東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、
国立西洋美術館、国立国際美術館、国立新美術館、
そして、2018年に開館したばかりの国立映画アーカイブ。
この6館からなる日本のナショナルミュージアム、それが、国立美術館です。
2010年には “陰翳礼讃” 、
2015年には “No Museum, No Life? ―これからの美術館事典” と、
そんな国立美術館の合同企画展が過去に2度ほど開催されました。
そして、今年2020年、3度目となる合同企画展が開催されています!
タイトルは、“眠り展:アートと生きること”。
ズバリ、『眠り』 をテーマにした展覧会です。
展示室の設計デザインを担当したのは、トラフ建築設計事務所。
『眠り』 がテーマの展覧会ということで、
展示空間には、カーテンやベッドを連想させる演出が随所に!
また、「眠り」 は生命を維持するために欠かせず、
繰り返されるものであることから、「持続可能性」 というキーワードが導き出されたのだそう。
そこで、先日までこちらで開催されていた展覧会、
“ピーター・ドイグ展” の壁面の多くを再利用しているのだそうです。
また、グラフィックデザインを担当したのは、アートディレクターの平野篤史氏。
まどろみ感 (?) のあるミヨ~ンと伸ばされた文字が印象的でした。
出展されているのは、約120点。
サブタイトルに “ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで” とあるだけに、
西洋美術から現代アートまで、多岐にわたるジャンルの作品が紹介されています。
眠っている人物を描いた作品もあれば、
眠りには欠かせない枕を題材にした内藤礼さんや小林孝亘さんの作品もありました。
さらには、河原温のこんな作品も。
こちらは、河原温の代表的なシリーズの一つで、
いわゆる 「デイト・ペインティング」 で知られる 《Today》 です。
これらは、河原が自宅やホテルの一室にこもって、
その日の日付をキャンバスに描き込んだ作品です。
それと、『眠り』 がどう関係あるのでしょうか?
会場では、こう説明されていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
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この説明はまだわかりやすいほうでしたが。
全体的に、章ごとの導入部のキャプションが長め、
かつ、小難しめだったので、読むたびにラリホーをかけられました (笑)
しかも、「眠り」 をキーワードに選ばれているため、
作品はガツンと主張するタイプというよりは、控えめなタイプが多数。
良くも悪くも、眠気と密接に関わる展覧会でした。
ちなみに、
出展作の中で、特に印象に残っているのは、
河口龍夫さんの 《関係―種子、土、水、空気》 という作品です。
壁に掛かっている30枚の鉛の板には、
麦やたまねぎをはじめとする様々な植物の種子が閉じ込められているとのこと。
そして、床に置かれた30本の真鍮、アルミニウム、銅、
それぞれの管の中には、土、水、空気が閉じ込められているとのこと。
こちらは、チェルノブイリ原発事故を契機に生まれた作品です。
鉛は、放射線を遮ることができるのだそう。
つまり、地球が放射能まみれになってしまっても、鉛の板の中の種子は守られるということ。
その後、もし、放射能汚染がなくなった際に、
これらの中身を上手く使えば、再び植物が育ち出すというわけです。
ディストピア感を覚えつつ、でも、その先に希望もある。
アンビバレンツな感情を生む空品でした。
それと、もう一つ印象的だったのが、
アンリ・ミショーによる 《メスカリン素描》 という作品です (写真左)。
メスカリンとは幻覚剤の名前。
ミショーは幻覚剤を意図的に服用し、
その幻覚に支配された状態で、この絵を描いたのだそうです。
昨今、完成した作品と薬物は切り離して考えるべき、という風潮がありますが。
この作品に関しては、そういうわけにはいかないようです。