現在、弥生美術館で開催されているのは、
弥生美術館では2010年以来、10年ぶりとなる水森亜土さんの展覧会です。
僕の中では、水森亜土さんというと、
「みんなのうた」 の 『いたずラッコ』 という曲を歌ってた人。
それから、関根さんがモノマネしている人というイメージくらいしかありませんでしたが。
実は、水森亜土さんは、昭和が終わっても、平成、令和と、
今なおグッズが作られ続けている稀有なイラストレーターなのだそうです。
しかも、今でも、若い方から年配の方まで、幅広い世代に人気とのこと。
展覧会を担当された学芸員さんから、そう伺って、
“僕より下の世代の人って、亜土さん知ってるのかなぁ?” と一瞬疑ってしまいましたが。
展覧会場に目を向けると、そこには、亜土さんのTシャツを着た3歳くらいの女の子がいました。
疑ってしまって、すいませんでした!
さてさて、亜土さんの直筆のメッセージで始まる今回の展覧会。
(注:館内は写真撮影禁止です。特別な許可を得て撮影しています。)
まずは、亜土さんの幼少期や青春時代の貴重な写真が、
亜土さん本人による書き下ろしエッセイと合わせて紹介されていました。
日本橋生まれの江戸っ子であることや、ジャズコンテストによく出場していたことから、
お父さんとおじいちゃんが遊び人であったことまで、赤裸々にいろいろと語られていました(笑)
本当は歌手になりたいと思っていたという亜土さん。
しかし、受けるオーディションに落選する日々が続きます。
そんな中、あるオーディションでプロデューサーから、
「あなたは何ができますか?」 と質問された際に、亜土さんは苦し紛れにこう答えたそうです。
「両手で絵が描けます」 と。
こうして、決まったのがNHKの 『たのしいきょうしつ』 だったのだそう。
歌を歌いながら、アクリルボードに両手でお絵かきをする。
そのパフォーマンスは、当時のお茶の間に大きな衝撃を与えることとなったのです。
かくして人気イラストレーターとなった亜土さん。
文房具やマグカップ、エプロンやTシャツなど、さまざまなグッズが作られるようになりました。
今展ではそのうちの一部、700点以上が出展されています!圧巻!
ここに展示されているグッズのどれか一つくらいは、
間違いなく、自分の人生の中で出会ったことがあるはずでしょう。
ちなみに。
1階展示室では、懐かしの水森亜土グッズが。
そして、2階展示室では、近年の水森亜土グッズが紹介されています。
それらの中には、スマホケースやLINEスタンプといった最新アイテムも。
確かに、現代でも水森亜土グッズの人気は絶大なようです。
また2階展示室では、亜土さんが描いた貴重な原画の数々も紹介されています。
『別冊少女フレンド』 の表紙絵のようにポップで可愛らしいイラストもあれば、
アンニュイさが漂うセクシーなタッチのイラストもありました。
セクシーな女性を描く女性作家は、安野モヨコさんがその走りかと思っていましたが。
実は、水森亜土さんも得意としていたのですね。
セクシーなのに、決してイヤらしくない。
“大人の” 水森亜土とでもいうべきイラストを初めて目の当たりにし、新鮮に驚かされました。
また、展覧会のラストでは、 「絶対に売らない!」 と、
亜土さんが心に決めているという秘蔵の絵画作品の数々が展示されています。
亜土さんらしい柔らかさ、色遣いではあるものの、
イラストとはまた違って、ほのかにビターなテイストが混じっていました。
可愛らしさと温かさとミステリアスさと恋しさとせつなさと心強さと。
さまざまな要素が絶妙にブレンドされた味わい深い絵画作品です。
単なるお茶の間の人気者の展覧会でも、
人気のイラストレーターの展覧会でもなく。
れっきとした一芸術家の展覧会でした。
亜土さんのファンだけでなく、美術ファンにこそ足を運んでほしい展覧会です。