普通の美術展に飽き気味の皆様に、オススメの美術展があります。
それは、渋谷区立松濤美術館で開催中の “古道具その行き先 -坂田和實の40年-” 。
この美術展に展示されているのは、
普通の美術展で展示されているようなモノではありません。
昭和時代の水中メガネに、
江戸時代~明治時代の質屋包み紙に、
平成時代のコーヒー用ネル布に。
中には、紀元前3~4Cのマミーマスク(子供用) や、
室町時代の狛犬など、
歴史的な価値はありそうなモノもありましたが。
美術的には、お世辞にも、高い価値はなさそうなモノばかりです。
そんな “なんだかよくわからないモノ” ばかり約115点ほどが、
キャプションもなく、解説もなく、ただただ美術館に展示されています。
“?????”
普通の美術展に慣れてしまっている頭に、 『?』 マークが大量発生してしまいました。
この美術展は、一体どんな美術展なのかと言いますと。
1973年より古道具屋を営んでいる坂田和實さんが、
これまでの人生で関わってきた数々の古道具の中から、
渋谷区立松濤美術館の空間に合うものを選んで展示するという美術展。
いわば、期間限定で、渋谷区立松濤美術館が、
坂田和實さんのセレクトショップに様変わりしたようなもの (もちろん、すべて非売品!)
展示されているモノではなく、
古道具が置かれることで生まれる空間の面白さに焦点を合わせた画期的な美術展です。
「全然、ピンと来ない・・・」 とガッカリする人もいれば、
「うわっ、これは、今までにない空間だ!」 と絶賛する人もいることでしょう。
その平均値を取って、2ツ星。
ともあれ、このような実験的な美術展の開催に踏み切った渋谷区立松濤美術館に拍手です。
個人的には、最初に一周した時には、一点一点の作品を注目して観賞していたので。
「・・・・・・・。」
と、特にピンと来なかったのですが。
流す感じで、二周、三周と回るうちに、
「」
この展示空間の趣のようなものが感じ取れるようになってきました。
展示品一つ一つを観るのではなく、
俯瞰するように全体を眺めることで、ようやくこの美術展の面白さが感じられるようです。
また、そう思って全体を観てみると、
白井晟一設計による渋谷区立松濤美術館そのものの魅力も際立って感じられました。
おそらくこの美術展は、渋谷区立松濤美術館という建物がなければ成立していなかった気がします。
それくらいに、坂田さんのセンスと白井晟一の建物の魅力が、絶妙にマッチしていました。
もちろん、一つ一つの古道具も味があって、芸術品とはまた違った魅力がありました。
個人的に気に入ったのは、フランスのブリキの自動車と、
同じくフランスの鉄製の風見と、
らせん階段用の鉄製ガード。
もし自分がカフェを経営するとしたら、これらのものを飾ってみたいですね。
それから、展示として印象的だったのは、
おじいちゃんの封筒 (作品リストには、そうありました。誰かのおじいちゃん?) が、
壁一面に、何十枚も並べられていた光景。
これまで何百という美術展を観賞してきましたが、
何の変哲もない封筒がただただ並べられているという光景には初めて出合いました。
もはや、そんじょそこらの現代美術展よりも、尖っていた気がします (笑)
ちなみに。
本当に、何の変哲もない・・・というか、むしろ汚めの古道具なので。
こちらの革靴 (もちろん展示品) を目にした御婦人が・・・
「あら、やだ。誰かの脱ぎっぱなし?」
と、驚かれていたのが、印象的でした (笑)
こんな美術展は、きっと後にも先にもないです。
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古道具その行き先 -坂田和實の40年-
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