲田九蔵新助》 を筆頭に、芳年が描いた残酷な作品を厳選して紹介。
右を観ても血、左を観ても血。
展示室内は、まさに血まみれ状態。
スプラッター映画が苦手な僕は、
あまりの血の多さに、逆に血の気が引いてしまいました。
そういう意味では (?) 、夏にピッタリな展覧会と言えましょう。
ただ、この展覧会、もともとは4月5月に開催予定だったもの。
(新型コロナウィルスのせいで、会期が変更になりました)
「妖艶に、闇に、血って、新年度一発目の展覧会じゃないだろ!」
と、思わずツッコミたくなりました (笑)
夏開催になって本当に良かったです。
さてさて、出展作品の中から特に印象に残ったものを、いくつかご紹介いたしましょう。
まずは、《風俗三十二相 いたさう 寛政年間女郎の風俗》 から。
手ぬぐいをグッと噛んで、痛みに耐える遊女。
彼女は、今左手に刺青を入れているところです。
当時の遊女は上客の名前を、「○○命」 の形で刺青していたとのこと。
「○○命」 というタトゥーは、江戸時代からあったのですね。
続いては、《新形三十六怪撰 さぎむすめ》。
白い雪景色に、白無垢の女性とシロサギ。
一見すると、白尽くしのシンプルな作品に思えますが。
近づいてよくよく観てみると・・・・・・
白無垢の部分に、びっしりと空摺り (≒エンボス加工) が施されているのがわかります。
さらに、シロサギの羽毛も空摺りで表現されていました。
わかる人にだけわかる職人技に、萌えます。
他に印象に残っているのが、《月百姿 原野月 保昌》。
描かれているのは、平安時代の貴族・藤原保昌にまつわるエピソードです。
10月のある日のこと。
笛を吹きながら歩いている藤原保昌 (←この行動が謎)。
その姿を見つけた盗賊の首領が、彼の衣装を奪おうと背後から狙っています。
しかし、保昌があまりにも隙が無かったため、
盗賊はなかなか手を出すことが出来ず、彼の背中をただただ追うことに (←なぜ??)。
結局、盗賊はそのまま保昌の家に辿り着いたのだそう (←途中で諦めて帰れよ!)。
ちなみに、保昌は、そんな盗賊に綿入りの衣服を与えたのだそうです (←どうゆうこと??)。
「どうゆうこと??」 と頭に 『?』 マークが浮かんだ絵といえば、こちらも。
《近世狹義伝 新待勘太》 です。
背後から、首の後ろを刀でスパッ。
斬られた箇所から血がドバッ。
そして、ビローン。
・・・・・・・・いや、ビローンって何よ?!
血が “ねるねるねるね” みたいになっています。
最後に紹介したいのは、《和漢獣物大合戦之図》。
熊を大将とする日本に古来から棲む動物群と、
象を大将とする外国の動物群との合戦の様子を描いた作品です。
猿や犬、ウサギのいる日本軍に対し、
海外軍には、虎やライオンなど強そうなヤツがウジャウジャいます
さらに海外軍には、よくわからない動物も・・・・。
圧倒的に不利な日本軍。
ガンバレ日本!