東京都現代美術館で1999年より定期的に行われているグループ展 “MOTアニュアル”。
通算16回目となる今回のテーマは・・・・・
『透明な力たち』 です。
一瞬、「透明なかたち」 と読んでしまいましたが、
「かたち」 ではなく、「力(ちから) たち」 でした。
皆さまも、お間違え無きように。
今展で紹介されているアーティストは、全部で5組です。
光合成のメカニズムを用いて、葉の表面にプリントを施す 《Photosynthegraph》 をはじめ、
植物や微生物、宇宙など自然界の現象を可視化する作品を制作している清水陽子さんや、
床一面にプリントされたQRコードをスマートフォンで読み込むと、
バーチャル貨幣を取得することができるという 《ACOIN》 を筆頭に、
アートとテクノロジーの領域を行き来する作品を発表するGoh Uozumiらが参加していました。
自然界の力に、テクノロジーに。
確かに、どちらも目に見えない “透明な力” です。
他にもさまざまな “透明な力” が紹介されていましたが、中にはこんな作品も。
中島祐太さんの 《あっちがわとこっちがわをつくる》 です。
会場の中央にあったのは、新聞紙で作られたバリケード。
その手前に置かれたテーブルの上には、
紙飛行機を作る一式が用意されていました。
「こちら側」 にいる人は、紙に何かしらのルールを書き、
それを紙飛行機にして、バリケードの 「向こう側」 に飛ばすのだそう。
「向こう側」 にいる人は、その紙飛行機に書かれたルールを、
守るべきなのかその理由を考え、修正案などを書いて送り返すのだそうです。
知らない人とコミュニケーションを取るのが苦手なので。
ましてや知らない人とルールを取り決めるだなんて、ハードルが高すぎるので。
作品への参加は自粛しましたが。
なるほど。ルールというのも、“透明な力” なのだと、ストンと落ちるものがありました。
特に日本人は、この見えないルールの力に左右されがち。
なぜ、ルールがあるのかを今一度考える良いきっかけとなりました。
さてさて、今回紹介されていた5組の作家の中で、
個人的に大当たりだったのは、片岡純也さんと岩竹理恵さんによるアーティスト・デュオです。
片岡さんが制作するのは、何気ない日用品に、
重力や磁力などの物理的なエネルギーを加え、何気ない動きを反復させるというもの。
例えば、こちらの 《回る電球》。
その名の通り、ただ電球が回り続けるだけの作品です。
また例えば、《P波またはS波の繰り返し運動》 という作品。
こちらは、上皿天秤が左右に揺れるたびに、
スプリングコイルが左右に行ったり来たりするだけの作品です。
この絶妙に何気ない動きなのが、個人的にツボでした。
絶妙にボーっといつまでも見ていられます。
特にお気に入りなのが、こちらの作品。
一見すると、お~いお茶の缶がただ置かれているだけのように思えますが。
よくよく見てみると、プルタブがゆっくり回転し続けています。
謎の中毒性。
謎のヒーリング効果がありました。
なお、相方の岩竹さんが制作するのは、
博物辞典や切手などの断片を組み合わせた平面作品。
まったくタイプの違う作風なのですが、
会場では、これまた絶妙にマッチングしています。
不思議と違和感はありませんでした。
ちなみに。
展覧会のラストを飾るのは、超常現象や自然科学的に知覚できないものを、
独自の装置によって考察する久保ガエタンさんの新作 《世界は音で満たされている》 です。
映像パートでは、実は死者の声を聴くために発明されたエジソンの蓄音機や、
ナマズが地震を感知するメカニズムなど、音や振動に関するエピソードが紹介されます。
その映像が終わるタイミングで、久保さんが制作した電気ナマズ式自身予知装置が作動。
地震時の地響きと振動が鑑賞者に襲いかかります。
会場の冒頭に、こんな注意書きがありましたが。
“まぁ、そうは言っても、そんなには大きな音じゃないだろう”
と高を括っていたのですが。
想像の何倍も大きな音でした。
帰宅後、撮影した電気ナマズ式自身予知装置の画像を見返してみたら・・・・・
ブレブレもブレブレでした。
どんだけビビったんだよ、自分。