すでにご視聴頂いた方もいらっしゃるかもしれませんが、
10月より、『アーティゾン 子どものひろば』 という動画が配信されています。
こちらの動画シリーズは、アーティゾン美術館のコレクションの中から1点を選び、
その作品について、僕とアーティゾン美術館の貝塚健学芸員が掘り下げるというものです。
配信は、毎月第2第4土曜日。
1年かけて全24回配信する予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします!
・・・・・・・・と、しっかりと告知をしたところで。
先日は、久留米市美術館に行ってまいりました。
実は、こちらは元・石橋美術館。
ブリヂストン美術館 (現・アーティゾン美術館) の姉妹館に当たる美術館でした。
しかし、アーティゾン美術館の開館を前に、
石橋財団は、太っ腹にもこの建物を久留米市に寄贈。
こうして、2016年11月に、久留米市美術館としてリニューアルオープンする運びとなりました。
ブリヂストン美術館の姉妹館ということで、
わりとこじんまりした美術館というイメージを抱いていたのですが・・・・・。
モネ風の庭園はあるわ。
立派な日本庭園はあるわ。
バラ園はあるわ。移築された坂本繁二郎邸はあるわ。文化ホールはあるわ。
とにかく敷地が広かったです!
なんでも昔はこの敷地内に、プールや動物園もあったとのこと。
なるほど。ちょっとしたレジャー施設だったのですね。
さてさて。
現在、そんな久留米市美術館では、
“没後35年 鴨居玲展 静止した刻” という展覧会が開催中。
こちらは、一部のファンからカルト的な人気を誇る、
洋画家・鴨居玲 (1928~1985) の大規模な回顧展です。
没後5年ごとに回顧展が開催されており、
没後35年となる今年は、5年ぶり7度目の回顧展となっています。
出展作は、約100点。
展覧会のタイトルにもなっている安井賞受賞作 《静止した刻》 を筆頭に、
ダウナーな作風が多い鴨居作品にしてはユーモアさのある 《おっかさん》、
ピエロに扮した鴨居自身が描かれた晩年の傑作 《出を待つ(道化師)》 など、
鴨居玲の代表作の数々が出展されています。
さらに、貴重な個人蔵の作品も多く出展されていました。
まさに、鴨居玲展のベスト版!
熱狂的鴨居玲ファンの僕としては、
久留米市まで足を運んで大満足な内容でした。
ただ、5年前に東京ステーションギャラリーで観た鴨居玲展が、あまりにも素晴らしすぎて。
(鴨居玲作品とレンガ壁とのマッチが絶妙でした!)
その感動は超えれなかったので、2つ星。
没後40周年展は、是非、東京ステーションギャラリーで!
さて、今回の鴨居玲展を通じて、
改めて気づかされたのは、蛾をモチーフにした作品が意外と多いということ。
アコーティオンから無数の画が飛び出す 《蛾と老人》 や、
蛾に恐れおののく男性が描かれた、その名もズバリ 《蛾》 など、
数々の作品に、蛾が登場していました。
蝶ではなく、蛾を選ぶあたりが、さすが鴨居玲。
独特のダークファンタジー感がありました。
それから、もう一つ改めて気づかされたのが、
鴨居玲の作品は、その背景も魅力の一つであるということ。
一見すると、ただの背景なのですが、
ジーッと見ていると、何か情念のようなものが塗り込められているように思えてきます。
こんなにも背景に情景がこもっているのは、ゴッホか鴨居玲くらいなものでしょう。
そう感じた上で、彼の代表作中の代表作 《1982年 私》 を鑑賞しました。
キャンバスの前で呆然としているのは、鴨居本人。
そして、その周囲を、彼がこれまで描いてきた人物が取り囲んでいます。
一般的にこの絵は、絵がまったく描けない恐怖を表していると言われていますが。
改めてキャンバス部分を見てみると、実は真っ白ではなく、
情念のこもった背景は、すでにしっかり描かれているのです。
もしかしたら、何も描けないで悩んでいるのではなく、
むしろ描きたいモチーフがたくさんあって悩んでいる姿なのかもしれませんね。
ちなみに、鴨居玲に関して、もう一つ気づいてしまったことが。
いや、正直に言えば、気が付きたくなかったことなのですが。
鴨居玲といえば、美術界屈指のイケメンとして知られています。
それゆえ、展覧会の会場には、彼のポートレートがよく飾られがちです (今展もしかり)。
今回改めてその顔をよく見ていたら、ちょっとだけ、
あくまでほんのちょっとだけ、素顔の小梅太夫に似ていることに気が付きました。
ということは、鴨居玲を白塗りにしたら・・・・・いや、余計な想像をするのはやめておきましょう。
最後に。
気づいてしまったついでに。
入口にミロのヴィーナスの等身大レプリカが設置された久留米市美術館。
その敷地内にも、多数の像が設置されていました。
それらの中には、小便小僧も。
その小便の先に目をやると・・・・・
プリンセスミチコが植わっていました。
よりによって。